老犬の膀胱炎が治らない…その原因と対策を獣医師が解説

COLUMN

老犬になると、今まではすぐ治っていた症状も治りにくくなり、心配になりますよね。

特に、膀胱炎でよく見られる血尿や頻尿が続くと、
「なぜ何度も膀胱炎を繰り返すのだろう?」
「薬を飲んでも良くならないのはどうして?」
「何か治らない原因があるのだろうか?」
といった疑問をお持ちではないでしょうか?

私自身の日頃の診察でも、膀胱炎を繰り返す老犬をよく診察します。

実は老犬では、さまざまな原因で膀胱炎が治りにくくなり、治療が難しくなることも少なくありません。

本記事では、老犬の膀胱炎が治らない原因と考えられる病気、その対策について、獣医師が分かりやすく解説します。

最後までお読みいただき、老犬の治らない膀胱炎を解決する一つの参考にしていただけると幸いです。

老犬で膀胱炎が治らない3つの理由

では、なぜ老犬では膀胱炎が治りにくくなるのでしょうか?

その原因には、いくつかの理由があります。

それぞれを詳しく見ていきましょう。

①抗生物質が効かない

細菌感染が原因の膀胱炎では、治療に抗生物質が使われます。

一般的には、適切に治療が行われれば、数日〜1週間程度で症状の改善が見られることが多いです。

しかし、細菌が抗生物質に耐性を持っている「薬剤耐性菌」である場合は、抗生物質が効かず膀胱炎が治らないことがあります。

特に、症状が和らいだときに自己判断で抗生物質を中断すると、再発や耐性が生じる原因となることも少なくありません。

②他の病気が隠れている

膀胱炎が治らない場合、別の病気が関係していることが少なくありません。

病気が併発することで、炎症や感染が治りにくくなり、膀胱炎が治らない原因となることがあります。

③環境要因が治療を妨げる

実は、愛犬の生活スタイルも、膀胱炎の治療に大きく影響します。

よくある例としては、

  • トイレの回数が少ない
  • おむつを長時間使用している
  • ストレスが多い

といったものが挙げられます。

私の経験上、特に老犬ではおむつを使用しているケースが多く、陰部が不衛生になりやすいことから、膀胱炎が治りにくいことも多いです。

膀胱炎の際には、これらの生活環境にも工夫をしてあげましょう。

老犬で起こりやすい「膀胱炎」

では、そもそも膀胱炎というのはどのような病気なのでしょうか?

膀胱炎とは、膀胱の粘膜に炎症が起こる状態を指します。

多くは膀胱内に細菌が侵入して感染・炎症を起こすことで、膀胱炎が起こります。

細菌感染のほかにも、

  • 結石による粘膜の障害
  • 飲み薬による副作用
  • ホルモンの病気

などが原因で、膀胱炎が起こることも少なくありません。

特にメスは尿道が短く細菌が侵入しやすいため、膀胱炎を起こしやすいです。

また、治療として抗がん剤(シクロホスファミドなど)やステロイド剤(プレドニゾロンなど)を使用している場合は、その副作用で膀胱炎が起こることもあります。

ホルモンの病気とは?

ホルモンの病気は、老犬では糖尿病や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)などが多く見られます。ホルモンの影響により、膀胱での細菌感染が起こりやすくなり、そこから膀胱炎を起こすケースが多いです。

老犬で膀胱炎が起きやすい理由

では、なぜ老犬では膀胱炎が起こりやすくなるのでしょうか?

老犬で膀胱炎が起きやすい背景には、免疫力の低下や基礎疾患が原因として知られています。

よくある基礎疾患としては、

  • 膀胱結石
  • 膀胱腫瘍
  • 前立腺炎
  • 副腎皮質機能亢進症
  • 糖尿病

といったものが挙げられます。

これらの病気が併発していると、炎症や感染が起こりやすくなり、膀胱炎につながることが少なくありません。

老犬で見られる膀胱炎の症状

では、老犬で膀胱炎が起きた場合、どのような症状が見られるのでしょうか?

具体的には、

  • 頻尿(何度もトイレに行く)
  • 尿が少量しか出ない
  • 排尿時に痛がる、鳴く
  • 尿のにおいが強い
  • 尿に血が混じる(血尿)
  • 尿が出にくそう
  • トイレを失敗する

といった症状が挙げられます。

これらの症状が見られた場合は、早めに動物病院を受診するよう心がけましょう。

老犬の膀胱炎で行われる検査

では、老犬の膀胱炎でこれらの症状が見られ、動物病院を受診した場合、どのような検査が行われるのでしょうか?

