老犬に豚肉を与えても大丈夫?メリット・注意点・適量を専門家が徹底解説

COLUMN

老犬になると、体力や食欲が落ちてきて「少しでも栄養のあるものを食べさせてあげたい」と思いますよね。

豚肉は「栄養がありそう」「元気が出そう」というイメージがあり、与えてみようと考えているのではないでしょうか。

しかし、老犬は若い頃と違ってさまざまな機能が衰えるため、体の負担にならないか心配になるママさんパパさんも少なくありません。

先に言ってしまいますが、豚肉は老犬に与えても問題ありません。

ただし、若い犬と同じ与え方では負担になってしまうことがあるため、正しい与え方をすることが大切です。

そこでこの記事では、ペットフーディストや犬の管理栄養士の私が、老犬に豚肉を与えるメリットや与える量、注意点について解説します。

【結論】老犬に豚肉を与えても大丈夫!

冒頭でも言いましたが、適量であれば老犬に豚肉を与えても大丈夫です。

豚肉は動物性たんぱく質を主体とした食材で、アミノ酸やビタミンB群、鉄、亜鉛など、さまざまな栄養素を含んでいます。

もちろん、犬が必要な栄養がすべて含まれているわけではないため、主食として豚肉だけを与えることはできません。

しかし、豚肉は必須アミノ酸をバランスよく含む良質なたんぱく源であり、良質なたんぱく質は消化・吸収されやすく、体の中で無駄なく利用されやすいという特徴があります。

特に老犬は、加齢に伴って食事量が減りやすいだけでなく、消化機能も衰えてきます。

少ない量でも体に取り込みやすい形で栄養を補える食材は、老犬の栄養状態を保つうえでも重要です。

老犬に豚肉を与える3つのメリット

豚肉は、「良質なたんぱく質だから良い」というだけではありません。

ここでは、老犬に豚肉を与えるメリットについて見ていきましょう。

①筋肉維持(サルコペニア対策)に役立つ

豚肉は、加齢によって減少しやすい筋肉の維持を栄養面から支えることができる嬉しい食材です。

老犬では、若い頃と同じ量のたんぱく質を摂っても筋肉合成が起こりにくくなる「同化抵抗性(アナボリックレジスタンス)」が生じ、年齢とともに筋肉量が徐々に減少します。

これは「サルコペニア(加齢性筋肉減少)」と呼ばれる自然な生理変化で、珍しいことではありません。

ただ、筋肉量が減ると、歩行の不安定や転倒、関節炎の悪化、活動量の低下につながり、ますます筋肉が減りやすくなるという悪循環に陥りやすくなります。

豚肉は消化性の良い動物性たんぱく質を含み、必須アミノ酸をバランスよく供給できます。

特にロイシンなどの分岐鎖アミノ酸(BCAA)は筋タンパク合成刺激に深く関与しているため、食事量が減っている老犬でも少量で効率よくアミノ酸を補える点がメリットです。

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②ビタミンB1による疲労軽減サポート

豚肉にはビタミンB1が豊富に含まれており、老犬の疲労軽減に役立ちます。

体を動かすとき、筋肉はエネルギー(ATP)を使って収縮しています。

このATPは、主に食事から摂取した糖質を分解することで作られますが、その代謝過程に不可欠なのがビタミンB1(チアミン)です。

ビタミンB1が不足すると糖質をうまくエネルギーに変換できず、筋肉に十分なATPが供給されません。

その結果、長く歩けない、すぐ座り込む、散歩を嫌がる、横になっている時間が増えるといった疲れやすい状態が起こります。

老犬では代謝効率が低下し、食事量も減りやすいため、必要なビタミンB1が不足しやすくなります

豚肉は犬が食べる食材の中でもビタミンB1を多く含むため、エネルギー産生を助け、結果として活動時の疲れやすさの軽減につながるのです。

ちなみに、少量の茹でたキャベツなどと一緒に摂ると、ビタミンB1の吸収を助けてくれますよ。

③嗜好性が高く食欲が落ちた老犬でも食べやすい

豚肉は加熱時に脂肪由来の香り成分が揮発し、強い匂いを発するため、食欲が落ちた老犬も食べてくれやすいでしょう。

老犬は、加齢による嗅覚や味覚の低下、活動量減少による空腹感の鈍化、口腔内トラブルなどによって、食欲が低下しがちです。

犬は嗅覚で食欲が刺激されますが、匂い刺激が弱いと、そもそも「食べ物」と認識しにくくなってしまうことも珍しくありません。

食欲低下は体力や免疫力低下に直結するため、食べてもらうという意味でも豚肉は有効です。

実際、私の高齢の愛犬たちは豚肉が好きで、よく食べてくれていましたよ!

