老犬が安心して暮らせる部屋作り|安全性と快適性を高める対策とは?
「最近、愛犬が寝ている時間が増えたな」
「散歩のペースがゆっくりになったな」
このように、ふとした瞬間に愛犬の老いを感じ、少し寂しい気持ちになることはありませんか?
ただ、変わっていくのは見た目や行動のペースだけではありません。
シニア期に入ると身体機能が少しずつ低下するため、若い頃と同じ環境では思わぬ負担やケガにつながる可能性があります。
この記事では、老犬の身体的な変化をふまえ、転倒やケガを防ぐ「安全性」と、ストレスなく過ごす「快適性」の両面から部屋作りのポイントを解説します。
住み慣れた我が家を、愛犬が最期まで安心して笑顔で過ごせる場所に整えていきましょう。
老犬の部屋作りが必要な理由とは?シニア犬に見られる5つの変化

愛犬がシニア期に入ると、見た目には大きな変化がなくても、身体機能や感覚器は少しずつ確実に衰えていきます。
老犬が安全かつ快適に暮らすためには、体の変化に合わせて住環境を整えることが欠かせません。
ここでは、部屋作りを見直すきっかけとなる、シニア犬特有の5つの身体的・行動的変化について解説します。
理由①足腰の衰えによる転倒リスクが増加する

シニア犬になると、後ろ足の筋肉量が落ち、踏ん張る力が弱くなります。
特にトイプードルやチワワなどの小型犬は、膝蓋骨脱臼(パテラ)などの関節トラブルを抱えている場合も多く、フローリングの床で滑って転倒しやすくなります。
滑りやすい床は関節に負担がかかるだけでなく、立ち上がりにくさから活動量が減り、結果として筋力低下を招くケースも少なくありません。
理由②視力・聴力の低下で周囲を把握しにくくなる

犬も高齢になると、人間と同様に白内障(水晶体が白く濁る病気)や核硬化症を発症しやすく、視力が低下します。
視力が落ちると、距離感がつかめずに家具や壁にぶつかったり、段差を踏み外したりする危険性が高まります。
また、聴力も衰えやすく、ママさんパパさんの帰宅や呼びかけに気づきにくくなるだけでなく、突然背後から触れられた際に驚いて恐怖心を抱くケースもあるでしょう。
この時期に大幅な模様替えを行うと、記憶していた部屋のレイアウトと実際の配置が食い違うため、愛犬が混乱してパニックを起こす可能性があります。
家具の配置は大きく変えず、安全対策を追加するという意識が大切です。
理由③暑さ・寒さの影響を受けやすくなる

老犬は体温調節機能が低下するため、若い頃よりも外気温の影響をダイレクトに受けやすくなります。
筋肉量の減少によって熱を作り出す力が弱まるほか、自律神経の働きも鈍くなるため、寒さ・暑さに対する耐性が著しく下がると言われています。
冬場の寒い部屋はもちろん、夏場の冷房が効きすぎた部屋も老犬にとっては負担です。
さらに、自分で快適な場所へ移動しづらくなるため、直射日光が当たる場所や冷気が溜まりやすい場所に留まり、熱中症や低体温症のリスクが高まります。
理由④休む時間が増える

成犬の平均睡眠時間は12〜14時間程度ですが、老犬になると1日18時間以上を寝て過ごすことも珍しくありません。
長時間同じ姿勢で横になるため、寝床の環境が健康状態に影響します。
硬すぎる床や、逆に沈み込みすぎる柔らかいクッションは、寝返りが打ちにくく「床ずれ(褥瘡)」を引き起こす原因となります。
また、関節炎を患っている場合、冷えや硬さは痛みを増幅させる可能性もあるでしょう。
身体への負担を最小限に抑える寝床を用意することが、安眠と健康維持のために不可欠です。
理由⑤トイレの失敗(粗相)が増える

老犬は、膀胱の括約筋が緩んでおしっこを我慢できなくなったり、腎機能の低下により多飲多尿になったりして、トイレの失敗が増えやすくなります。
また、認知機能の低下により、今まで完璧にできていたトイレの場所を忘れてしまったり、トイレに行こうとしても間に合わずに漏らしてしまったりする場合もあります。
これは決してしつけの問題ではなく、身体的な老化現象の一つです。
叱っても改善は難しいため、トイレを失敗させない環境作りが必要になります。
【安全対策】老犬の怪我や事故を防ぐ部屋作りの基本
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長年住み慣れた我が家であっても、身体機能が低下した老犬にとっては、思わぬ場所で大きな事故につながる可能性があります。
愛犬が一人で動いても怪我をしないよう、危険を先回りして排除する環境整備が不可欠です。
ここでは、老犬の安全を守るために優先して取り組むべき5つの対策について解説します。
①滑らない床に整える

老犬の室内事故で多いのが、フローリングで滑ることによるケガです。
一般的なフローリングはとても滑りやすく、膝や股関節に負担をかけるだけでなく、立ち上がれないという恐怖心から活動意欲を奪ってしまいます。
対策として効果的なのは、愛犬の生活スペースに、滑りにくい床材を敷き詰めることです。
汚れた部分だけ洗える「タイルカーペット」や、クッション性のある「ジョイントマット」などがおすすめです。
部分的なラグは、つまずいたり、ラグごと滑ったりする危険があります。
敷物は、裏面に滑り止め加工があるものを選び、部屋全体に敷くか、動線に合わせて隙間なく設置しましょう。
②段差・階段から転落のリスクをなくす

