老犬でみられるぶどう膜炎とは?隠れた原因と受診の流れを獣医師が解説

COLUMN

動物病院を受診し、獣医師から「ぶどう膜炎」と診断されたとき、とても心配になりますよね。

そんなとき、
「そもそもぶどう膜炎ってなんだろう?」
「どんな原因で起きるのかな?」
「どのような治療を行うのだろう?」
といった疑問をお持ちではありませんか?

実は、老犬のぶどう膜炎の背景には、白内障や腫瘍などの病気が隠れていることが少なくありません。

また、放置すると緑内障を併発し、最悪の場合、目が見えなくなる可能性があることをご存知でしょうか?

今回は、老犬のぶどう膜炎に隠れた原因やよくある症状、受診の流れ、治療について獣医師が分かりやすく解説します。

最後までお読みいただき、老犬のぶどう膜炎について正しい理解を深めましょう。

老犬でみられるぶどう膜炎

ぶどう膜炎とは、眼の内部にある「ぶどう膜」に炎症が起こる病気です。

ぶどう膜は、

  • 虹彩(こうさい)
  • 毛様体(もうようたい)
  • 脈絡膜(みゃくらくまく)

の3つの組織から構成されており、眼に栄養を届けたり、眼圧を調整したりといった重要な役割を担っています。

特に老犬のぶどう膜炎では、加齢によるさまざまな病気が背景に存在することが多く、「単なる目の炎症」と考えてしまうのは危険です。

さらに炎症が続くと、眼の中を循環している「眼房水」の流れが悪くなり、眼圧が上昇することがあります。

眼圧が高い状態が続くと視神経が障害され、最悪の場合、目が見えなくなることも珍しくありません。

一度失われた視力は回復が難しいため、緑内障へ進行する前にしっかり治療を行うことが大切です。

老犬のぶどう膜炎に隠れた原因

では、老犬のぶどう膜炎はどのような原因で起こるのでしょうか?

その原因は主に、

  • 感染症
  • 白内障
  • 角膜潰瘍
  • 眼内腫瘍
  • 内分泌疾患
  • 特発性

といったものが挙げられます。

それぞれを詳しく見ていきましょう。

①感染症

特に老犬では、感染症によってぶどう膜炎が起こることがあり、免疫力の低下から重症化することがあります。

原因となる感染症には、

  • 細菌(ブルセラやレプトスピラなど)
  • 真菌(アスペルギルスやクリプトコッカスなど)
  • 原虫(トキソプラズマやネオスポラなど)
  • ウイルス(アデノウイルスやジステンパーウイルスなど)

などさまざまなものがあります。

感染症が原因の場合は、眼だけではなく全身状態を含めて評価することが重要であり、治療も炎症を抑えるだけでは十分ではありません。

まずは感染症にかからないよう、ワクチンなどの予防や生活環境の改善を行うことが大切です。

②白内障

老犬では、加齢とともに水晶体が白く濁る「白内障」がよく見られます。

白内障が進行すると、水晶体を包んでいる「水晶体嚢」からタンパクが眼内へ漏れ出すことがあります。

本来、眼の中で隔離されているタンパク質が外へ漏れると、免疫が異物と認識して炎症を起こし、「水晶体起因性ぶどう膜炎」を引き起こすことが珍しくありません。

白内障のある老犬では、「目が白いだけだから様子を見よう」と考えず、定期的な眼科検査や治療を受けることが大切です。

③角膜潰瘍

角膜潰瘍とは、目の一番表面にある「角膜」が傷ついてしまう病気です。

老犬では、視力低下による外傷やドライアイに続発する角膜潰瘍が起こることが珍しくありません。

角膜を傷つけることで、その刺激や炎症が眼内へ伝わり、ぶどう膜炎を併発することがあります。

そのため、治療前には角膜に傷がないか、検査で確認することが重要です。

④眼内腫瘍

老犬では、眼の中に発生する腫瘍にも注意が必要です。

眼内腫瘍は炎症を引き起こし、ぶどう膜炎として発見されることが珍しくありません。

具体的には、

  • メラノーマ
  • メラノサイトーマ
  • 腺癌
  • リンパ腫

といった腫瘍が挙げられます。

ぶどう膜炎に気づいたときには腫瘍が進行しているケースもあるため、日頃から愛犬の目をよく観察しておくことが、早期発見・早期治療にとても大切です。

⑤内分泌疾患

老犬では、糖尿病や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)などの内分泌疾患も、間接的にぶどう膜炎へ関与することがあります。

特に糖尿病では白内障を急速に発症し、その結果として水晶体起因性ぶどう膜炎を引き起こすケースが少なくありません。

また、クッシング症候群では高脂血症を引き起こすことで、ぶどう膜炎を引き起こすことがあると考えられています。

老犬では眼だけを診るのではなく、全身疾患を含めた総合的な診断が重要となります。

⑥特発性ぶどう膜炎

 

ぶどう膜炎の中には、細菌や外傷などの明らかな原因が見つからないケースも少なくありません。

多くはステロイドによる治療に反応することから、何らかの免疫の異常が考えられているものの、その病態は不明と言われています。

老犬のぶどう膜炎でよくある症状

では、老犬のぶどう膜炎では、どのような症状が見られるのでしょうか?

