老犬が歩けない原因や病気、自宅でできるサポートを獣医師が解説
愛犬が年齢を重ねると、歩行が大変になることが多いです。
「立ち上げるのがつらそう」「散歩に行ってもすぐ歩かなくなってしまう」
そんな様子に気づいてはいませんか?
そんな愛犬を見ていると、
「何か病気が隠れているのかな?」
「どのように介助したらいいのだろう?」
と悩んでしまいますよね。
実は、老犬の歩行の介助に困っている方は非常に多く、その背景に病気が隠れていることもあります。
今回は、老犬が歩けなくなる原因と考えられる病気、症状、自宅でできる歩行のサポート方法を獣医師が解説します。
最後までお読みいただき、愛犬の快適な歩行をサポートするための一助になれば幸いです。
老犬が歩けない主な原因

老犬が歩けなくなる背景には、加齢による身体機能の低下や、関節や脳・神経の病気が関係しています。
なかでも多く経験するのは、筋力の低下です。
人と同様に、犬も年齢を重ねると筋肉量が落ち、立ち上がる力や後ろ足を支える力が弱くなります。
老犬の筋力低下のサインとしては、歩く距離が短くなる、散歩の途中で止まってしまうなどが一般的です。
一方で、関節のトラブルや脳・神経の病気も歩行に大きく影響します。
関節のトラブルでは、加齢による関節軟骨の摩耗や関節炎によって歩行時の痛みが強くなり、歩くこと自体が負担になってしまうことが多いです。
また、脳・神経の病気によって神経の伝達がうまくいかないと、意図したように足を動かせず、ふらついたり転びやすくなったりする様子が見られます。
老犬が歩けなくなったときには、このように筋肉や関節、脳神経などの複数の要因が重なっていることが多く経験され、どれが主な原因かを見極めることが大切です。
老犬が歩けないときに疑われる病気

では、具体的にどのような病気が起こると老犬は歩けなくなるのでしょうか?
ここでは、老犬でとくに多く見られる病気を紹介します。
①膝蓋骨脱臼

膝蓋骨脱臼は、小型犬でよく見られる膝関節のトラブルです。
膝蓋骨(膝のお皿の骨)が正しい位置からずれてしまうことで痛みが生じる病気です。
老犬になると筋力の低下により脱臼しやすくなったり、関節炎へと進行したりすることで歩けなくなることがあります。
②前十字靭帯断裂

前十字靱帯断裂は膝の中にある靭帯が切れてしまう病気です。
老犬では加齢により靭帯が脆くなり、そこに外傷のような力が加わることで靱帯が断裂します。
前十字靱帯が断裂すると、急に歩けなくなる、後ろ足を地面につけたがらない、立ち上がるときに痛がるなどの症状が出ます。
前十字靱帯断裂の治療には手術が必要になることが一般的です。
③変形性関節症

変形性関節症は、加齢に伴って進行する関節の病気で、老犬が歩けなくなる原因としてよく起こるもののひとつです。
関節の軟骨がすり減り、炎症による痛みが強くなることで、動き出しが遅くなる、散歩の途中で歩かなくなるといった変化が見られます。
特に脊椎や後ろ足の関節での変形性関節症が、日頃の診察ではよく見られます。
④病的骨折

何かしらの病的な要因で骨が弱くなると、わずかな力でも骨折してしまうことがあります。
そのような骨折を「病的骨折」と呼びます。
病的骨折の原因となる病気は、
- 骨の腫瘍
- ホルモン疾患
- 歯周病
といったものが一般的です。
老犬が突然歩けなくなる、触れると強く痛がる、といった症状がある場合は、病的骨折の可能性もあります。
⑤椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアは、脊椎と脊椎の間にある椎間板という物質が飛び出し、脊髄を圧迫することで歩けなくなる病気です。
老犬では加齢により椎間板が変性することで発症すると言われています。
椎間板ヘルニアは腰に起きることが多いことから、後ろ足に症状が出やすいことが特徴です。
⑥脳神経疾患

