老犬が疲れやすい5つの原因とは?その症状や自宅でのケアを獣医師が解説

COLUMN

愛犬が年齢を重ねるにつれて、散歩ですぐ疲れたり寝ている時間が増えたりといった様子を見ると、心配になりますよね。

そんなとき、
「なぜ疲れやすくなるのだろうか?」
「どのような症状が危険サインなのだろう?」
「自宅ではどのようなことができるのかな?」
といった疑問をお持ちではありませんか?

実は、老犬が疲れやすくなる原因として、加齢はもちろんのこと、さまざまな病気が隠れていることも少なくありません。

なかには、早急に受診が必要なケースがあることをご存知でしょうか?

本記事では、老犬が疲れやすくなる原因や受診すべき症状、動物病院で行う検査、自宅でのケアについて、獣医師が分かりやすく解説します。

最後までお読みいただき、愛犬の疲れやすさについて理解を深めましょう。

老犬が疲れやすい5つの主な原因

まず、老犬はどのような原因で疲れやすくなるのでしょうか?

それぞれを詳しく見ていきましょう。

①加齢による筋力の低下

加齢に伴い筋肉量が減少する「サルコペニア」と呼ばれる状態は、老犬が疲れやすくなる原因の一つです。

これは、多くの健康な犬でも、年齢を重ねるとともに起きるものです。

特に後ろ足の筋力が落ちることで、立ち上がることや歩行がしづらくなるため、さらに疲れやすくなります。

②関節のトラブル

老犬では、加齢とともに関節の軟骨がすり減ることで起こる「変形性関節症」がよく見られます。

この病気が原因で、老犬は関節に痛みや違和感を覚え、体を動かすことを嫌がるようになります。

その結果、寝ている時間が増えたように見え、疲れやすくなったように感じられることも少なくありません。

③心臓病

心臓は、全身に血液を循環させるポンプの役割を果たしています。

その機能が低下すると全身に十分な血液が行き渡らず、酸素供給が不足するため、老犬は軽い運動でも息切れや疲労を感じやすくなります。

小型犬が多い日本では、老犬では特に「僧帽弁閉鎖不全症」という心臓の病気を抱えているケースが少なくありません。

④慢性腎臓病

腎臓は、尿とともに体の老廃物を体外に排泄する役割を担っています。

その腎臓の機能が低下する「慢性腎臓病」は、老犬に多い病気の一つです。

食欲低下や体重減少、貧血などを引き起こし、老犬に全身のだるさや疲れやすさが見られます。

⑤甲状腺機能低下症

甲状腺は、全身の代謝を司るホルモンを分泌する臓器です。

甲状腺機能低下症は、このホルモンの分泌が低下し、代謝が低下する病気です。

そのことから、活動性が落ち、無気力や疲労感が目立つようになります。

そのほかに、脱毛や皮膚炎などの症状が見られることも少なくありません。

こちらも老犬でよく見られる病気です。

老犬が疲れやすいときに受診すべき症状

ここまでは、老犬が疲れやすくなる原因について解説しました。

これらの中には、治療を必要とする病気も含まれています。

では、疲れやすくなる以外にどのような症状が見られた場合は、動物病院を受診すべきなのでしょうか?

具体的には、

  • 食欲が低下している
  • 元気がない
  • 嘔吐や下痢をしている
  • 水を飲む量が増えた/減った
  • 排尿や排便の失敗が増えた
  • 立ち上がるのに時間がかかる
  • 咳をしている

といった症状がある場合は、何かの病気が原因で疲れやすくなっている可能性があります。

また、

  • 呼吸が荒い、速い
  • 粘膜の色が白い
  • 横になったままぐったりしている

といった症状は、緊急性が高い可能性があり、早急な受診が必要なケースもあるため、注意しましょう。

老犬が疲れやすいときに動物病院で行う検査

では、実際に老犬が疲れやすいと感じて動物病院を受診した場合、まずはどのような検査が行われるのでしょうか?

