老犬が水をよく飲むのは病気?原因と受診の目安を獣医師が解説

COLUMN

シニア期に入った愛犬が水をよく飲むようになると、病気が隠れていないか心配ですよね。

そんな中で、
「どれくらい水を飲んだら病気なのだろう?」
「どのような病気が考えられるのだろう?」
「動物病院を受診した方がいいのだろうか?」
といった疑問を感じてはいませんか?

実は、老犬が水をよく飲むときにはさまざまな病気の可能性が考えられ、なかには重大な病気が潜んでいることもあります。

今回は、老犬が水をよく飲む原因や考えられる病気、受診の目安などを獣医師が解説します。

最後までお読みいただき、愛犬の飲水量について理解を深めましょう。

老犬が水をよく飲むと判断する基準

一般的に犬の1日の飲水量は、体重1kgあたり約50~60ml程度が目安とされています。

例えば体重10kgの犬であれば、1日500~600ml程度が目安です。

ただし、これはあくまで一般的な目安であり、生活環境や食事の内容によって大きく変わります。

例えばウエットフードが中心の食生活である場合、フードの水分含有量が高いため、飲水量は少なくなることが一般的です。

しかし、急に飲水量が増え、尿の量が増えた場合は病気の可能性が高くなります。

その場合は、「いつから増えたか」「どれくらい増えたか」といった点を記録しておくと、受診したときに獣医師に正確な情報を伝えられるでしょう。

老犬が水をよく飲むときの主な病気

では、実際に老犬が水をよく飲むときには、どのような病気が考えられるのでしょうか?

犬では一般的に、1日の飲水量が体重1kg当たり約100mLを超えると病気の可能性があります。

よく見られる代表的な病気をそれぞれ詳しく見ていきましょう。

①糖尿病

犬の糖尿病は、体内でインスリンが不足することにより血糖値が高くなり、尿中に糖が排泄される病気です。

その結果、尿の量が増えて水をよく飲むようになることが多いです。

初期では無症状なことが多いですが、進行するにつれて、

  • 吐いている
  • 下痢をしている
  • ぐったりしている

といった症状が見られることもあります。

私自身も、糖尿病が進行して「ケトアシドーシス」という状態にまで至り、入院が必要となった症例を経験しています。

よく水を飲むという症状以外の変化が見られる場合は、早めに動物病院を受診するよう心がけましょう。

②副腎皮質機能亢進症

クッシング症候群」とも呼ばれるこの病気は、腎臓の近くにある「副腎」という臓器から過剰にステロイドホルモンが分泌される病気です。

老犬でよく発症する病気で、私自身も日頃の診察においてよく遭遇する病気です。

体内に過剰にステロイドホルモンが存在すると利尿作用が起こり、老犬がよく水を飲むようになります。

そのほかの症状として、

  • お腹がぽっこりする
  • 皮膚炎を繰り返す
  • 毛が薄くなる
  • 異常なほど食欲が旺盛になる

といったものが挙げられます。

③慢性腎臓病(慢性腎不全)

慢性腎臓病も老犬でよく見られる病気です。

腎臓とは、血液をろ過して尿を作るとともに、血液中の老廃物を体外へ排出する臓器です。

現在では、腎臓への負担や腎臓の機能の低下が3か月以上持続している状態を「慢性腎臓病」と呼びます。

腎臓で尿を濃縮できなくなり、薄い尿を多量にするため、その分よく水を飲むようになります。

犬の慢性腎臓病では、国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)がステージ分類とステージごとの治療についてガイドラインを提唱しており、それに沿って治療を進めることが一般的です。

