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シニア犬にキャットフードをあげていい?OKな場合や注意点を専門家が解説

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シニア犬がドッグフードや療法食を食べないときに、「キャットフードを試してみたら?」ということを言われたことがあるママさん・パパさんもいるのではないでしょうか。

犬用や猫用と分けているくらなのだから何か理由があるはずで、本当に大丈夫なのか心配になりますよね。

確かに、犬と猫では必要な栄養素が異なるので注意は必要ですが、場合によってはシニア犬にキャットフードを与えても良いこともあるのです。

そこでこの記事では、高齢の愛犬たちと暮らしてきたペットフーディストや犬の管理栄養士の私が、シニア犬にキャットフードを与えても良いケースや注意点などを解説します。

キャットフードとドッグフードの違い

犬と猫は同じ肉食動物に見えますが、必要とする栄養が異なります。

そのため、キャットフードとドッグフードでは、肉類の含有量やミネラル類の量、栄養バランスなどに大きな差があるのです。


  • 限りなく肉食に近い雑食。動物性タンパク質だけでなく植物性タンパク質も利用可能

  • 完全肉食。動物性タンパク質が不可欠。植物性成分をうまく利用できない

キャットフードはドッグフードよりもタンパク質と脂質が多めに作られており、「タウリン」「アラキドン酸」「ビタミンA」など、猫に欠かせない成分も強化されています。

また、ナトリウムの量(塩分)についても、AAFCO(米国飼料検査官協会)の基準で猫のほうが高めに設定されているんですよ。

【AAFCO栄養基準(最低値)】※スクロールしてご覧ください

幼犬 幼猫 成犬 成猫
タンパク質 22.5%以上 30.0%以上 18.0%以上 26.0%以上
脂質 8.5%以上 9.0%以上 5.5%以上 9.0%以上
ナトリウム 0.3%以上 0.2%以上 0.08%以上 0.2%以上