具体的には、以下のような検査が愛犬の状態に応じて選択され、膀胱炎の診断が行われます。

それぞれを詳しく見ていきましょう。

①尿検査

まず、基本的な検査として、一番に尿検査を行うことが多いです。

尿検査では、赤血球や細菌の有無、pH、結晶の種類などの確認が行われます。

また、比重を測定することで、腎臓やホルモンの病気が隠れていないかもチェックするポイントです。

②細菌培養検査

尿中に細菌が見られる場合は、細菌培養検査が行われることがあります。

この検査では、細菌を培養して解析することにより、細菌の種類や効く抗生物質の種類を特定することができます。

特に、膀胱炎が治りにくく、薬剤耐性菌が疑われる場合は必須の検査の一つです。

③レントゲン検査

レントゲン検査では、主に結石があるかどうかが分かります。

膀胱結石のほかにも、

  • 腎臓
  • 尿管
  • 尿道

といった部位にも結石が無いか確認が行われます。

膀胱炎が治りにくく、結石の存在が疑われる場合によく行われる検査の一つです。

④超音波(エコー)検査

エコー検査では、膀胱や腎臓などの内部構造を画像で確認することができます。

膀胱内の腫瘍の多くは、エコー検査を行わないと判断できないことも少なくありません。

老犬の膀胱炎の再発を防ぐ5つの日常ケア

ここまでは、老犬の膀胱炎が治らない原因と受診の流れについて解説しました。

では、膀胱炎の治療が終わり、再発しないようケアをしていくうえで、どのような対策を行えば良いのでしょうか?

それぞれを詳しく見ていきましょう。

①水分摂取量を増やす

一般的に、犬の1日の水分摂取量は体重1kgあたり約50mLが目安とされています。

例えば体重5kgの老犬であれば、約250mLが適正な飲水量ということです。

愛犬が1日でどれくらいの水分を摂取しているか、一度確認してみましょう。

あまり水を飲んでいない場合は、水が飲みにくい環境になっている可能性があります。

もし飲みにくそうであれば、

  • お皿を複数箇所に置く
  • 寝床の近くに置く
  • 高さのある食器に変える
  • 滑らない場所に置く

といった工夫をしてみましょう。

また、水が古くなっているようであれば、こまめに新鮮な水に交換し、いつでも飲めるように用意してあげましょう。

飲み水の交換は、最低限1日1回は行うことが一般的です。

さらに、液体の水で飲まない場合は、食事から水分を補う方法もあります。

その方法としては、

  • ウエットフードを使う
  • ドライフードをふやかす
  • 水分補給のおやつを使う

といった方法がありますので、愛犬の好みに応じた方法を選んであげましょう。

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②快適なトイレ環境を保つ

老犬になるとトイレに向かうことが難しくなり、排尿を我慢してしまうことがあります。

そのため、

  • トイレまでの動線を短くする
  • トイレの段差を減らす
  • 滑りにくい床材にする
  • トイレの場所を分かりやすくする
  • トイレを複数設置する

といった工夫をすることで、愛犬が快適に排泄できるようにしてあげましょう。

③オムツをこまめに交換する

前述の通り、おむつを長時間使用している場合は、陰部が不衛生になり膀胱炎につながりやすいです。

排泄を終えたおむつは早めに処分し、可能な限りおむつを使用しない時間を長くとるよう心がけましょう。

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④定期的に尿検査を受ける

私自身の診察でも、膀胱炎の症状がなくても尿検査を行うと、実は膀胱炎になりかけていたというケースは少なくありません。

定期的に検査を行うことで、悪化する前に適切に治療を行うことができます。

⑤サプリメントを使用する

前述のようなさまざまな対策を行っても膀胱炎を繰り返してしまう場合は、サプリメントでのケアを補助的に取り入れる方法もあります。

具体的な成分としては、

  • N-アセチルグルコサミン
  • クランベリー
  • ウラジロガシエキス末

といったものがよく使用されます。

ただし、サプリメントはあくまで補助的なもので治療の代替にはならず、すべての老犬に効果が見られるわけではありません。

自己判断で使用するのではなく、事前に獣医師へ相談することが大切です。

まとめ

老犬の膀胱炎が治らない背景には、単純な細菌感染だけでなく、加齢や基礎疾患、生活環境などのさまざまな要因が関与しています。

特に再発を繰り返す場合は、

  • 適切な検査を行う
  • 原因に応じた治療を行う
  • 日常生活を見直す

といった工夫を行うことが大切です。

定期的な検査と継続的な日常ケアによって、愛犬の快適な生活を守ることができます。

膀胱炎に関して気になる症状がある場合は、早めに動物病院へ相談するよう心がけましょう

浅川 雅清

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2016年日本大学生物資源科学部獣医学科卒。 同年よりペットショップ併設の動物病院にて勤務。 犬・猫・うさぎ・ハムスターの診察を中心に、ペットショップの生体...

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