老犬のてんかんは寿命に影響する?危険な症状や原因、受診の目安を獣医が解説
愛犬がシニア期に入り、突然てんかんのような発作を起こしたら、とても心配になりますよね。
そんなとき、
「てんかんを起こしたら寿命は短くなるの?」
「そもそもてんかんってなんだろう?」
「どんな原因でてんかんが起こるのだろう?」
といった疑問をお持ちではありませんか?
実は、老犬で突然てんかん発作が起きた場合、背景に何かの病気が隠れているケースが少なくありません。
その病気によっては、愛犬の寿命に影響を及ぼす可能性があることをご存知でしょうか?
今回は、老犬のてんかんについて、その原因や症状、寿命への影響、受診の目安、自宅でのケアについて、獣医師が分かりやすく解説します。
最後までお読みいただき、老犬で起きるてんかんについて、正しい理解を深めましょう。
老犬の「てんかん」とは?

まず、「てんかん」を簡単に説明すると、「24時間以上の間隔をあけて、少なくとも2回以上の発作が認められる脳の病気」と言われています。
てんかんは、その原因をもとに「特発性てんかん」と「構造的てんかん」に分けられます。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
①特発性てんかん

特発性てんかんは、主に遺伝が関係していると考えられている、原因がはっきりしないてんかんのことです。
発症する年齢は概ね2~3歳で、多くは6か月~6歳までにてんかん発作を起こすと言われています。
特発性てんかんでは、MRI検査や脳脊髄液検査で脳に明らかな異常は見られないが、脳波検査で異常があることが多いとされています。
②構造的てんかん

構造的てんかんは、
- 脳腫瘍
- 脳炎
- 脳の奇形(水頭症など)
- 脳血管障害(血栓など)
などが原因として挙げられ、MRIや脳脊髄液検査で診断できることが多い病気です。
老犬では特発性てんかんと比べ、構造的てんかんや、後述する脳以外の臓器の病気による発作が見られることが多いと言われています。
そのため老犬の場合、てんかんのような発作が起きたときは、様子を見ずに早めに動物病院を受診することがおすすめです。
てんかんが老犬の寿命に与える影響

では、老犬でてんかんが起きた場合、寿命にどのような影響を与えるのでしょうか?
てんかんが寿命に与える影響は、発作の頻度やその原因により大きく異なります。
例えば、1回の発作が短く、発作の頻度も少なければ、寿命に大きく影響を与えない可能性が高いです。
しかし、「発作重責」や「群発発作」といった重度の発作を起こした場合は、寿命が短くなる可能性があります。
また老犬では、発作そのものだけではなく、
- 誤嚥性肺炎
- 神経原性肺水腫
- 体温上昇による臓器障害
などの合併症により、命に関わるケースも少なくありません。
| ・発作重責
てんかん発作が5~10分以上続いている状況を「発作重責」と呼びます。 この状況では、上記の合併症を併発する可能性が高くなり、早急に動物病院にて発作を止める治療を行う必要があります。 もし発作時に使用する坐薬や点鼻薬が処方されていれば、使用することも検討しましょう。 ・群発発作 一度発作が収まったものの、間隔を空けて1日に何回も痙攣や発作が起きる状況を「群発発作」と呼びます。 こちらも同様に、早急に受診し発作を止める治療を行うべき状況です。 |
老犬のてんかんの原因

では、老犬のてんかんでは、どのような病気が原因で起こるのでしょうか?
構造的てんかんと誘発性(反応性)の発作に分けて、それぞれを詳しく見ていきましょう。
①構造的てんかん

老犬の構造的てんかんは、特に脳腫瘍が原因のことが多いと言われています。
主な腫瘍の種類としては「髄膜腫」という、脳の「クモ膜」という部分の細胞から発生するものや、「グリオーマ」という、脳の神経細胞そのものから発生する腫瘍などが挙げられます。
・髄膜腫
髄膜腫は犬の脳腫瘍の中で約50%の発生率を占めるとされる、発生頻度の高い腫瘍です。
ゆっくり進行し、大きくなり脳を圧迫することで様々な症状を引き起こします。
無治療もしくはステロイド単体の治療だと、数か月で症状が進行し亡くなってしまうと言われています。
抗がん剤とステロイドを併用して、中央生存期間は約1年程度、外科手術だと中央生存期間は6か月~2年、手術と放射線を併用すると中央生存期間は1.5~2.5年と報告されています。
このように、治療法によっても、老犬の寿命に与える影響が大きく異なることが分かります。
・グリオーマ(神経膠腫)
グリオーマは犬の脳腫瘍の中で約20~30%の発生率を占めるとされる、髄膜腫に続いて発生頻度の高い腫瘍です。
星状膠細胞腫、希突起膠細胞腫、膠芽腫などが分類され、比較的進行が早く、浸潤性も強いとされています。
ステロイドと対症療法を組み合わせた治療だと、中央生存期間は1か月程度と報告されており、髄膜腫と比べ比較的進行が早いです。
抗がん剤(ロムスチン)による治療は、中央生存期間は約半年程度と報告されています。
②誘発性の発作