足腰が弱った老犬にとって、ソファやベッドなどの段差の上り下りはリスクが高いといえます。
若い頃のように飛び乗ろうとして失敗し落下したり、降りる際の着地の衝撃で前足の骨折や脱臼を起こしたりするケースが後を絶ちません。
ソファやベッドには、犬専用の「スロープ」や「ステップ(階段)」の設置がおすすめです。
愛犬の視力が低下している場合はステップを踏み外すケースもあるため、ローソファやローベッドなど高さのない家具への変更も検討してください。
また、階段からの落下は命に関わるため、階段の登り口には必ずフェンスを設置し、侵入を物理的に防ぐことが大切です。
③家具の角・柱・出っ張りに緩衝材をつける

視力が低下したシニア犬や認知症により旋回運動をする犬にとって、家具の角や柱の出っ張りは凶器となる場合があります。
距離感がつかめずに顔から衝突し、眼球を傷つけたり頭部を打撲したりする事故も珍しくありません。
犬の目の高さにある角や出っ張りには、「コーナークッション」や「ガードテープ」などの緩衝材を貼り付けましょう。
柔らかい発泡ゴム素材のもので覆うと万が一衝突しても衝撃を吸収し、怪我のリスクを最小限に抑えられます。
④コードや隙間の危険を防ぐ

高齢になり視力や判断力が低下した犬は、床に這う電気コードに足を引っ掛けて転倒したり、コードを認識できずに噛んで感電や火傷を負ったりする危険があります。
コード類は配線カバーで壁に沿わせて固定するか、家具の裏に通して隠すようにしましょう。
また、認知症の症状が出始めると、狭い場所に入りたがる習性や後退ができなくなる症状が見られる場合があります。
家具の隙間に入り込み、自力で出られずにパニックを起こす可能性もあるため、隙間やデッドスペースは犬が入り込めないように対策しておくことが大切です。
⑤ゲートやサークルで行動範囲を管理する

部屋中を自由に歩けることが必ずしも老犬にとって幸せとは限りません。
広すぎるスペースは移動の負担になるだけでなく、危険な場所に入り込み、ケガをする可能性もあります。
特に留守番中や夜間など、ママさんパパさんの目が届かない時間帯は、安全確保のために行動範囲を制限することを検討してみてください。
愛犬がケガ、または事故を起こす危険があるキッチンや階段、玄関は、ペットゲートやサークルを活用して区切りましょう。
行動範囲を適度に限定すると、犬自身も落ち着いて過ごせるようになります。
老犬が安心して過ごすための快適な部屋作りとは?快適な環境を整える
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安全面の対策で怪我のリスクを取り除いたら、次は老犬が心身ともにリラックスできる「快適な環境」を整えましょう。
シニア期に入ると、寝る・食べる・排泄するといった日常の基本的な動作に体力が必要になり、若い頃と同じ環境では身体への負担が大きくなります。
ここでは、老犬の生活の質(QOL)を維持するために、今日から取り入れたい4つのポイントを解説します。
①体圧分散できるベッド(寝床)を選ぶ
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1日の大半を寝て過ごす老犬にとって、ベッド選びは食事と同じくらい大切です。
筋力が落ちて骨が浮き出てきた老犬が、薄いマットや体が沈み込みすぎるフカフカのクッションで寝続けると、床ずれができやすくなります。
老犬の寝床には、身体の一部に圧力が集中するのを防ぐ体圧分散に優れた高反発の介護用マットがおすすめです。
高反発マットは沈み込みすぎないため寝返りが打ちやすく、立ち上がる際も足に力が入りやすいため筋力維持にも効果的です。
②エアコンや加湿器で室温を一定に保つ

老犬は筋肉量の減少や自律神経の乱れにより、体温調節機能が低下します。
暑さで熱中症になりやすいだけでなく、寒さで体温が下がると持病の悪化や感染症のリスクが高まります。
犬にとっての適温は個体差や犬種によりますが、一般的に室温24〜26℃、湿度50〜60%程度が目安です。
エアコンやサーキュレーターを活用して室温・湿度を一定に保ちましょう。
重要なのは、人間が感じる温度ではなく、犬が過ごす床付近の温度です。
必ず犬の高さに温度湿度計を設置し、こまめにチェックしてください。
③高さのある食器台で首や足腰の負担を減らす

床に置いた食器で食事をする際、犬は首を深く下げ、前足に体重をかけた姿勢をとります。
首や背中の関節に痛みがあったり、前足の筋力が低下していたりすると、姿勢を保つこと自体が苦痛になり、食欲減退の原因になる可能性があります。
愛犬の負担を減らすために、食器台を使って食器の位置を高く調整しましょう。
理想的な高さは、犬が自然に立った状態で、首を少し下げた程度(肩の高さより少し下)です。
楽な姿勢で最後まで食事ができるようにサポートしていきましょう。
④寝床の近くに専用トイレを設置する

老犬になると、膀胱の機能低下や腎臓病の影響でトイレの回数(頻尿)が増えます。
足腰が弱っているため、遠くにあるトイレに行くまで我慢できずに漏らすことも多くなり、トイレの失敗が増えがちです。
対策として、普段過ごしている寝床やリビングのすぐ近くに、老犬専用のトイレスペースを用意しましょう。
トイレトレーは、枠の段差につまずかないよう、入り口がフラットなバリアフリータイプがおすすめです。
まとめ|老犬の部屋作りは早めの準備が安心につながる
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「まだ歩けるから大丈夫」と思っていても、シニア犬の身体機能は日々変化しています。
怪我をしてから後悔するのではなく、元気なうちから先回りして環境を整えておくと愛犬の健康寿命を延ばし、結果として介護の負担を減らすことにもつながります。
今回ご紹介した対策を、すべて一度に完璧に行う必要はありません。
まずは愛犬の様子をよく観察し、気になったポイントから一つずつ改善してあげてください。
老いを止めることはできませんが、環境を整えると痛みや不安を軽減できます。
穏やかな時間を一日でも長く守るために、早めの対策をしておきましょう。


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