シニア犬の脳腫瘍とは?種類や余命、症状、治療を獣医師が解説
シニア期に入った愛犬が突然、痙攣やふるえを起こしたら、とても心配になりますよね。
そんなとき、
「何か病気が起きているのだろうか?」
「犬の脳腫瘍ってなんだろう?」
「この後はどうなってしまうのだろう?」
といった疑問や不安を感じてはいませんか?
実は、シニア期に入ってから初めて起こる痙攣では、脳腫瘍や脳炎が原因となっていることが少なくないと言われています。
今回は、犬の脳腫瘍の種類や症状、診断方法、治療法、副作用などについて、獣医師が分かりやすく解説します。
最後までお読みいただき、シニア犬の脳腫瘍について理解を深めましょう。
シニア犬の脳腫瘍

犬では、脳に起こるさまざまな種類の腫瘍を総じて「脳腫瘍」と呼びます。
多くの脳腫瘍は、高齢になってから起こることが一般的です。
犬における主な脳腫瘍の種類としては、髄膜腫やグリオーマなどが挙げられます。
これらの脳腫瘍の具体的な原因は、まだ明らかになっていません。
考えられるものとしては、
- 発がん物質
- 放射線
- 遺伝的な要素
- 腫瘍に対する免疫力の低下
といった原因が挙げられるものの、脳腫瘍で特定されている原因はほとんどないといわれています。
シニア犬の脳腫瘍の種類

現在の犬の脳腫瘍は、明確に「悪性」と「良性」に分けるような分類は一般的ではありません。
例えば髄膜腫では、良性寄りの「グレード1」から、悪性寄りの「グレード3」のように、病理学的な特徴から分類されることが一般的です。
では、犬の脳腫瘍でよく見られる種類には、どのようなものがあるのでしょうか?
それぞれを詳しく見ていきましょう。
①髄膜腫

髄膜腫とは、脳の「クモ膜」という部分の細胞から発生する腫瘍で、犬の脳腫瘍の中で約50%を占めるとされる、発生頻度の高い腫瘍です。
ゆっくりと進行し、しこりが大きくなることで脳を圧迫し、さまざまな症状を引き起こします。
②グリオーマ(神経膠腫)

グリオーマは、脳の神経細胞を支える役割をもつ細胞から発生する腫瘍で、犬の脳腫瘍の中で約20~30%を占めるとされる、髄膜腫に続いて発生頻度の高い腫瘍です。
グリオーマの中には、
- 星状膠細胞腫
- 希突起膠細胞腫
- 膠芽腫
などにさらに細かく分類され、いずれも比較的進行が早く、周囲への浸潤性も強いという特徴があります。
③脈絡叢腫瘍

脈絡叢腫瘍とは、脈絡叢という、脳脊髄液を産生する細胞から発生する腫瘍です。
割合としては少ないですが、犬で3番目に多い脳腫瘍です。
よく発生する脳の部位としては、
- 第四脳室
- 第三脳室
- 側脳室
といった部位で、犬種としてはゴールデンレトリバーでの発生が多いとされています。
④組織球性肉腫

組織球性肉腫とは、白血球の一種である「組織球」というものが腫瘍化した病気です。
主に脳の「軟膜」という部分に発生することが多いといわれています。
日本ではコーギーやゴールデンレトリバーに多く発生し、比較的進行が速い腫瘍です。
シニア犬の脳腫瘍の症状

ここまでは、シニア犬の脳腫瘍の種類について解説しました。
では、脳腫瘍が起きた場合は、どのような症状が見られるのでしょうか?
犬の脳腫瘍の症状は、特徴的なものは少なく、他の病気でも見られる症状と類似しています。
初期症状としては、
- 元気が無い
- 食欲がない
- 歩き方がおかしい
といったものが挙げられます。
やがて脳腫瘍が進行すると、
- 痙攣
- てんかん発作
- 失明
- 意識レベルの低下
- 麻痺
などの神経症状が見られることも少なくありません。
これらの症状は主に、腫瘍によって脳が圧迫されることで引き起こされることが多いです。
また私自身の経験では、徘徊や夜泣きなどの症状が見られ、高齢であることから「認知機能の低下かな?」と思っていた犬が、実は脳腫瘍だったというケースもありました。
シニア犬の脳腫瘍の診断

