老犬の血尿に潜む病気とは?原因や治療、対応方法を獣医師が解説

COLUMN

愛犬の尿に赤みが混じっていると、

「もしかして血尿?」
「何か病気にかかってしまったの?」
「動物病院を受診した方がいい?」

と心配になりますよね。

実はそれは、腎臓や膀胱、子宮のトラブルのサインかもしれません。

特に老犬では、免疫力や臓器の機能が低下しており、血尿が重大な病気のサインであることも少なくありません。

今回は、老犬の血尿に潜む主な病気やよくある原因、治療法、再発予防のポイントについて、獣医師が解説します。

最後までお読みいただき、もし愛犬が血尿を起こした場合に備えましょう。

老犬の血尿に潜む主な病気

老犬が血尿を起こした場合、何かしらの病気が隠れていることが多いです。

では、いったいどのような病気が考えられるのでしょうか?

それぞれを詳しく見ていきましょう。

①膀胱炎

膀胱炎は血尿の原因としてとても一般的な病気です。

膀胱内に細菌が侵入して感染・炎症を起こすことで、粘膜が傷つき尿に血液が混じります。

主な原因は、

  • 排尿を我慢する習慣
  • 不衛生なオムツの使用
  • 陰部周囲の舐め壊し
  • 免疫力の低下
  • 薬剤耐性菌の出現
  • 結石による粘膜の障害
  • ホルモンの病気

などが挙げられます。

特にメスは尿道が短く細菌が侵入しやすいため、膀胱炎を起こしやすい傾向にあります。

ホルモンの病気とは?

ホルモンの病気は、犬では糖尿病や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)などが多く見られます。
ホルモンの影響により、膀胱などでの細菌感染が起こりやすくなり、そこから膀胱炎を起こすケースが多いです。

②腎盂腎炎

腎盂腎炎は、主に膀胱から細菌が腎臓へ逆流して感染・炎症を起こすことが原因となります。

膀胱炎が悪化し、それに伴い発症するケースが多いです。

腎盂腎炎にまで進行すると、食欲不振や発熱などの全身症状が見られることが多くなります。

老犬の血尿は放置せず、早めの受診を心掛けることが大切です。

③尿石症

尿石症は、尿中のミネラル成分が結晶化し、最終的には腎臓や膀胱に結石ができる病気です。

結石が形成されると、膀胱や尿道の粘膜を傷つけ、血尿を起こすことがあります。

老犬では、膀胱での感染や脱水によって尿石症の発症リスクが高まります。

特にオスの尿道は細く結石が詰まりやすいため、最悪の場合は尿道閉塞(尿が出ない状態)になることがありますので、その場合はすぐに動物病院を受診しましょう。

結石とは?

カルシウムやリン、マグネシウムといったミネラル成分は、尿中に過剰に存在すると析出し塊を作ります。それが「結石」と呼ばれるものです。
犬では「シュウ酸カルシウム結石」と「リン酸アンモニウムマグネシウム結石(ストルバイト結石)」が一般的な結石の種類です。

④腫瘍

老犬が血尿を起こした場合、腫瘍が原因である可能性も無視できません。

特に膀胱の「移行上皮癌」や前立腺の「前立腺癌」などの悪性腫瘍は、高齢犬に多く見られます

また、前立腺癌はオスに多い病気です。

⑤子宮蓄膿症

子宮蓄膿症は避妊手術をしていないメスに多い病気で、子宮の中に膿がたまることで起こります。

子宮からの膿が尿と混じることで、血尿のように見えることもあるため注意が必要です。

子宮蓄膿症は放置すると敗血症やショック症状を起こし、命に関わる危険な病気です。

老犬の血尿でよく見られる症状

ここまでは老犬の血尿の原因について解説しました。

原因はさまざまありますが、老犬の血尿に伴って見られるいくつかの症状は共通しています。

具体的には、

  • 頻尿(何度もトイレに行く)
  • 尿が少量しか出ない
  • 排尿時に痛がる、鳴く
  • 尿のにおいが強い

といった症状です。

しかし、それに加えて以下のような症状がある場合は、腎盂腎炎や子宮蓄膿症などの重たい病気である可能性があります。

  • 発熱
  • 食欲不振
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 元気消失
  • 多飲多尿
  • 腹部膨満