④子宮蓄膿症

子宮蓄膿症は、子宮に膿が溜まる病気です。

避妊手術を行っていないメスの老犬で多い病気です。

子宮に細菌が感染することで、よく水を飲むほかに、

  • 嘔吐や下痢をする
  • 発熱がある
  • 元気がなくなる
  • お腹が膨れる

といった症状が見られるようになります。

⑤高カルシウム血症

血液中のカルシウムの濃度が高くなる状態を「高カルシウム血症」と呼びます。

カルシウムの濃度は、上皮小体と呼ばれる臓器から分泌される「上皮小体ホルモン」が、骨や腸管からのカルシウムの吸収をコントロールすることで正常に維持されています。

高カルシウム血症が見られる場合は、そのコントロールが何かしらの病気で乱れていることが多いです。

具体的な原因としては、

  • 悪性腫瘍
  • 上皮小体機能亢進症
  • アジソン病
  • 慢性腎臓病

などが挙げられます。

悪性腫瘍では、「PTH-rP」と呼ばれる物質が過剰に産生され、上皮小体ホルモンと同じような働きを示し、高カルシウム血症となるといわれています。

老犬が水をよく飲む以外に起きる症状

ここまでは、老犬がよく水を飲む原因について解説しました。

では、水をよく飲むこと以外に気を付けるべき変化には、どのようなものがあるのでしょうか?

以下のような症状も見られる場合は病気の可能性が高くなるため、注意が必要です。

  • 下痢や嘔吐が続く
  • 息が荒い
  • 食欲がない
  • お腹が膨れている
  • 体重が減少している
  • 陰部からおりものが出ている

これらの症状が、水をよく飲むことと同時に見られる場合は、早めの受診を心がけましょう。

老犬がよく水を飲む際に行う検査内容

では、実際に動物病院を受診した場合は、どのような検査が行われるのでしょうか?

まずは問診と身体検査で、よく水を飲む原因となる病気のサインがないか確認が行われます。

次に行われることが多い検査は、血液検査や超音波検査です。

これらの検査で、

  • 腎機能
  • カルシウム値
  • 血糖値
  • 副腎の大きさ
  • 子宮の異常

などを確認することができます。

これらの検査から病気が予測される場合は、追加でレントゲン検査やホルモン検査なども行われることがあります。

老犬がよく水を飲むときの対処法

では、実際に老犬がよく水を飲むようになった場合、どのような対処をしたらよいのでしょうか?

それぞれを詳しく見ていきましょう。

①飲水量を記録する

まずは、実際に愛犬がどれくらい水を飲んでいるか、正確に記録しましょう。

例えば、あらかじめ器に入れる水の量を測り、一日でどれくらい減ったかを確認することで、おおよその飲水量が把握できます。

いつ、どれだけ水を飲んだかを記録することで、診察の参考にもなり、受診が必要かどうかの判断材料にもなります。

②水分補給の環境を整える

常に清潔で新鮮な水を用意してあげましょう。

また、老犬では足元が滑らないように滑り止めを敷いたり、食器を床ではなく台に置いて高さを調整したりすると、快適に水を飲むことができます。

③食事内容を見直す

病気が原因でよく水を飲むようになった場合でも、老犬は十分に水分補給ができないことがあります。

ウエットフードは水分が多く摂れるため、いつものドライフードにトッピングすることで、食事からの水分摂取量を増やす工夫をするのも良いでしょう。

④無理な水分制限はしない

よく水を飲むようになったからといって、無理に水分を制限してしまうと、脱水症状に陥ることがあります。

獣医師からの飲水制限がない場合は、十分な水分補給を心がけましょう。

まとめ

老犬がよく水を飲むようになったとき、その原因にはさまざまなものが挙げられます。

なかには、放置すると命に関わる病気が隠れていることもあります。

「老犬だから仕方がない」と安易に考えず、小さな様子の変化であっても、様子見をせずに動物病院を受診するよう心がけましょう。

また、老犬がよく水を飲むようになった場合は、水飲み場の環境を整えることも大切です。

快適に水が飲めるよう、さまざまなアイテムを使って工夫してあげましょう。

浅川 雅清

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2016年日本大学生物資源科学部獣医学科卒。 同年よりペットショップ併設の動物病院にて勤務。 犬・猫・うさぎ・ハムスターの診察を中心に、ペットショップの生体...

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