シニア犬が水を飲まないのはなぜ?原因と対処法、病院に行く目安を解説
シニア犬になって「水を飲む量が減った」「まったく飲まなくなった」と感じる飼い主さんは多いのではないでしょうか。
シニア犬にとって、水分不足は「脱水症状」に直結し、腎臓や心臓など全身の臓器に負担をかける可能性があります。
今回は、シニア犬とともに暮らす私がシニア犬が水を飲まない原因を解説します。
ご家庭ですぐに確認できる危険なサインや今日から試せる水分補給の工夫も紹介するので、愛犬が水を飲まなくて困っているママさんパパさんは、ぜひ参考にしてください。
シニア犬が水を飲まないときに考えられる5つの原因
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シニア犬が水を飲まなくなる理由は、単なる老化から緊急性の高い病気までさまざまです。
まずは、なぜ愛犬が水を飲まないのか、考えられる原因を探ってみましょう。
①加齢による喉の渇き感覚の低下

シニア犬が水を飲まなくなる理由の一つが、加齢によってのどの渇きに鈍くなることです。
人間が高齢になると喉の渇きを感じにくくなるのと同様に、犬もシニア期に入ると、体が水分を欲していても「喉が渇いた」という感覚自体が鈍くなる場合があります。
その結果、自ら積極的に水を飲みに行かなくなってしまいます。
②口や体の痛み

愛犬に「水を飲みたい」という意思はあっても、飲む行為自体に苦痛を感じるために、水を避けている可能性があります。
とくに口の痛みを感じ、水を飲まなくなるケースは少なくありません。
歯周病が進行して歯がグラグラする、口内炎や腫瘍があり、水がしみて痛むなどが原因としてよく見られます。
また、関節炎やヘルニアなどで首や腰が痛むため、水を飲むために首を下に曲げる姿勢が辛い場合もあります。
③環境や水の変化によるストレス

シニア犬は、若い頃よりも環境の変化に敏感な犬が多くいます。
たとえば、水飲み皿を新しく変えたり、水飲み場の場所を変えたり、水の味が変わったりして飲まなくなるケースも少なくありません。
このような些細な変化がストレスとなり、「この水は飲みたくない」と拒否していると考えられます。
④季節や気温の影響
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季節や気温も飲水量に大きく影響します。
冬場の場合、気温が低くなると活動量自体が減り、喉の渇きを感じにくくなります。
水の温度も低くなり、冷たいから飲みたくないという犬も珍しくありません。
夏場の場合は、エアコンが効いた涼しい部屋で一日中寝ていると、あまり喉が渇かず、飲水量が減る可能性もあります。
⑤病気による体調不良

水を飲まない原因が、深刻な病気に関係していることもあります。
シニア犬が水を飲まないとき、考えられる病気は以下のとおりです。
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腎臓病の初期から中期には「多飲多尿(水をたくさん飲む)」になりますが、末期になり尿毒症を発症すると、強い吐き気や倦怠感から、水もご飯も受け付けなくなる場合があります。
シニア犬が水を飲まないときの脱水症状のサイン
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シニア犬が水を飲まない状態が続くと、脱水症状を引き起こします。
脱水は命の危険に直結するため、以下のサインが見られたら、様子見をせずにすぐに動物病院を受診してください。
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①皮膚の弾力(ハリ)がない

皮膚のハリがなくなるのは、わかりやすい脱水のサインです。
チェックする際には、愛犬の背中や肩の皮膚を優しくつまみ上げ、パッと離します。
皮膚は瞬時に元の位置に戻る場合は、脱水症状が起こっていません。
しかし、皮膚が戻るまでに2秒以上かかる、または、つまんだ形のままテントのように戻らない場合は、脱水症状の疑いがあります。
②歯茎や舌が乾いている・ネバネバしている

健康な犬の歯茎や舌は、唾液で濡れており、指で触るとツヤがあるのが一般的です。
しかし、脱水症状を起こしていると、体内の水分が不足し、歯茎や舌が乾いてカサカサしたり唾液がネバネバと糸を引いたりします。
③ぐったりして元気がない

脱水が進むと、体内の電解質バランスが崩れ、体を動かすエネルギーが作れなくなります。
そのため、いつもより元気がない、ぐったりとして動かない、立ち上がれないといった症状が見られる可能性があります。
ぐったりとしている状態はかなり脱水が進んでいる危険なサインです。
④目が落ちくぼんでいる・鼻が乾いている

体内の水分が不足すると、眼球がくぼんだように見えたり、いつもは湿っている鼻がカサカサに乾いたりする場合があります。
ただし、健康でも寝起きのときは鼻が乾いていることがあるので普段の様子とあわせて判断しましょう。
⑤尿の色が濃い・尿が出ていない
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水分が不足すると、体は水分を保持しようとするため、尿の量が減り、色が濃縮されたような濃い黄の尿が出るようになります。
また、半日以上まったく尿が出ていない場合は、脱水または腎機能障害(腎不全)の可能性もあります。
シニア犬に水を飲ませるための工夫