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老犬に与えていい豚肉の量

豚肉は老犬にメリットのある食材ですが、与えすぎは栄養バランスの偏りや肥満の原因となってしまいます。

おやつやトッピングで与える場合は、老犬が1日に必要なカロリーの10%以内にとどめましょう。

以下に、体重別に1日に与えられる最大量をまとめてみたので、参考にしてください。

体重 避妊・去勢なし老犬 避妊・去勢済み老犬
2kg 12g 10g
3kg 16g 14g
4kg 20g 17g
5kg 23g 20g
6kg 27g 23g
7kg 30g 26g
8kg 33g 29g
9kg 36g 31g
10kg 39g 34g
15kg 53g 46g
20kg 66g 57g
25kg 78g 67g
30kg 90g 77g

※ぶたロース 赤肉 生 / 100gあたり140kcal(参考:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」

脂身をとった豚ロースで算出しましたが、豚肉は部位によってカロリーが大きく異なります

最もカロリーが低いのはヒレ肉、次いで脂身のないももやロースとなるため、選ぶときの参考にしてください。

上記を目安に、愛犬の体調や便の状態、体型などを考慮して調整してあげましょう。

カロリー計算については、以下の記事もチェックしてみてくださいね。

シニア犬の1日のカロリーは?老犬の年齢・体重別の目安と活動係数を解説

老犬に豚肉を与えるときの注意点

老犬に豚肉を与えるときは、注意してあげたいこともあります。

食物アレルギーに注意

初めて豚肉を与えるときは、食物アレルギーを起こす可能性もあるため、ごく少量から始めましょう。

食べてから30分~48時間以内に以下のような症状が見られるときは、食物アレルギーが疑われます。

【食物アレルギーの主な症状】

  • 皮膚の赤みや痒み
  • 目の周りや口の周り、耳を痒がる
  • 足先を執拗に舐めたりかじっている
  • 下痢や軟便、便の回数が増える
  • 嘔吐

症状のあらわれ方は個体差がありますが、上記のような症状が見られたら与えるのを控え、獣医師に相談してください。

特に老犬では皮膚バリア機能が低下しているため、若い犬より症状が出やすいことがあります。

必ず加熱して与える

豚肉は、必ず加熱して与えましょう。

生の豚肉には細菌や寄生虫が存在している可能性が高く、免疫力が低下しやすい老犬では感染リスクが高くなります

中心までしっかり火を通し、赤みが残らない状態に加熱してください。

また、脂肪分が気になる場合は、茹でるといいでしょう。茹でることで余分な脂肪も落ち、消化の負担を軽減できますよ。

ただし、老犬では食に対するこだわりが強くなり、好きな調理方法も異なります。

焼いたほうが好きだったり、蒸したほうが好きだったりすることもあるため、愛犬の好みの調理法を探してあげることをおすすめします。

与え過ぎない

豚肉は栄養価が高い一方で、脂質も多い食材のため、与え過ぎないようにしましょう。

老犬では脂質代謝が低下しており、脂質の過剰摂取は消化不良や下痢の原因になることがあります

脂身は取り除き、赤身部分だけを与えましょう。

なお、バラ肉は脂質が多く、老犬には負担になりやすい部位です。脂肪の少ないヒレ肉やもも肉、ロース肉(脂身を取り除く)を選んでください。

細かく刻んだり柔らかくなるまで煮込んでから与える

喉につまらせるリスクや、消化の負担を軽減するためにも、細かく刻んだり柔らかくなるまで煮込んでから与えましょう。

老犬では歯の摩耗、歯周病、咀嚼力の低下が見られることが多く、大きいままの肉はうまく噛めず丸のみしてしまうことがあります。

持病がある老犬は獣医師に確認してから与える

豚肉はタンパク質が豊富に含まれているほか、さまざまな栄養素を含んでいるため、腎臓病や膵炎などの持病がある老犬は獣医師に確認してから与えましょう。

病気の状態によっては、栄養制限が必要なこともあります

自己判断で与えるのは控え、必ず獣医師に相談してください。

老犬に豚肉を与えるときによくあるQ&A

ここでは、老犬に豚肉を与えるときによくある疑問について解説します。

Q.毎日食べさせても大丈夫?

A.適量であれば、毎日与えても問題ありません。

豚肉を主原料とするドッグフードもあるように、豚肉は毎日食べても大丈夫な食材です。

ただし、おやつやトッピングとして使用する際の量はしっかり守ってくださいね。

Q.豚ひき肉はあげていい?

A.与えても大丈夫ですが、脂肪量には注意しましょう。

ひき肉は細かいため消化しやすく、噛む力が弱くなった老犬には食べやすい形状です。

ただし、ひき肉は脂身も一緒に挽かれていることが多く、赤身肉より脂質量が多くなりがちです。

ひき肉を与える場合は、赤身のひき肉を選んだり、一度茹でて脂を落とすといいでしょう。

Q.鶏肉とどっちがいい?

A.どちらも優れた食材なので、目的によって使い分けるといいでしょう。

たとえば、

  • 食欲が落ちている → 豚肉(香りが強く食べやすい)
  • 体重管理や消化負担を抑えたい → 鶏むね肉(脂質が少ない)

といったように、愛犬の状態に合わせて選ぶのがおすすめです。

もちろん、老犬の好みの問題もあるので、愛犬が好きなものを選んであげてもいいでしょう。

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まとめ

適切な与え方や適量を守れば、豚肉は老犬にもメリットがある食材です。

特に食欲が落ちていたり、体重が減ってきたときなどは、心強い味方となってくれるでしょう。

ただし、老犬には負担となってしまうので、脂身は必ず取り除くようにしてください。また、必ず中までしっかり加熱することも大切です。

豚肉を上手に活用して、老犬の食事をサポートしてあげましょう。

たかだ なつき(高田菜月)

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4匹の愛犬と暮らすペット専門ライター×ペットの専門家。長年人間の介護に携わっていたが、愛犬の介護をきっかけにペットライターに転身。犬の飼育歴は20年以上。こ...

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