シニア犬のトイレトレーニング|室内への移行方法から失敗対策まで解説
「昔は完璧だったのに、最近トイレの失敗が増えてきた」
「雨の日でも外に行かないと排泄しないから、大変」
シニア期に入った愛犬との暮らしで、このような悩みを抱えていませんか?
トイレトレーニングは、老犬だから難しいと諦めてしまうママさんパパさんも少なくありません。
しかし、元訓練士として多くの犬と関わってきた経験からお伝えすると、何歳になっても犬は新しいことを覚えます。
そのため、トレーニングのコツさえ把握していれば、シニア犬でもトイレを覚えることは可能といえます。
この記事では、元犬の訓練士である私が、シニア犬のトイレトレーニングの手順や、外派から室内派へ移行するコツなどを解説します。
シニア犬でもトイレトレーニングは可能!再しつけをする3つのメリット

犬は生涯を通じて学習する能力を持っているため、正しい手順で教えれば、何歳からでもトイレトレーニングは可能です。
トイレの再トレーニングは、ママさんパパさんの負担を減らすだけでなく、愛犬が清潔で快適に過ごすことにもつながります。
ここからは、トイレトレーニングによって得られる、3つのメリットを紹介します。
メリット①天候に左右されず排泄できる
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トイレトレーニングによって室内で排泄できるようになれば、天候や気温を気にする必要がありません。
シニア犬は体温調節機能が低下し外気の影響を受けやすいため、真夏や真冬の外出は、体にとって負担となる場合があるのです。
しかし、室内トイレであれば、快適な室温の中で落ち着いて排泄できます。
ママさんパパさんも、悪天候の中で散歩に行く必要がなくなり、負担が減るでしょう。
メリット②介護が必要になった際の負担を軽減できる
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将来的に介護が必要になった場合、トイレで排泄をする習慣が身についていると、ママさんパパさんの負担を軽減できます。
足腰が弱り歩行が難しくなっても、室内のトイレで排泄ができると、抱きかかえて外へ連れ出す必要がなくなります。
また、オムツを終日着用しなくてもよくなるため、皮膚トラブルの予防にも効果的です。
メリット③排泄物から体調をチェックできる
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ペットシーツの上で排泄すると、尿の色や量などを正確に把握でき、毎日の健康管理に役立ちます。
また、便の状態も土や草の上よりペットシーツの上のほうが確認しやすく、いつもと異なる排泄物にいち早く気付けるため、病気の早期発見につながるでしょう。
シニア期は腎臓病などの病気リスクが高まる時期です。
日々の変化を見逃さないためにも、室内で排泄ができるようにトレーニングしましょう。
シニア犬のトイレトレーニングの基本ステップ
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シニア犬のトイレトレーニングは、若い頃と比べると時間がかかる可能性があります。
しかし、手順通りに無理なく進めると、シニア犬でもトイレを覚えられます。
ここからは、トイレトレーニングの基本的な4つの手順を見ていきましょう。
ステップ①排泄しやすい場所にトイレを設置する
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まずは、愛犬が排泄しやすい環境を整えましょう。
シニア犬は足腰が弱り、尿意を感じてからトイレまでの移動に時間がかかるため、間に合わずに失敗する可能性があります。
トイレは、普段過ごしている場所の近くに設置することをおすすめします。
また、犬はくるくると回って排泄場所を決める習性があるため、トイレは広めのスペースを確保してください。
ステップ②排泄のタイミングで誘導する

環境が整ったら、次は排泄のタイミングを見計らってトイレへ誘導します。
むやみに連れて行くのではなく、シニア犬の生活リズムを観察して、排泄したくなる時間にトイレに誘導するとスムーズです。
誘導に適したタイミングは、以下のとおりです。
| タイミング | 理由 |
| 寝起き直後 | 体が目覚めて内臓が動き出し尿意を感じる |
| 食後や水を飲んだ後 | 胃腸が刺激されて排泄が促される |
| 運動や遊びの後 | 体が温まり代謝が上がって排泄したくなる |
誘導しても排泄しない場合は、一度愛犬を自由にして様子を見て、5分ほど経ってから再度誘導しましょう。
焦らず愛犬のタイミングを合わせると、トイレでの成功を増やせます。
ステップ③成功したら褒めてご褒美を与える

トイレで排泄ができたら、直後にたくさん褒めてご褒美を与えることが大切です。
排泄ができる度に褒めてご褒美をあげると、「トイレで排泄すると良いことがある」と覚えてもらえます。
ただし、排泄が終わってから時間が経つと、何に対して褒められたか理解できません。
トレーニング中は大好きなオヤツを常に用意しておき、成功したらすぐに愛犬に与えられるようにしておきましょう。
ステップ④「ワンツー」などのコマンドを教える
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トイレでの排泄に慣れてきたら、トイレのコマンドを教えましょう。
排泄中に「ワンツー」や「シーシー」などのコマンドを繰り返すと、その言葉を聞くと排泄したくなる条件反射を作れます。
コマンドを教える際のポイントは、以下のとおりです。
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ママさんパパさんの声かけで排泄を促せるようになると、介護やお出かけの際もスムーズに排泄できます。
外派のシニア犬を室内へ!トイレトレーニング移行法
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トイレは外派のシニア犬を室内のトイレに移行するのは簡単ではありません。
長年の習慣を変えるには、少しずつ環境を室内に近づける工夫が必要です。
ここからは、具体的な室内への移行方法を紹介します。
外に近い場所・環境から慣らす