ぶどう膜炎の症状は、炎症の程度や原因によって異なります。

初期ではわずかな変化しか見られないことも多く、「少し目が赤いだけ」と見過ごされてしまうケースも少なくありません。

しかし、炎症が進行すると、

  • 涙が増える
  • 目をしょぼしょぼする
  • 瞳孔が小さくなる
  • 目が白く見える
  • 目が見えない
  • 眼球が大きく見える

といった症状が見られることがあります。

特に「目が見えない」「眼球が大きく見える」といった症状は、炎症が進行し緑内障を引き起こしている可能性があります。

このような様子が見られた場合は、早急に動物病院を受診しましょう。

老犬のぶどう膜炎での受診の流れ

では、老犬のぶどう膜炎で動物病院を受診した場合、どのような検査が行われるのでしょうか?

老犬のぶどう膜炎では、全身疾患や腫瘍などが原因となっているケースもあるため、

  • スリットランプ検査
  • 眼圧測定
  • フルオレセイン染色
  • 血液検査
  • 画像検査

といったさまざまな検査が必要になります。

それぞれを詳しく見ていきましょう。

①スリットランプ検査

スリットランプとは、眼を拡大しながら細かく観察できる機器です。

炎症の程度や前房フレア、眼内出血などが詳細に評価されます。

スリットランプ検査には麻酔の必要はなく、一般的にどの目の病気でも行われます。

②眼圧測定

眼圧を測定することで、ぶどう膜炎による眼圧の低下や、緑内障による眼圧の上昇の確認が行われます。

ぶどう膜炎では病期によって眼圧が変化するため、初診だけでなく治療中も定期的に測定することが重要です。

③フルオレセイン染色検査

ぶどう膜炎の原因として角膜潰瘍が疑われる場合には、傷を染めるための専用の染色液を使用し、角膜表面の傷の確認が行われます。

角膜潰瘍が存在すると使用できない点眼薬もあるため、治療方針を決める上で重要な検査です。

④血液検査

眼科検査だけでは原因が分からない場合には、全身の検査を進めます。

血液検査では、炎症反応や感染症の有無、糖尿病をはじめとした内分泌疾患など全身疾患の有無を調べることが目的です。

老犬ではこの検査で、眼の病気だけではなく全身疾患が見つかることも珍しくありません。

⑤画像検査

画像検査では、超音波検査(エコー検査)がよく行われます。

眼の超音波検査では、眼内に腫瘍がないかどうかの確認が行われます。

また、腹部の超音波検査も行い、腫瘍や内分泌疾患が隠れていないかの確認が行われることも少なくありません。

もし、ここまでの検査で診断がつかない場合などでは、必要に応じCTやMRIが行われるケースがあります。

ただし、これらは麻酔を伴う検査であるため、老犬では行われないケースもあります。

老犬のぶどう膜炎の治療法

では、老犬のぶどう膜炎では、どのような治療が行われるのでしょうか?

ぶどう膜炎の治療では、多くは点眼薬による治療が行われます。

まず、炎症を抑えるためにはステロイド点眼薬が広く使用されます。

一方、角膜潰瘍がある場合や感染症が疑われる場合には、ステロイド点眼が病状を悪化させる可能性があるため、非ステロイドの点眼薬を選択することが珍しくありません。

その他、感染があれば抗菌薬、角膜に傷があればヒアルロン酸といった点眼薬を併用し、治療が行われます。

点眼を嫌がる老犬も多いため、おやつを利用したり、褒めながら行ったりするなど、無理のない方法で行うことが大切です。

自己判断で点眼を中止すると病状が悪化する可能性があるため、注意が必要です。

まとめ

老犬のぶどう膜炎は、眼の中にある「ぶどう膜」に炎症が起こる病気です。

ぶどう膜炎そのものが病気の本質ではなく、老犬では白内障や眼内腫瘍、内分泌疾患など、さまざまな病気が背景に隠れていることが少なくありません。

また、ぶどう膜炎を放置すると、緑内障などの重篤な合併症を引き起こし、視力を失う可能性もあります。

一度失われた視機能を回復させることは難しいため、早期発見・早期治療が何より重要です。

愛犬に「目をしょぼしょぼする」「充血している」といった症状が見られる場合は、「年齢のせい」と自己判断せず、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。

浅川 雅清

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2016年日本大学生物資源科学部獣医学科卒。 同年よりペットショップ併設の動物病院にて勤務。 犬・猫・うさぎ・ハムスターの診察を中心に、ペットショップの生体...

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