愛犬に体調不良がなく、ただ水を飲まない場合は、水分補給の方法を工夫すると飲んでくれる可能性があります。
愛犬が水を飲まなくて困っているママさんパパさんは、以下の方法を試してみてください。
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食事から水分を補給する

食事と一緒に水分を摂らせると、愛犬にも無理なく水分補給ができます。
食事から水分を補給するには、以下のような方法があります。
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我が家の10歳になるシニア犬も、器に用意した水をほとんど飲みません。
そのため、今は普段のドライフードにひたひたになる程度の水をかけて、毎食しっかり水分を摂らせています。
無理に飲ませようとするとお互いストレスになりますが、大好きな食事と一緒なら抵抗がないようです。
難しいことではないので、ママさんパパさんもぜひ試してみてくださいね。
水に「風味」をつける

水の味に飽きていたり、嗅覚が衰えて水に気づかなかったりする場合は、水に風味をつけるとよいでしょう。
たとえば、犬用のミルクやヤギミルク、肉のゆで汁をほんの少量加えると、香りがよくなり、水を飲む可能性が高くなります。
また、夏場は水の容器に氷を浮かべて興味を引く方法もおすすめです。
水飲み場・環境を見直す

水を飲まないシニア犬は、水を飲む環境を見直すことで改善する可能性があります。
たとえば、筋力が低下し、あまり歩けないシニア犬には、愛犬の近くの複数箇所に水飲み場を設置することをおすすめします。
また、関節痛で首を曲げるのが難しい愛犬は、フードスタンドを使い、お皿に高さを持たせるとよいでしょう。
ほかにも、お皿の種類を変えたり、水をこまめに取り替えたりすると、水を飲み始めるシニア犬もいます。
我が家の愛犬は、家の中では飲まないのに、なぜかお散歩中だけは差し出した水を飲んでくれます。
そのため、毎日の散歩には持ち運び用の水ボトルが欠かせません。
もしご自宅の愛犬が家で水を飲まなくても、お散歩中や公園、ドッグランなど環境が変われば飲む可能性もあるので試してみましょう。
脱水症状が出ていなければ、無理に家で飲ませようとせず、環境を変えてみることも検討してみてください。
シニア犬が水を飲まないときにやってはいけないNG行動

愛犬が水を飲まない姿を見ると、ママさんパパさんは「何とかして飲ませなければ」と焦ってしまいがちです。
しかし、その焦りがかえって愛犬を危険にさらしてしまうことがあります。
ここでは、絶対にやってはいけないNG行動を解説します。
無理やり口に流し込む
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シリンジ(針のない注射器)やスポイトを使って水を飲ませる方法は、介護で必要な手段ですが、専門的な技術と細心の注意が必要です。
シニア犬は加齢によって飲み込む力が低下しており、誤って水が気管に入ると「誤嚥性肺炎」を起こす危険があります。
誤嚥性肺炎は命にかかわることもあるため、必ず動物病院で安全な飲ませ方の指導を受けてから行ってください。
塩分や甘味を加えて飲ませる

「水なら飲まないけれど、味が付いていれば飲むかも」と考え、人間の飲み物を与えるのは絶対にやめましょう。
たとえば、人間のスポーツドリンクやジュースは、糖分が過剰に含まれており、血糖値の急上昇を招きます。
また、犬は乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)が少ないため、人間用の牛乳を飲むと下痢を引き起こす可能性があります。
水に風味をつけたい場合は、犬用のミルクや肉のゆで汁などを利用しましょう。
「シニア犬が水を飲まない=死期が近い」は本当?

「老犬が水を飲まないのは死期が近いサイン」と聞いて、不安に思われるママさんパパさんも多いと思います。
確かに最期が近づき、体が生命維持活動を終えようとする段階になると、全ての臓器の機能が低下し、食べ物も水も一切受け付けなくなる状態になります。
しかし、「水を飲まない=すぐに死期が近い・余命わずか」というわけではありません。
これまで解説したように、水を飲まない原因は「口が痛い」「飲む姿勢が辛い」「吐き気がある」「喉の渇きに気づかない」など、治療や対処によって改善できることのほうが多いのです。
「もう歳だから…」と諦めてしまう前に、「なぜ飲めないのか」の原因を突き止め、動物病院で適切な処置を受けると、再び元気を取り戻せる可能性は十分にあるといえます。
まとめ|シニア犬が水を飲まないときは原因を見極め、早めに行動を

シニア犬(老犬)が水を飲まない状態は、命に関わる脱水症状を引き起こす可能性があります。
まずは愛犬の皮膚のハリや歯茎をチェックし、脱水症状が疑われる場合は、様子見をせずに動物病院を受診してください。
病院で緊急性がないと診断された場合は、食事に水分を混ぜたり、水飲み場の環境を整えたりと、愛犬が無理なく水分を摂れる工夫を試してみましょう。
日々の小さな変化に気づき、早めに対処すると、愛犬のシニアライフを守ることにつながります。


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