それぞれを詳しく見ていきましょう。

①身体検査・触診

一般的に最初に行われるのが、身体検査と触診です。

体重や筋肉量、関節の動き、姿勢、痛みなどの確認が行われます。

また、聴診で心音を確認し、雑音がないかをチェックします。

そのほか、粘膜の色や皮膚の状態をチェックし、前述の病気につながる異常がないか確認が行われます。

②血液検査

次に、身体検査で確認した所見をもとに、細かな検査へと進んでいきます。

慢性腎臓病や甲状腺機能低下症などの病気が疑われる場合は、血液検査を行うことが一般的です。

腎臓の数値やホルモンの値、貧血の値などを確認することで、これらの病気があるかどうかの判断が行われます。

必要に応じ、尿検査などが追加されることも少なくありません。

③画像検査(レントゲン・エコー)

心臓病や変形性関節症に関しては、一般的な血液検査では異常が見られないことも少なくありません。

そのため、レントゲン検査や超音波(エコー)検査を行い、心臓や関節の状態を確認することがあります。

特に、僧帽弁閉鎖不全症では、心臓のエコー検査がとても有用です。

これらの検査を組み合わせて、総合的に疲れやすい原因の特定が行われます。

老犬が疲れやすいときに自宅でできるケア

では、老犬が疲れやすい場合は、自宅ではどんな工夫ができるのでしょうか?

まずは、疲れやすくなる原因に対する治療が第一となりますが、自宅で小さな工夫をしてあげるだけでも、愛犬は快適に過ごすことができます。

それぞれを詳しく見ていきましょう。

①お散歩の工夫

お散歩をするときは、可能な限り愛犬に負担をかけないよう工夫する必要があります。

具体的には、

  • 距離を短くして、こまめに行く
  • 涼しい時間帯に行う
  • 平坦な道を選ぶ

といった工夫が挙げられます。

特に、変形性関節症であれば、無理な運動で悪化する可能性が否定できません。

また、老犬は体温調節が苦手なケースも多いため、極端に暑い、または寒い時間のお散歩は避けてあげましょう。

②室内の環境の工夫

特に筋肉量が減少したり、関節にトラブルがあったりするケースでは、室内の環境にも工夫が必要です。

具体的には、

  • 滑りにくいマットを敷く
  • 段差をなくす
  • スロープを設置する
  • 歩行補助具を使用する

といった方法が挙げられます。

これらは、老犬の歩行を補助する目的のほかに、転倒防止や関節への負担軽減にもつながります。

③マッサージや簡単なリハビリ

変形性関節症などの関節のトラブルでは、軽いマッサージやリハビリを行うことで、老犬の歩行をサポートすることができます。

ただし、痛みがある場合は逆効果になる可能性があるため、注意が必要です。

④サプリメントでケアをする

変形性関節症や心臓病において一般的に使用されるサプリメントとしては、

  • コンドロイチン
  • グルコサミン
  • オメガ3脂肪酸
  • フランス海岸松樹皮抽出物質
  • MSM(メチルスルフォニルメタン)
  • ASU(アボカド大豆不鹸化物)

などが挙げられます。

ただし、サプリメントはあくまで補助的なものであり、治療の代替になるものではありません。

また、すべての老犬に効果が見られるわけではないため、自己判断で使用するのではなく、事前に獣医師へ相談することが大切です。

まとめ

老犬が疲れやすくなる原因には、加齢による筋力低下だけでなく、

  • 関節のトラブル
  • 心臓病
  • 慢性腎臓病
  • 甲状腺機能低下症

といったさまざまな病気が関係していることがあります。

そのため、「年齢のせい」と決めつけるのではなく、食欲の低下や元気消失、呼吸の異常などの症状が見られた場合は、早めに動物病院を受診することが大切です。

また、自宅では散歩の負担を減らしたり、室内環境を整えたりすることで、愛犬の体への負担を軽減することが可能です。

日々のちょっとした変化に気づき、適切なケアを行うことが、愛犬の健康維持と生活の質の向上につながります。

浅川 雅清

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2016年日本大学生物資源科学部獣医学科卒。 同年よりペットショップ併設の動物病院にて勤務。 犬・猫・うさぎ・ハムスターの診察を中心に、ペットショップの生体...

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