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老犬の息を吸う時の震えと痙攣の原因|小刻みな震えと食欲不振は病気のサイン

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「老犬が息を吸う時に震えるのを見て、思わず息を飲んでしまった……」

ママさんパパさんは、隣で眠る愛犬の苦しそうな様子に胸を痛めていませんか?

私はJKC愛犬飼育管理士として、また20年以上にわたり5匹の愛犬と暮らし、3匹を見送ってきた経験から「正しい情報を知っているかどうかが命の行方を左右する」ことを痛感しています。

そして、シニア期に入ると寒さや筋力低下で震えることはありますが、老犬が息を吸う時に震えるのは、単なる老化として見過ごしてはいけない危険なサインです。

この記事では、シニア犬と暮らしてきた私が、老犬が息を吸う時に震える原因や震えと痙攣の見分け方、そして小刻みに震えるうえ食欲がない場合の緊急対処法を徹底解説します。

最後まで読むことで、愛犬のSOSを正しく読み解き、冷静に行動することができるでしょう。

老犬が息を吸う時に震える原因と痙攣の危険性

老犬が呼吸に合わせて体を震わせる場合、単なる老化や寒さではないケースが疑われます。

中には、呼吸器・循環器のトラブルが隠れている可能性があるので、原因を知ることが大切です。

呼吸器・循環器のトラブル

心臓のポンプ機能が弱まる心不全などが起きると、全身への酸素供給が不足し呼吸が荒くなり、その苦しさから体が震え始めるのです。

国際的な獣医循環器ガイドライン(ACVIM)によると、心不全ステージCでは安静時呼吸数増加と落ち着きがない様子が現れ、命に関わる緊急サインとなります(※)

心不全や肺水腫といった循環器系の疾患が疑われる際に見られる具体的なサインをまとめました。

症状(震え以外) 原因
咳(乾いた「カッカッ」など) 肺に水が溜まっている、または気管が圧迫されている
起座呼吸 横になると苦しいため、座って呼吸しようとする
舌の色が青い(チアノーゼ) 血液中の酸素が決定的に不足している
呼吸数の増加 酸素不足を補おうとして体が働く

以前、SNSで「夜中に愛犬が息を吸う時に震えるのを見て、救急病院に連れて行ったら心不全でした」という飼い主さんの具体的な体験談を読みました。

その方は、「あの震えは単なる寒さじゃなかった」と語っていました。

心臓のトラブルは進行が速いため、冷静に上記のサインと合わせて判断することが求められます。

※参考:おざき動物病院「ACVIM consensus guidelines for the diagnosis and treatment of myxomatous mitral valve disease in dogs(PDF,P8)」

呼吸困難や強い痛みを感じている

鼻から空気を吸い込む際に体が震えるのは、気管虚脱や肺炎などで喉や肺に痛みがあるからです。

呼吸の動作に痛みが生じると、老犬はその苦痛を隠しきれず震えとして現れます。

呼吸が苦しそうな時に確認したい愛犬の動作は以下の通りです。

  • 吸い込む時に「ヒューヒュー」「グーグー」と異音がする
  • 呼吸のたびに小鼻が大きく膨らむ
  • 首を長く伸ばして、必死に空気を吸い込もうとする姿勢をとる

肺に水が溜まる肺水腫の状態になると、溺れているような苦しさを感じるとされています。

ママさんパパさんが「息がしづらそう」と感じるなら、それは深刻な呼吸不全の兆れかもしれません。

苦しそうな表情を見逃さないことが、愛犬の命を守る第一歩になります。

肺の疾患による酸素不足

肺の機能が落ちて酸素濃度が急低下すると、脳や筋肉が正常に動かなくなり、酸欠状態が筋肉の不随意な震えを引き起こします。

特に舌の色が紫色になるチアノーゼは、緊急性が極めて高い状態を示すサインです。

危険な状態を示すチェック項目 獣医師が推奨する行動
舌・歯ぐきの色が青白 or 紫 一刻も早い搬送
四肢の温度が異常に冷たい 体温維持を試みつつ搬送
立ち上がりができない、ぐったりしている 抱き上げて、すぐに緊急病院へ連絡

「明日まで様子を見よう」という判断が、取り返しのつかないダメージを与える恐れがあります。

老犬が小刻みに震えるうえ食欲がないのはなぜか?