誘発性の発作は、脳以外の臓器の異常から起こる発作で、てんかんによる発作とは区別されています。
それぞれの原因を詳しく見ていきましょう。
・中毒
老犬が食べてはいけないものを食べて中毒を起こした時にも、発作は起こります。
有名なものだと、
- チョコレート(テオブロミンによる交感神経の興奮)
- ガム(キシリトールによる低血糖)
- 殺虫剤(有機リン中毒による)
- トリカブト(アコニチンによる)
- 人用の薬
などが原因となります。
・低血糖
老犬の低血糖は、長期間食事が摂れない場合のほか、膵臓の腫瘍であるインスリノーマや、糖尿病の治療として用いるインスリンの過剰投与などが低血糖の原因となることが多いです。
・肝性脳症
肝性脳症とは、アンモニアを分解する肝臓の機能が低下し、脳に影響を及ぼして発作が起こる状態です。
特に老犬では肝臓の病気がある犬が多く、進行に伴って発作が見られるケースが少なくありません。
・尿毒症
尿毒症とは、体内の老廃物を尿に排出する役割を持つ「腎臓」という臓器の機能が低下し、毒素が体内に蓄積することで全身に影響を及ぼす状況を指します。
尿毒素が脳に影響を及ぼすと、発作を起こす原因となります。
老犬においては、慢性腎臓病(腎不全)の進行に伴って起こることが少なくありません。
老犬のてんかんの症状

老犬の典型的なてんかんによる発作は、
- 発作前期
- 発作
- 発作後期
といった流れで症状を示すことが多いです。
まず、発作前期では、発作の前兆として、そわそわして落ち着きなく歩き回ったり、息が荒くなったり、震えたりする様子が認められます。
次に、多くは「強直間代性」と言われる、四肢を突っ張りバタバタと動かすような痙攣や遊泳運動などが認められます。
その際に、口から泡やヨダレを出す、尿や便を失禁する、といった様子が見られることも少なくありません。
一般的に、発作時間は数秒から数分で、特に対処をしなくても自然に発作が治まります。
最後に、発作後期では発作が終了し、ウロウロと動き回る、ぼーっとするなどの行動の異常が認められます。
この時期が過ぎれば、発作前のいつもと変わりのない様子に戻ることが多いです。
その他の症状として、片足だけが「部分発作(焦点発作)」を起こしたり、「フライバイト」のような上を向く異常な行動を示したりすることがあります。
老犬のてんかんで受診すべき症状の目安

もし、上記のような典型的な発作のパターンとは外れていたり、以下のような症状を伴ったりする場合は、一般的な「てんかん」ではない、または誘発性発作である可能性があるため、様子を見ずに早急に受診しましょう。
- 嘔吐や下痢をしている
- 発作後も元気が無く、ぐったりしている
- 食欲がない
- 発作後も歩けない/立てない
- 発作前に誤食をしてしまった
- 発作後も意識が戻ってこない
- 目が見えていない/物にぶつかる
- 斜頚や斜視、旋回行動が認められる
また、前述した発作重責や群発発作のときも、早急に受診が必要な状況ですので、注意してください。
老犬のてんかんへの日常ケア

最後に、もし愛犬がてんかん発作を起こした場合、その後はどのようなケアをしてあげたらよいのでしょうか?
それぞれを詳しく見ていきましょう。
①過度なストレスを避ける

老犬のてんかん発作は、ストレスによって誘発されることがあります。
特に老犬は環境の変化に敏感なため、
- 引っ越しや模様替え
- 長時間の留守番
- 大きな音や来客
といった刺激が負担になることがあります。
そのため、静かで落ち着ける環境で過ごせるよう意識してあげましょう。
②定期的に通院する

てんかんは長期管理が必要な疾患であり、症状が落ち着いているように見えても、自己判断で通院や投薬をやめるのは非常に危険です。
定期的な診察では、
- 発作の頻度や変化の確認
- 薬の効果や副作用のチェック
- 薬の血中濃度の測定
などが行われます。
発作の記録(回数・時間・様子など)をメモしておくと、よりスムーズな診察につながります。
③サプリメントでケアをする

特発性てんかんにおいて一般的に使用されるサプリメントとしては、
- 中鎖脂肪酸(MCT)
- カンナビジオール
- オメガ3脂肪酸
- フランス海岸松樹皮抽出物質
などが挙げられます。
ただし、サプリメントはあくまで補助的なものであり、治療の代替になるものではありません。
また、すべての老犬に効果が見られるわけではないため、自己判断で使用するのではなく、事前に獣医師へ相談することが大切です。
まとめ

老犬のてんかんは、人と比べよく遭遇する病気です。
犬のMRI検査は高額で、かつ全身麻酔を伴う処置となるので、老犬では原因を追究できないことも多いのが現状です。
だからこそ、発作が軽度であった場合でも、様子を見ずに一度獣医師に相談するよう心掛けましょう。
また、定期的な通院はもちろんのこと、環境を整えたりサプリメントを有効に使ったりすることで、少しでも愛犬の生活の質を高めてあげることも大切です。

















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