老犬が痩せた…その原因は?受診の判断や自宅でのケアを獣医師が解説

COLUMN

愛犬が年齢を重ねるとともに、体が細くなり骨ばってきて「痩せてきた」と感じると、心配になりますよね。

そんなとき、
「何か病気で痩せたのでは?」
「フードの量を増やした方がいいのかな?」
「動物病院を受診したほうがいいのかな?」
といった疑問をお持ちではありませんか?

実は、老犬が痩せるのにはさまざまな原因があり、中には早めの受診が重要な疾患も含まれることもあります。

本記事では、老犬が痩せる原因や考えられる病気、受診の目安、検査、自宅でのチェックポイントを獣医師が分かりやすく解説します。

最後までお読みいただき、愛犬が「痩せてきたな」と思ったときの正しい対処法について、理解を深めましょう。

老犬が痩せる主な5つの原因

まず、老犬はどのような原因で痩せてしまうのでしょうか?

その原因は、加齢に伴う生理的なものから命に関わる病気までさまざまです。

それぞれを詳しく見ていきましょう。

①サルコペニア(筋肉量の減少)

加齢によって筋肉量が減少する現象を「サルコペニア」といいます。

運動量の低下や関節のトラブルとともに筋肉が落ちることで、見た目にも痩せて見え、体重も軽くなります。

これは自然な老化現象ではあるものの、急激に進行する場合は背景に病気が隠れている可能性があるため、注意が必要です。

②消化器疾患

老犬では加齢に伴い、消化機能は徐々に低下します。

胃腸の働きが弱まることで、食べたものをうまく消化・吸収できず、体重が減少することがあります。

その一方で、病気による慢性的な下痢や寄生虫感染などが原因であるケースもあるため、注意が必要です。

③内分泌疾患

ホルモンの異常も老犬が痩せる要因の一つです。

糖尿病では、フードを食べるものの血糖がうまく利用されずエネルギー不足となり、筋肉や脂肪が分解されて痩せていきます。

その結果、ご飯を食べていても痩せる、という状況が起こることも少なくありません。

④泌尿器疾患

泌尿器とは、尿を作る臓器である「腎臓」をはじめ、尿管や膀胱などを指します。

老犬では特に慢性腎臓病の発生が多く、嘔吐や食欲低下が起こることで痩せるケースがよく見られます。

⑤腫瘍疾患

腫瘍は老犬で非常に多く見られる病気の一つです。

腫瘍によるエネルギー消費の増加や代謝の異常から、急激に痩せることがあります。

老犬が痩せる3つの主な病気

では、これらの病気の中で、実際に老犬でよく見られる病気はどのようなものがあるのでしょうか?

それぞれを詳しく見ていきましょう。

①糖尿病

犬の糖尿病は、体内で血糖値を適切にコントロールできなくなる病気です。

血糖値が上昇することで尿中に糖が排泄され、尿量が増えてよく水を飲むようになります。

その原因は主に、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンが不足する、あるいは働きが低下することです。

犬においては、1型糖尿病の方が発生しやすいと言われています。

糖尿病が起こる原因には、遺伝的な要因や肥満などが挙げられます。

特に老犬では発症リスクが高まる傾向があり、注意が必要です。

犬の糖尿病では、初期には目立った症状が出にくく、見逃されることも少なくありません。

病状が進行するにつれて、

  • よく水を飲む
  • 尿量が増える
  • 食べているのに痩せる
  • 嘔吐や下痢を起こす
  • 感染症にかかりやすくなる
  • 白内障が起こる

といった症状が見られることがあります。

また、長期に治療が行われない場合は、ケトアシドーシスと呼ばれる緊急性の高い状態になり、命に関わることもあるため、注意が必要です。

②慢性腎臓病(CKD)

腎臓とは、血液をろ過して、尿を作るとともに血液中の老廃物を体外へ排出する臓器です。

その機能が徐々に低下することを「慢性腎臓病」と呼びます。

慢性腎臓病は、犬の三大死因のひとつと言われるほど、老犬に多く見られる病気です。

腎臓の働きが低下すると、老廃物をうまく排出できなくなり、体に毒素(尿毒素)がたまります。

その結果、以下のような症状が引き起こされます。

  • 水をよく飲み、尿の量が増える
  • 食欲が低下し、体重が減る
  • 毛づやが悪くなる
  • 元気がなくなる
  • 寝ている時間が増える
  • 口臭が強くなる
  • 痙攣(けいれん)を起こす
  • 歯肉や舌が白っぽくなる