外での排泄に慣れた犬は、外の空気や足裏の感触を好むため、いきなり室内のトイレでさせようとしてもうまくいかない場合がほとんどです。
まずは外に近い環境を用意することから始めましょう。
以下の場所から試してみると、抵抗感を減らせるはずです。
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足裏の違和感を減らすため、シーツの上に人工芝や土を置くのも効果的です。
外に近い場所でできるようになったら、少しずつシーツを部屋の中へ移動させます。
焦って移動距離を伸ばすと愛犬が混乱するため、毎日数センチずつ移動するくらいの気持ちで、ゆっくりと場所をずらしましょう。
自分のニオイがついたペットシーツを用意する

犬は、自分の排泄物のニオイがついている場所をトイレと認識する習性があるため、新品の真っ白なペットシーツはトイレだと認識しづらくなります。
トイレと認識してもらうためには、外でしたおしっこを少し採取し、室内のペットシーツにつけておきましょう。
ニオイを頼りにトイレへ誘導すると、スムーズに排泄を促せます。
また、排泄物はすぐに片付けたくなりますが、トレーニング中はあえて少しニオイを残すのもポイントです。
排泄のリズムを把握して誘導する
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散歩でしか排泄しない犬は、極限まで我慢しているケースも少なくありません。
失敗を防ぐには、愛犬が「いつ」「どのような状況」で排泄するかを知ることが大切です。
数日間、排泄のタイミングや様子を記録し、リズムを把握しましょう。
リズムがわかれば、タイミングよくトイレに連れ出せます。
我慢の限界が来る前に誘導し、室内での成功体験を積み重ねましょう。
シニア犬のトイレトレーニングを成功させる4つのポイント
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シニア犬のトイレトレーニングは、若い頃のようにすぐに覚えられるとは限りません。
長年の習慣を変えるには時間がかかり、思うようにいかず焦ってしまう場合もあるでしょう。
しかし、環境づくりやママさんパパさんの接し方を変えるだけで、愛犬の失敗を減らし、成功へと導けます。
最後に、シニア犬のトイレトレーニングを成功させるための4つのポイントを解説します。
①失敗しても叱らない

トイレ以外の場所で愛犬が粗相をしても、叱ってはいけません。
叱られると排泄行為そのものを悪いことだと認識してしまい、我慢したり隠れて排泄したりする原因になるのです。
また、失敗が増える背景には、病気が隠れている可能性もあります。
獣医師が用いる認知機能不全の診断基準「DISHAA」においても、不適切な排泄は認知症の代表的な症状の一つとされています。(※1)
つまり、トイレの失敗はしつけの問題ではなく、加齢による脳の変化の可能性もあるのです。
頻繁に失敗が続くようであれば、獣医師に相談してみてください。
②トイレの段差をなくす
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足腰が弱ったシニア犬は、トイレトレーのフチにつまずきやすく、トイレに入るのを嫌がるケースもあります。
そのため、トイレの入り口は段差をなくし、スムーズに入れる環境を整えることがポイントです。
段差を解消するための工夫は、以下のとおりです。
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入りやすさを優先し、愛犬がストレスを感じないトイレを目指しましょう。
③コマンドを統一する

トイレの合図となるコマンドは、家族全員で統一する必要があります。
人によって言葉が違うと、愛犬は何を求められているのか理解できません。
コマンドは、「ワンツー」「シーシー」など、短くて聞き取りやすい言葉がおすすめです。
言葉を決めたら家族全員に共有し、愛犬を混乱させないように心がけましょう。
④室内のトイレで排泄してから散歩に行く

散歩で排泄をしている犬には、「室内で排泄したら散歩に行ける」というルールを作ることをおすすめします。
まずは散歩の準備をして、リードをつける前にトイレへ誘導します。
次にコマンドで排泄を促し、排泄ができたらすぐに褒めて散歩に出発しましょう。
この方法は、散歩をご褒美にすることで、室内トイレへの意欲を高められます。
最初は排泄するまで時間がかかるかもしれませんが、根気強く待つのがポイントです。
まとめ|トイレトレーニングは焦らず愛犬のペースで進めよう

シニア犬のトイレトレーニングは、パピーの頃とは違い、長年の習慣や体の衰えと向き合いながら進める必要があります。
そのため、ママさんパパさんが思っているより、なかなか成功できない場合もあります。
しかし、焦らず根気強く向き合うと、シニア犬でもトイレトレーニングを成功させられます。
愛犬のペースに寄り添いながら、無理のない範囲でトレーニングを続けていきましょう。
<参考文献>
※1:ぎふ動物行動クリニック「犬の認知症とは?DISHAAの6徴候について」


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