震えに加えて「食べない」という症状が重なると、体力が低下していることを示します。

この場合、震えよりも深刻な体調の悪化を招きやすく、特に注意が必要です。

内臓の機能低下や病気による強い痛み

食べられないほどの不調が内臓にある場合、老犬はその激痛に耐えるために全身を硬くして震えます。

膵炎や進行した腫瘍などが隠れているケースでは、震えが痛みのサインとして現れます。

痛みが原因で起きている震えの場合、愛犬は以下のような特徴的なしぐさを見せることが多いです。

  • 体を丸めてお腹をかばうような姿勢
  • 触ろうとすると「ウーッ」と唸ったり、ビクッと体を震わせたりする
  • 震えながら、特定の箇所をしきりに舐めたり見つめたりする

老犬の不調は急に進むことが多いため、痛みを我慢させている時間は苦しみを長引かせるだけです。

獣医師の診断を受け、適切な鎮痛ケアを開始することで、愛犬は再び穏やかに眠れるようになるでしょう。

脱水や低血糖により全身状態が悪化

食べられないことで血糖値が下がると、脳にエネルギーが行かなくなり筋肉が痙攣に近い震えを起こします。

また、腎臓や肝臓の機能が衰えた老犬は脱水症状を起こしやすく、体内のミネラルバランスの乱れからプルプルと震えだすのです。

脱水のセルフチェック方法を表にまとめました。

チェック箇所 確認方法 危険なサイン
皮膚 首元や背中の皮を軽くつまんで離す つまんだ皮がすぐに戻らず、時間がかかる
口腔内 歯ぐきや唇の内側を指で触る 触るとネバネバしている(粘膜の乾燥)
愛犬の目を正面から見る 目が落ちくぼんでいるように見える

低血糖や脱水は意識障害を引き起こし、最悪の場合は命に関わります。

ママさんパパさんの迅速な判断が、愛犬を守る鍵となります。

老犬が小刻みに震えるうえ食欲がない場合の緊急度

震えに加えて食欲もない状態は、「今すぐ受診すべき」サインであり、多くの獣医師が早急な受診を推奨しています。

なぜなら、老犬は予備能力が低く1日の絶食や脱水が命取りになりやすいからです。

緊急度を判断する際は、以下の状況を総合的に確認してください。

  • 水も飲もうとしない
    …脱水が急速に進むため非常に危険
  • 嘔吐や下痢を伴う
    …体力の消耗に拍車がかかっている
  • 震えが長時間止まらない
    …痛みや代謝異常が持続している

以前、私の愛犬が腎不全の初期で「朝からご飯を食べず夕方には動けなくなった」ことがありました。

病院での血液検査の結果、腎臓の数値が急激に悪化しており、点滴治療がなければ危なかったと診断されました。

「1食抜いただけ」と軽く考えず、震えが出ている場合は体力が限界に近づいている可能性を考えましょう。

老犬の震えと痙攣を判別する方法

老犬がガタガタと震えているとき、それが「いつもの震え」か「危険な発作(痙攣)」かを見分けるのは非常に難しいですよね。

しかし、両者は緊急性が全く異なるため、まずは冷静な状態の把握が欠かせません。

「これってただの震え?それとも発作?」とパニックになる前に、落ち着いて愛犬の意識を確認しましょう。

老犬の震えと痙攣を見分けるポイント

老犬の震えと痙攣を分ける最大の境界線は、ママさんパパさんの声やタッチに反応するかどうか、つまり「意識」があるかどうかです。

特徴 震え 痙攣(発作)
意識 あり(目が合い反応する) なし(目が合わず反応がない)※部分発作の場合は意識あり。
動き 細かくプルプル揺れる 激しくバタつく、またはピンと硬直。細かくブルブルと震える
排泄 通常通り 失禁することがある
緊急度 要相談・受診 5分以上続く場合や1~2分で落ち着いたと思ったらまたすぐ始まる場合は至急受診。
1~2分で治まるときは要相談・受診。

