プラチナ期の愛犬に必要な栄養素とごはんの工夫

COLUMN

愛犬が年齢を重ねていけばいくほど愛おしさが増しますよね。それと同時に食欲の変化や体重の増減に気づくたび、「このままでいいのだろうか」と心配になる方も多いでしょう。
けれど、その変化は愛犬の体からの大切なメッセージ。年齢に応じた食事を見直すきっかけでもあります。プラチナ期のごはんは、栄養を補うだけでなく「楽しく食べること」そのものが心と体を支える力になります。
本記事では、プラチナ期に必要な栄養素や、毎日の食事をもっと豊かにするための工夫を紹介します。

はじめに

愛犬が年齢を重ねていく姿は、愛おしさと同時に少し切なさも感じる瞬間があります。
でも、その変化は決して悲しいものではありません。
愛犬が長い時間を共に過ごしてきた証であり、その“プラチナの時間”をより豊かにするためのサインでもあるのです。
どうぞ、愛犬とのかけがえのない時間をさらに温かくするきっかけにしてください。

※本記事は一般的な情報です。愛犬の体調や病歴によって最適な食事やケアは異なりますので、実践の際は必ず獣医師など専門家にご相談ください。

歩く喜びを支える“たんぱく質の力”

シニア期の愛犬は筋肉量が徐々に減少し、足腰が弱りやすくなります。筋肉を保つことは「自分の足で歩く力」を守ることにつながり、生活の質を大きく左右します。
そこで欠かせないのが消化吸収の良い良質なたんぱく質です。鶏ささみ、白身魚、卵などは体への負担が少なく、効率的に栄養を届けます。ただし、腎臓機能が弱っている場合は過剰なたんぱく質が負担になるため注意が必要です。量ではなく「質」を重視し、愛犬の体調に合わせて調整していくことが大切です。

「良質なたんぱく質」とは、体が効率よく吸収し、筋肉や臓器の修復に役立つアミノ酸をバランス良く含んでいるものを指します。特に必須アミノ酸が十分に含まれているかがポイントです。プラチナ犬では消化機能が弱まりやすいため、胃腸に負担をかけずに栄養を届けられる 消化吸収の良さ が大切になります。

1.必須アミノ酸がバランス良く含まれている
2.消化吸収率が高い
3.体にやさしい調理・加工ができる

脂肪は減らすより“選ぶ”

プラチナ期は若い頃に比べて基礎代謝が低下し、同じ量を食べても脂肪がつきやすくなります。体重増加は関節や心臓への負担につながるため、摂取量の調整は重要です。
しかし、脂肪を極端に減らすとエネルギー不足や皮膚・被毛のトラブルを招きます。特にサーモンやイワシなどの魚に含まれるEPA・DHA、亜麻仁オイルのα-リノレン酸といったオメガ3脂肪酸は、炎症を抑え関節の柔軟性や脳の働きを助けます。
脂肪は敵ではなく「質を選ぶ栄養素」。良質な脂肪を賢く取り入れることが健康寿命を延ばす鍵です。

1.サーモンやイワシなどの魚に含まれるEPA・DHAは、炎症を抑え関節や脳の健康を守ります。魚が苦手な子やアレルギーのある場合は、亜麻仁オイルなど植物性オメガ3を補助的に取り入れるのも一つの方法です。
2.動物性脂肪はエネルギー源として必要ですが摂りすぎは体重増加の原因に。亜麻仁オイルやえごま油などの植物性脂肪を組み合わせることで、軽やかでバランスの取れた脂肪摂取ができます。
3.酸化した油脂は体に負担をかけ、逆に炎症を促進することもあります。魚油やオイル類は開封後は冷蔵保存し、早めに使い切るのが安心。新鮮な脂肪を与えることが「質」を守る第一歩です。

ビタミン

プラチナ期の体内では、細胞の老化や免疫力低下を引き起こしやすくなります。そこで役立つのが、抗酸化作用を持つビタミンやポリフェノールです。
ビタミンEは細胞膜を守り、ビタミンCは免疫機能を支え、βカロテンは体内でビタミンAに変換され粘膜や皮膚を健康に保ちます。ブルーベリーやにんじん、かぼちゃなど身近な食材から摂ることも可能です。少量をトッピングするだけで、ごはんに彩りと香りが加わり、食欲の刺激にもつながります。

1.抗酸化成分は「組み合わせ」で強まる
ビタミンEとビタミンCは一緒に摂ると働きが補い合い、より強い抗酸化作用を発揮します。例えば、かぼちゃ(ビタミンE)+りんご(ビタミンC)といった食材の組み合わせは、ごはんの質を高める工夫になります。

2.調理法によって吸収率が変わる
βカロテンなどの脂溶性ビタミンは、油と一緒に摂ると吸収率が上がります。にんじんを少量のオリーブオイルで軽く蒸したり、かぼちゃをペーストにしてフードに混ぜたりすることで、効率よく栄養を届けられます。