では、犬で脳腫瘍が疑われた場合、どのような検査が行われるのでしょうか?
実際、犬の脳腫瘍において確定的な診断をつけることは、なかなか難しいのが現状です。
血液検査やレントゲン検査、超音波検査などでは、脳腫瘍に特徴的な所見を見つけることはほとんどできません。
そのため一般的には、前述の症状と全身麻酔下でのMRI検査をもとに、暫定的に診断が行われます。
その後、本来は脳腫瘍以外の腫瘍であれば、手術で摘出した後に病理組織検査で確定診断をつけてから治療が行われます。
しかし、脳という部位の特性上、手術を実施するケースは多くありません。
また、費用が高額であることや犬が高齢であることから、MRI検査を行うことが難しい場合もあります。
そのため、手術による根本的な治療ではなく、薬による対症療法を中心として治療が行われることも少なくありません。
シニア犬の脳腫瘍の余命と治療法

では、もし脳腫瘍と診断された場合は、その後はどのような流れになるのでしょうか?
脳腫瘍の余命は、脳腫瘍の種類や進行の程度により大きく異なります。
一方、前述の通り、治療法に関しては手術が積極的に行われるケースは多くありません。
抗がん剤治療でも、顕著な効果が得られるケースは少なく、主に対症療法で症状を緩和することが一般的です。
脳腫瘍の種類における余命について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
①髄膜腫

髄膜腫では、無治療またはステロイドのみで治療を行った場合、数か月程度で症状が進行し、亡くなることが少なくありません。
一方、抗がん剤とステロイドを併用して治療を行った場合は、平均約1年程度の余命と報告されています。
そのほか、外科手術のみの治療だと6か月~2年、外科手術と放射線治療を併用した場合は1.5~2.5年の余命であると報告されています。
②グリオーマ

犬においてはグリオーマの症例数が少なく、まだ余命に関する報告が多くありません。
ステロイドを中心とした治療での余命は約1か月程度と報告されており、髄膜腫と比べ比較的進行が早いとされています。
抗がん剤での治療では約6か月、外科手術での治療では約2か月~1年の余命と報告されています。
③組織球性肉腫

犬での脳の組織球性肉腫においても症例数が少なく、まだ余命に関する報告が多くありません。
抗がん剤治療や放射線治療を行っても、余命は数日~1か月程度と報告されています。
老犬の脳腫瘍の治療における副作用

では、脳腫瘍の治療としてステロイドや抗がん剤を使った場合、どのような副作用が見られるのでしょうか?
それぞれを詳しく見ていきましょう。
①抗がん剤

抗がん剤の一般的な副作用としては、
- 骨髄抑制
- 肝・腎障害
- 消化器症状
- 脱毛
といったものが知られています。
ただし、抗がん剤を使用したからといって必ずこれらの副作用が起こるとは限りません。
治療を行うメリットとデメリットをしっかり考慮したうえで、どのような治療を行うか、獣医師と相談し決めていきましょう。
②ステロイド

ステロイドにおける一般的な副作用としては、
- 多飲多尿
- 多食
- 肥満
- 消化器症状
- 肝臓の数値の上昇
- 筋肉量の低下
- パンティング
などが知られています。
これらの副作用は、特に長期的にステロイドを使用した場合に起こることが多いです。
また、抗がん剤と比較して軽度であることが多いため、ステロイドのみで脳腫瘍の治療が行われるケースも少なくありません。
まとめ

犬の脳腫瘍の診断や治療に関しては、私自身も悩むことがとても多いです。
シニア犬での発生が多いため、積極的な検査や治療に二の足を踏んでしまうことも少なくありません。
また、有効な治療が少ないことも脳腫瘍の一つの特徴だと感じています。
痙攣や歩き方の異常など、いつもと違う様子が見られた場合は、早めに動物病院を受診することが大切です。
本記事を参考に、愛犬の脳腫瘍と無理なく付き合っていくためのヒントになれば幸いです。


















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