これらの症状も見られた場合は、早急に受診するよう心がけましょう

老犬の尿から分かる異常のサイン

老犬の尿で分かる異常のサインは血尿だけでなく、尿の色やにおい、頻度にも病気のサインが隠れています。
日頃から愛犬の排尿の様子を把握しておくと、体調管理に大きく役立つでしょう。

  • 濃い黄色や茶色の尿:脱水や肝臓・腎臓などの異常
  • 白く濁った尿:細菌感染や尿石症などの異常
  • 白く透明な尿:腎臓やホルモンの病気などの異常
  • トイレの頻度が多い:膀胱炎や腎臓病などの異常

老犬の血尿に行う検査

では、実際に動物病院を受診した際には、血尿の原因を調べるためにどのような検査が行われるのでしょうか?

それぞれを詳しく見ていきましょう。

①尿検査

尿検査では、赤血球や細菌の有無、pH、結晶の種類などが確認できます。

また、比重を測定することで、腎臓やホルモンの病気が隠れていないかも確認できます。

②血液検査

血液検査では、腎臓や肝臓の数値、炎症の程度を調べることができます。

特に腎盂腎炎まで進行した際は、異常な数値が確認できることがあります。

③レントゲン検査

レントゲン検査では結石の有無や子宮の腫れが確認できます。

基本的には麻酔の必要はなく、犬への負担が少ない検査です。

④超音波(エコー)検査

エコー検査では、膀胱や腎臓、子宮などの内部構造を画像で確認することができます。

膀胱内の腫瘍の多くは、エコー検査を行わないと判断できないことが多いです。

老犬の血尿の治療法

では、実際に血尿と診断されたときは、どのような治療が行われるのでしょうか?

血尿の原因によって治療内容は異なりますが、主な方法は次の通りです。

それぞれを詳しく見ていきましょう。

①抗生剤や消炎剤の投与

軽度の細菌性膀胱炎であれば抗生剤や消炎剤の内服で改善することが多いです。

腎盂腎炎の場合も同様に抗生剤が使用されますが、多くは点滴での治療も併用されます。

②点滴治療

点滴での治療は、主に腎盂腎炎や子宮蓄膿症などで、症状が重たい場合に行われます。

多くは入院での治療になります。

③食事療法

食事療法は主に尿石症において、結石を溶かす、または結石が再度作られないようにするために行われます。

多くは療法食(処方食)を長期的に与えることで治療を行います。

④外科手術

血尿の原因が子宮蓄膿症や腫瘍、結石などである場合は、手術による治療が行われる場合があります

ただし、老犬では手術することが難しい場合もあり、腫瘍であれば、抗がん剤や放射線での治療が選択されるケースも珍しくありません。

老犬の血尿の再発予防

では、老犬の血尿の治療が終わった後、どのような再発予防を行ったらよいのでしょうか?

血尿を繰り返さないためには、日常生活の中での予防が大切です。

具体的には、

  • 水分摂取量を増やす
  • 療法食を継続する
  • 清潔なトイレ環境を保つ
  • オムツはこまめに交換
  • 定期的に尿検査を受ける

といった対策が挙げられます。

また、上記の対策を行っていても頻尿や血尿が起こる場合は、早めに動物病院を受診し、対策が適切にできているか相談しましょう。

まとめ|老犬の血尿は早めの受診で重症化を防ぐ

老犬の血尿は、軽度な細菌性の膀胱炎から、腫瘍や子宮蓄膿症などの命に関わる病気まで、さまざまな原因で起こります。

「一時的だから大丈夫だろう」と放置せず、早めに検査を受けることが何より大切です。

また、日頃から排尿の様子を観察することで、病気の早期発見につながります。

食欲や元気の変化にも注意し、気になることがあれば早めに受診をすることで、愛犬の治療の負担を最小限に抑えることができます。

浅川 雅清

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2016年日本大学生物資源科学部獣医学科卒。 同年よりペットショップ併設の動物病院にて勤務。 犬・猫・うさぎ・ハムスターの診察を中心に、ペットショップの生体...

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