痙攣は脳の異常な電気信号によるため、呼びかけに反応せず、目がどこか遠くを見ているような状態になります。

ただし、部分発作の場合は意識があります。

そのため、痙攣発作やてんかんを疑う場合は、意識の有無にかかわらず獣医師に相談にした方がいいでしょう。

よだれや失禁を伴う場合は痙攣の可能性大

震えと違い、痙攣発作の最中や直後は自分の意思でコントロールできない反応が出るケースもあります。

大量のよだれを流したり、お漏らし(失禁)をしたりするのは、脳神経に異常が起きている確かな証拠です。

痙攣発作に伴う代表的な症状は以下の通りです。

  • 横倒しになり、手足をバタバタと泳ぐように激しく動かす
  • 口を激しくカチカチ鳴らしたり、泡状のよだれを出したりする
  • 発作後にボーッとしたり、意味もなくウロウロ歩き回ったりする(意識障害)

「ガタガタと激しく揺れた後に急に失禁してしまった……」という光景はショックですよね。

しかし、これらの付随する症状を正確に伝えることが、的確な投薬治療へとつながる近道になります。

ぐったりする・目の焦点が合わない時は至急受診

痙攣が数分以上続いたり、一度収まったのに何度も繰り返したりする場合は、夜間でも救急病院を探してください。

連続する発作(重積状態)は体温を急上昇させ、多臓器不全を引き起こす危険があるからです。

すぐに救急受診が必要な「危険な痙攣のサイン」は以下の通りです。

  • 5分以上痙攣が止まらない
  • 一度収まったが、30分以内にまた発作が起きた
  • 眼球が左右や上下に絶えず揺れている(眼振)
  • 発作が終わっても意識が戻らず、ぐったりしている

獣医師も「迷うくらいなら、まずは連絡を」とアドバイスします。

「あの時すぐに行けばよかった」と後悔しないために、ママさんパパさんの直感を信じて行動を開始してください。

老犬の震えのタイプ別|原因と自宅でのケア

すべての震えが病気とは限りません。

獣医学では、震えを「生理的」「精神的」「病的」の3つに大別し、適切なケアを推奨しています。

加齢による筋力低下や寒さなどの生理的な震え

老犬になると体温調節機能が衰えるとともに、筋力低下から後ろ足がプルプル震える「老齢性後肢振戦(高齢犬に多い、後ろ足が小刻みに震える状態)」が増えます。

これは老化に伴う生理的な現象ですが、快適な環境を整えることで負担を減らせます。

老犬の生理的な震えに対する自宅ケアの工夫をまとめました。

ケアの目的 具体的な方法 愛犬の未来
保温 室温24〜28度キープ。ペットヒーターで寝床を温める。 心臓への負担を減らし、ぐっすり眠れる
滑り止め フローリングに滑り止めマットやラグを敷く。 踏ん張る際の筋肉の震えを減らせる
筋力補助 散歩時や室内に服を着せる。 体幹をサポートし、体温維持ができる

「冬場に寝床から起きたときだけ震えていたけど、服を着せたらピタッと止まった」という工夫は今すぐ実行可能です。

快適な温度環境は、無駄なエネルギー消費を抑えるメリットがあります。

不安や恐怖による精神的な震えと対処法

耳が遠くなったり目がかすんだりする老犬は、周囲の状況が掴めず不安から体を震わせることがあります。

大きな音や環境変化が引き金になるケースが多いです。

精神的な震えを和らげるための、接し方のポイントを以下にまとめました。

  • 急な物音や環境変化(来客、家具移動など)を極力避ける
  • 優しく声をかけながら、ゆっくりと背中をなでて安心感を与える
  • 愛犬が落ち着ける、暗くて静かな「おこもりスペース」を用意する

「私が不安そうな顔をすると、犬もそれを察知して余計に震えてしまう気がする」というケースもあるように、ママさんパパさんの冷静さが大切です。

心の平穏を守るケアは、ストレス性の体調不良を防ぐ未来につながるでしょう。

関節痛や神経疾患など病気が背景にある震え

座っている老犬

関節炎を患っている老犬は、動くたびに走る痛みから震えが生じます。

また、椎間板ヘルニアや脳の疾患などが震えとして現れることもあります。

痛みを和らげ、運動をサポートするための工夫は以下の通りです。

  • 食器の高さを調整し、首や関節に負担をかけないようにする
  • わずかな段差もスロープなどで解消し、足首への衝撃を減らす
  • 滑りやすい床にはマットを敷いて足腰の負担を減らす
  • 獣医師と相談し、サプリメントや鎮痛剤の利用を検討する