ただ、犬にとってはこれらの栄養が過剰になってしまうこともあり、長期的に食べ続けることで内臓の負担につながる恐れもあります

つまり、犬がキャットフードを食べてもすぐに大きな問題にはなりませんが、猫がドッグフードを食べるのは絶対にNGなのです。

シニア犬にキャットフードを与えるメリットとリスク

シニア犬になると、嗅覚や味覚が衰え、今までのドッグフードを残すようになることもあります。

ひどい場合では、まったくご飯を食べなくなってしまうこともあるでしょう。

そんなときに、「キャットフードをあげたらいいよ」と言われれば、藁にも縋る思いで試してみようと思っても不思議はありません。

ここでは、シニア犬にキャットフードを与えるメリットとリスクについて知っておきましょう。

メリット|嗜好性が高く食べてくれる可能性が高い

シニア犬にキャットフードを与えるメリットは、食べてくれる可能性が高いということです。

キャットフードは、香りが強く、味も濃い傾向があります。

これは、猫が完全肉食であることに加えてグルメであることに配慮されているためで、犬は美味しいと感じやすいのです。

特に、ドライフードよりもウェットフードは香りが立ちやすく、シニア犬の食べたい気持ちを引き出すきっかけになることがあります。

リスク|長期使用で内臓に負担がかかる可能性

キャットフードはタンパク質や脂質が高めに作られているため、シニア犬に長期間与え続けると、肥満や膵炎、腎臓や肝臓などへの負担がかかる可能性があります。

また、ミネラル量もドッグフードに比べて高めなので、シニア犬では心臓病や腎臓病、泌尿器トラブルを悪化させてしまう恐れも。

成分表の灰分の数値を確認し、9%以下のものを選ぶと良いでしょう。

■灰分とは?
カルシウムやリン、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などのミネラルのこと

シニア犬にキャットフードがOKな場合

基本的にはドッグフードを優先すべきですが、シニア犬がどうしても食べないときなどに一時的な選択肢としてキャットフードが役立つこともあります。

ここでは、キャットフードを与えても良い場合について見ていきましょう。

ドッグフードをまったく食べないときに一時的に使用する場合

食欲が落ちて、ドッグフードに一切興味を示さなくなったときなどは、キャットフードを一時的に与えることが良い場合もあります。

体力の低下は病気のリスクが上がったり、回復を遅らせる、持病の進行を早めるなどさまざまなリスクがあり、まずは食べてもらうことが最優先です。

ただし、キャットフードは高カロリー・高脂質のため、与える量には注意しましょう。

体調が落ち着き、食欲が少し戻ってきたら、徐々にドッグフードに戻していきます。

美味しいものを食べるとドッグフードを食べなくなることを心配するかもしれませんが、実際には短期間であれば問題ないケースがほとんどです。

私の経験でも、高齢の愛犬たちがどんなに美味しいものを食べていても、自然とドッグフードに落ち着いていましたよ。

療法食を食べないなどで獣医師が認める場合

腎臓病や肝臓病、心臓病などの持病があるシニア犬では、獣医師の指示で療法食を食べてもらうことが治療の一部になります。

しかし、療法食は美味しさを第一に作られているわけではないため、嗜好性が低くてまったく食べないということも少なくありません。

そんなとき、一時的に猫用の療法食を使用する方法もあります。

もちろん、与える前に獣医師に確認する必要はありますが、療法食は栄養素を制限するという目的が同じなため、シニア犬が食べる場合は許可が出ることがほとんどです。

実際に私の愛犬が腎臓病になり、療法食をまったく食べなくなってしまったときにかかりつけの獣医師に相談すると、「猫用でもいいですよ」と認めてもらえました。

あくまで「どうしても犬用を食べない」「栄養を取らないと危険」という状況で、獣医師が例外的に許可するケースではありますが、それくらい食べてもらうということは大切なことなのです。

シニア犬にキャットフードを与えるときの4つの注意点

一時的であればシニア犬にキャットフードを与えることもありますが、「一時的だから大丈夫」と油断してはいけません。

ここでは、シニア犬にキャットフードを与えるときに気をつけたいポイントを解説します。

①まずは動物病院を受診する

シニア犬がドッグフードを食べない原因は、加齢による味覚や嗅覚の変化、噛む力の低下、頑固さの増加などさまざまです。

しかし中には、歯周病・腎臓病・心臓病・消化器トラブルなど病気が関係しているケースもあります。

そのため、まずは一度動物病院を受診して原因を突き止めましょう。

シニア期は体の不調に気づきにくく、病気の進行も早い傾向があります

早期発見・早期治療をすることで、シニア犬の食欲の回復や生活の質(QOL)維持につながりますよ。

②量をしっかり調整する

キャットフードはドッグフードよりもカロリーが高く、脂質も多めに作られていることが多いです。

そのため、現在与えているドッグフードと同じ量を与えるとカロリーオーバーになりやすく、肥満の原因となってしまうことがあります。

特にシニア期は運動量が減り、代謝も落ちるため、少し食べ過ぎただけでも肥満や内臓への負担がかかりやすい!

シニア犬にキャットフードを与えるときは、カロリー計算をしっかり行い、その犬が1日に必要なカロリーになるようにしましょう。

【犬が1日に必要なカロリーの計算方法】※√キーのある電卓をご用意ください

  1. 愛犬の体重(kg)を3回かける(体重×体重×体重)
  2. ①で出た値に対して、√(ルート)を2回押す
  3. ②で出た値に70をかける
  4. ③で出た値に活動係数をかけ1日に必要なカロリーを出す

スマホの電卓アプリでも計算可能です!