3.サプリに頼りすぎず「食材から」が基本
抗酸化成分やミネラルはサプリで補うことも可能ですが、まずは新鮮な食材から摂ることを基本にすると、嗜好性や食事の楽しさも高まります。特にプラチナ期は「栄養+食べる喜び」を両立させることが心身の健康につながります。

骨と心を支える“見えない栄養”

カルシウムやリンは骨や歯の健康を支え、マグネシウムは神経や心臓の安定に欠かせません。
プラチナ期は骨密度が低下しやすく、転倒や骨折リスクが高まるため、ミネラルバランスを整えることはとても重要です。ただし、過剰に摂取すると腎臓や泌尿器に負担をかけることもあるため注意が必要です。
総合栄養食は適切に調整されているため安心ですが、手作り食を取り入れる場合には獣医師や栄養士に相談するのが望ましいでしょう。目に見えない存在だからこそ、見落とさずに丁寧にケアしたい栄養素です。

1.ミネラルは不足しても過剰でも問題が出やすい栄養素です。腎臓や泌尿器に不安がある子は、カルシウムやリンを摂りすぎないように注意しましょう。月に一度は体重・便の状態・歩き方をチェックし、必要に応じて獣医師に相談することが安心につながります。

2.ドッグフードの「総合栄養食」は、カルシウム・リン・マグネシウムなどのバランスが科学的に調整されています。まずはこれをベースにすれば、過不足なく安心です。

3.手作りごはんや食材をトッピングする場合は、カルシウムとリンのバランス(理想は約1.2:1)が崩れやすいため注意が必要です。例えば、肉や魚はリンが多めなので、カルシウム源(煮干し粉、卵殻パウダーなど)を少し補うとバランスが取りやすくなります。

「食べる喜び」を大切に

栄養だけでなく「楽しく食べる」こともシニア犬にとって重要です。
食欲が落ちてきたら、

1.香りと温度で食欲アップ

ドライフードはそのままだと香りが弱くなりがちです。電子レンジで数秒温めたり、ぬるま湯をかけて軽くふやかすことで香りが立ち、嗅覚が鈍くなったプラチナ犬でも食欲を刺激できます。

2.彩りと食感の変化を加える

にんじんやかぼちゃを柔らかく煮て小さく刻み、トッピングに使うと彩りが増して見た目も楽しくなります。さらに、柔らかさを変えることで「噛みやすい・飲み込みやすい」食事に調整できます。愛犬は色がわからなくても、飼い主さんの楽しい嬉しい心を感じ取って、それも食欲アップに繋がります。

愛犬の“お気に入り”を活かす

若い頃から好きだった食材を少量加えると安心感や「食べたい気持ち」を呼び戻しやすくなります。ささみや白身魚、無糖ヨーグルトなど嗜好性の高いものを、無理のない範囲でトッピングするのが効果的です。

お水も栄養のひとつ

プラチナ犬は喉の渇きを感じにくくなるため、脱水や腎臓・心臓の負担につながりやすくなります。食事から自然に水分を補える工夫が必要です。
水分がしっかり摂れていると血流や代謝がスムーズになり、体調全体の安定につながります。「飲ませる」より「一緒に楽しむ」工夫で、日常に水分補給を取り入れましょう。

1.いつものフードを「スープ仕立て」に
ドライフードにぬるま湯や無塩の煮汁(野菜などを茹でたスープ)をかけ、柔らかくふやかして与えます。香りが立ちやすく食欲も刺激され、水分も自然に摂れる一石二鳥の工夫です。

2.水分の多い食材をプラス
きゅうりやレタスなど水分を多く含む野菜を細かく刻んで混ぜたり、無糖ヨーグルトを小さじ1~2程度トッピングしたりします。おやつ感覚で楽しみながら水分補給ができます。

3.季節や好みに合わせて「温度」を工夫
夏は常温~少し冷たい水分、冬はぬるま湯や温かいスープ仕立てにして与えると、飲みやすさがアップします。特に冬場は冷たい水を嫌がる子が多いため、常に飲みやすい温度にしてあげるのがポイントです。

まとめ

プラチナ期の食事は「量より質」が大切です。
筋肉を支える良質なたんぱく質、関節や脳を守る脂肪、骨や心臓に欠かせないミネラル、体の変化に寄り添う抗酸化成分など、バランスや消化や嗜好性にも配慮しましょう。例えば、フードを温めて香りを引き立てる、彩り豊かな野菜を少し添える、スープ仕立てにして水分補給を促すなど、日常の小さな工夫が愛犬の健康と喜びを支えます。ごはんは栄養補給の時間であると同時に、家族と愛犬の絆を深める大切なひととき。
毎日の食事が「健康」と「幸せ」をつなぐ大切な時間となり、小さな工夫を積み重ねることで、かけがえのない毎日がより豊かで穏やかなものになります。

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