病気が原因の震えを放置すると、動くこと自体を諦めてしまい、寝たきりへのスピードを速めてしまいます。

適切な医療ケアと住環境の整備を両立させることで、愛犬の「歩ける期間」を延ばすベネフィットが得られます。

老犬が息を吸う時に震える際の緊急時の対処法

愛犬が目の前で苦しそうに震えだしたら、まずは深呼吸をして以下の行動をとってください。

ママさんパパさんの的確な対応が、診察時の大きな武器になり、愛犬の命をつなぎます。

震えの様子を動画で撮影し診察の助けに

動物病院に着いた途端、緊張で震えが止まってしまい「先生にうまく説明できない」ということがよくあります。

そのため、自宅での震え方をスマホで15〜30秒ほど動画に撮っておくのがおすすめです。

動画に収めるべき要素を意識して撮影することで、診断は格段に早まります。

  • 震えが出るタイミング(安静時か、息を吸うときか)
  • 震えている部位(全身か、後ろ足だけか)
  • 目の焦点、舌の色、よだれの有無

ママさんパパさんの撮影する短い映像は、言葉を話せない愛犬の代わりの叫びとして、診察室で重みを持ちます。

呼吸数や意識レベルを記録し獣医師へ伝達

動画を撮る余裕がない場合でも、愛犬の状況を具体的に把握し、正確に獣医師へ伝えられるようにしましょう。

特に「いつから?」「どのような状況で?」「何回?」という情報は重要です。

病院へ伝えるべき情報 具体的な内容の例
呼吸数(1分間あたり) 安静時に〇回(40回以上は要注意)
最終の食事 〇日の〇時以降食べていない
意識レベル 呼びかけに反応するか、ぐったりしているか
排泄 嘔吐や下痢、または失禁の有無

こうした具体的な記録があれば、獣医師が診断に役立てやすく、愛犬への負担を最小限に抑えることができます。

緊急性が高い場合は観察よりも搬送を優先

ただし、「呼吸が止まりそう」「舌が真っ青」「激しい痙攣が止まらない」という場合は記録よりも搬送が先です。

命に関わる兆候がある場合の緊急搬送手順は以下の通りです。

  1. すぐに病院に電話
    …「これから緊急で向かいます。〇〇の症状が出ています。」と連絡
  2. 愛犬を安定させる
    …バスタオルなどで包み、移動中は首を曲げず気道を確保
  3. 体温に配慮
    …発作で熱が上がっている場合は冷やしすぎず、寒ければ保温する

迷っている数分が、愛犬の未来を閉ざしてしまうかもしれません。

「あの時すぐに行けばよかった」と後悔しないために、ママさんパパさんの直感を信じて一刻も早く行動を開始してください。

まとめ|老犬の息を吸う時の震えは早期受診が大切!

愛犬との穏やかな未来を守るために、震えを「老化だから仕方ない」と決めつけないことが何よりも大切です。

老犬の「息を吸う時に震える」「小刻みに震えるうえ食欲がない」「震えと痙攣がある」といった症状は、私たちに「病気のSOS」を伝えているケースが珍しくありません。

早期に獣医師に相談し適切な治療を開始することで、以下のような大きなメリットが得られます。

  • 重症化を防ぎ元気な生活を送れる
  • 痛みを早く取り除き、苦しむ時間を短くできる
  • 適切な食事指導で体力を維持できる
  • 夜中の見守りによる飼い主の睡眠不足が解消される
  • 病気の特定によって、漠然とした不安から解放される
  • 治療費が膨れ上がる前に管理を開始できる

通院のストレスや検査費用といったデメリットはありますが、それ以上に「愛犬の苦痛を取り除く」ことは何物にも代えがたい喜びです。

「元気になったら、また一緒にあそこの公園までお散歩に行こうね」と話しかける日常を守り抜きましょう。

愛犬の命と幸せのためにも今すぐ様子をチェックし、不安があれば迷わずかかりつけ医へ相談してください。

大場聖也

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保有資格「JKC愛犬飼育管理士」。幼い頃から犬が大好きで、幼稚園の頃には犬の図鑑をボロボロになるまで読み込んでいた。 10歳のとき、不登校だった私を支えてく...

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