活動係数とは、犬の年齢や去勢の有無などの状態によって決まる数値のことです。シニア犬の活動係数は以下をご覧ください。

状態 活動係数
避妊去勢なしシニア犬 1.4
避妊去勢済みシニア犬 1.2
肥満気味の犬 1.0~1.2
安静状態の犬(入院中など) 1.0

③健康チェックを欠かさない

キャットフードを与えている期間は、体調変化をよく観察しましょう。

特に気をつけたいのは、尿の量やにおい、便の状態、皮膚のかゆみやベタつきなどです。

キャットフードはナトリウムや脂質が多いため、腎臓・肝臓・心臓などに負担がかかることがあります

体調に異変が見られたらすぐに中止して獣医師に相談してください。

④食欲が戻ったらドッグフードに戻す

キャットフードはあくまで食べてもらうための一時的なサポートです。

シニア犬の食欲が安定してきたら、ドッグフードに戻しましょう。

戻すときは、急に切り替えると消化不良を起こすことがあるため、10日ほどかけて徐々に戻すことをおすすめします。

キャットフードに頼らずシニア犬に食べてもらうための4つの工夫

キャットフードで一時的にシニア犬の食欲を刺激するのも一つの方法ですが、やはりドッグフードでしっかり栄養を摂ってもらいたいですね。

ここでは、キャットフードに頼らずシニア犬がごはんを食べやすくなる工夫を紹介します。

①香りで食欲を刺激する

眠そうにしている老犬

フードを電子レンジで10~20秒程度温め、香りを立たせてみましょう。ドライフードならぬるま湯でふやかしてあげてもいいですね。

また、鶏むね肉や白身魚、野菜の煮汁などをトッピングすると、香りと旨みの両方で食欲を刺激できます。

②食べやすさに配慮する

シニア犬は歯やあごの力が弱くなり、硬いフードが負担になることがあります。

そんなときは、粒の小さいフードやフリーズドライフード、ウェットフードを選びましょう。

また、食べる姿勢も重要です。シニア犬や首や腰、関節に痛みを抱えやすく、フードボウルの高さが合っていないだけで食欲が落ちることもあります。

食べやすいように少し高めの位置にフードボウルを置いてあげましょう。

なお、口の中にトラブルがある場合は、ウェットフードやペースト状のフードを人肌程度に温めてあげると口当たりがやわらかくなり、食べやすくなりますよ。

③ドッグフードを変えてみる

シニア犬になると、嗜好性が変化することも珍しくありません。

「食べない」のではなく、そのドッグフードが食べたくないだけということもよくあります

まったく違うメーカーや違うタイプのドッグフードに変えてみましょう。

④フードローテーションを取り入れる

フードを食べる老犬

シニア犬は高齢になればなるほど、頑固さや食へのこだわりが強くなる傾向にあります。

「昨日まで食べていたのに、今日は全然食べない」というのもよくある話。

そんなときは、フードローテーションを取り入れてみましょう。

■フードローテーションとは?
複数のフードを順番に切り替えて与える方法で、飽きを防ぎつつ、さまざまな栄養をバランスよく摂ることができる

フードローテーションはさまざまなものをバランスよく食べることにつながるため、認知症対策にも役立つと考えられています。

私自身も、朝・昼・夜で与えるフードを変えるようにしていましたが、食べ飽きしづらく、高齢の愛犬たちにしっかり食べてもらうことができていましたよ。

まとめ

笑顔の老犬と撫でる飼い主

シニア犬がご飯を食べないときは、何とか食べてもらいたいとママさん・パパさんも必死になりますよね。私自身も何度も経験したので、その気持ちがよくわかります。

そんなときは、一時的に子犬用フードやキャットフードを取り入れるのもひとつの方法です。

もちろん、注意しなければいけないこともありますが、まずは食べてもらうことが一番重要なこと。

焦らず、獣医師と相談しながら、愛犬のペースで食べる喜びを取り戻してもらいましょう。

毎日のごはんが、シニア犬にとって幸せの時間になりますように。

シニア犬に子犬用フードをあげても大丈夫?OK条件と注意点【専門家解説】

たかだ なつき(高田菜月)

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4匹の愛犬と暮らすペット専門ライター×ペットの専門家。長年人間の介護に携わっていたが、愛犬の介護をきっかけにペットライターに転身。犬の飼育歴は20年以上。こ...

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