脳や神経の病気として、老犬でよく見られるのは脳腫瘍や脳炎です。
関節のトラブルとは異なり、
- 頭が傾く
- ふらつく
- 痙攣や発作を起こす
- 瞳孔の大きさが異なる
といった症状が見られることが特徴です。
老犬が歩けなくなり、上記のような症状も見られる場合は、特に脳神経のトラブルを考える必要があります。
老犬が歩けないときに見られる症状

ここまでは、老犬が歩けなくなる病気を解説しました。
では、これらの病気では、老犬が歩けないこと以外にどのような症状が見られるのでしょうか?
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①関節のトラブル

関節のトラブルでは、
- びっこをひく
- 歩幅が狭くなる
- 階段を嫌がるな
- 立ち上がりに時間がかかる
- 座る姿勢が不自然になる
- 触ると痛がる
- 抱き上げようとすると嫌がる
といった症状も見られることがあります。
これらの症状は、関節や骨の痛みを反映している可能性があります。
②脳・神経の病気

脳や神経の病気では、
- 震える
- 発作や痙攣を起こす
- 突然倒れる
- 急に立てなくなる
- 顔を傾ける
- 瞳孔の大きさが異なる
- ぐるぐる回る
といった症状も見られることがあります。
このような場合は脳・神経の病気の可能性が高いので、早急に動物病院を受診しましょう。
動物病院で行う検査

ここまでは、老犬が歩けなくなる原因や病気について解説しました。
では、実際に動物病院を受診した場合、どのような検査が行われるのでしょうか?
老犬が歩けなくなったときには、原因を正確に把握するために以下のような検査が必要です。
①身体検査

身体検査は、犬のからだを触診してどの部位に問題があるかを見つける検査です。
老犬が歩けなくなった時には、特に関節の動きや痛みの有無、筋肉の状態、姿勢の変化、神経の異常などがないかがチェックするポイントです。
②レントゲン検査

身体検査で問題となる部位を推測した後は、レントゲン検査で骨や関節の異常が無いかを確認することが一般的です。
③CT/MRI検査

身体検査やレントゲン検査では検出できない異常もあり、特に脳や神経の異常の多くはこれらの検査で異常が検出できないことがあります。
そのような時には、CTやMRI検査を行うことで、より正確な病気の診断ができます。
老犬が歩けないときに自宅でできる介助の工夫

では、実際に老犬が歩けなくなった時には、どのようなサポートをしてあげたら良いのでしょうか?
正しい介助を行うことで、痛みや不安を軽減し、生活の質を保つことができます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①歩行補助具

歩行を補助するハーネスを使うことで、四肢を支えながら安全に歩かせることができます。
簡易的な方法としては、タオルをお腹の下に通して補助する方法も効果的です。
支え方を工夫すれば、散歩の負担を減らしつつ筋力の維持にもつながります。
②排泄の補助

老犬が歩けなくなると、トイレに行くのが間に合わないことが増えます。
そのため、寝床の近くにトイレを設置する、おむつを使用するなどの対策をしてあげましょう。
排泄姿勢が安定しない場合は、軽く支えてあげることで負担を減らすことができます。
③生活環境の整備

滑りやすい床は転倒の原因になるため、フローリングにはカーペットやマットを敷いてあげましょう。
また、段差にはスロープを設置し、ベッドやトイレトレーは低めで出入りしやすいものを選んであげることがポイントです。
まとめ

老犬が歩けないときには、筋力の低下、関節の痛み、脳や神経の病気など、さまざまな要因が関係します。
病気が背景にある場合も多いため、突然歩けなくなったり、痛みが強かったり、発作や痙攣が見られるときには早めの受診が必要です。
原因を把握し、適切な検査とケアを行うことで、愛犬の生活の質を維持してあげることができます。
家庭での介助を工夫しながら、安心して過ごせる環境を整えてあげましょう。


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