特に「よく水を飲む」「トイレが増えた」と感じたら、慢性腎臓病の初期症状の可能性があるため、早めに動物病院で血液検査を受けることをおすすめします。

③悪性腫瘍

悪性腫瘍とは、人でいう「がん」のことで、一つの細胞が無秩序に増殖し、しこりを作る病気です。

悪性腫瘍は、からだのどの部位からでも発生することがあります。

老犬で多い悪性腫瘍には、

  • リンパ腫
  • 悪性黒色腫
  • 骨肉腫
  • 扁平上皮癌
  • 肥満細胞腫
  • 腺癌

といったものが挙げられます。

悪性腫瘍の種類により引き起こされる症状はさまざまですが、どの種類でも体重が減少することが一般的です。

老犬が痩せたときの受診の目安

では、実際に老犬が痩せたと感じた場合、どのようなタイミングで受診すべきなのでしょうか?

一般的に体重が10%減少したときは、病気が隠れている可能性が高いと言われています。

また、併せて以下のような症状が見られる場合は、様子を見ずに動物病院を受診することを推奨します。

  • 嘔吐や下痢が続く
  • 排便や排尿に異常がある
  • ぐったりしている
  • 震えや痙攣を起こしている
  • 呼吸が苦しそう
  • どこか痛そうにしている
  • 元気や食欲が低下している

これらは重大な疾患のサインである可能性が高く、老犬の場合は放置すると体調が急速に悪化する恐れがあります。

老犬が痩せたときに行われる検査

では、老犬が痩せたときに動物病院を受診した場合、どのような検査が行われるのでしょうか?

ここまで挙げたさまざまな病気を探るために、

  • 血液検査
  • 尿検査
  • レントゲン検査
  • 超音波(エコー)検査
  • CT/MRI検査
  • 病理検査

といった検査が行われます。

ただし、老犬では持病などにより全身麻酔のリスクが高くなるため、特にCTやMRI、病理検査などを行うことが難しいケースも少なくありません。

老犬が痩せたときにできる自宅でのチェックポイント

最後に、もし老犬が痩せてきたと思ったとき、自宅ではどのようなケアを行うことができるのでしょうか?

それぞれを詳しく見ていきましょう。

①毎日の体重と食事記録

まず、老犬が痩せてきたと思ったときは、自宅で体重を測定しましょう。

一般的な体重計であれば、愛犬を抱っこしたときの体重から自分自身の体重を差し引くことで、愛犬の体重を計算することができます。

また、食事量や食欲の変化のチェックも重要です。

フードの量はキッチンスケーラーで正確に量り、何グラム与えて何グラム残したのか記録すると、愛犬の状態をより正確に把握することにつながります。

②食欲がある場合の対応

食欲があるのに痩せている場合は、フードを変更してみるのも一つの方法です。

高カロリーで消化に優しいドッグフードを選び、1日の食事回数を増やす工夫も有効です。

食事の工夫を行う場合は、併せて体重も測定し、その効果を確認するようにしましょう。

③食欲不振時の対策

もし愛犬の食欲が落ちている場合は、まずは動物病院を受診しましょう。

老犬になると、健康でも食欲にムラが出ることは少なくありません。

受診した結果、異常がないようであれば、

  • ドライフードをふやかす
  • ウエットフードを使用する
  • フードを温める
  • 少量のトッピングをする
  • 食べやすい食事台を用意する

といった工夫をすることで、食欲が改善するか確認しましょう。

まとめ

老犬の体重減少は、加齢による筋肉量の低下だけでなく、内臓のトラブルや腫瘍疾患などの病気が原因となることがあります。

急激な体重減少や食欲不振、元気消失などの症状がある場合は、背景に病気が隠れていることも少なくないため、早急な受診が重要です。

日頃から体重や食事量を記録し、小さな変化に気づくことが早期発見につながります。

異変を感じたら迷わず動物病院を受診し、愛犬の健康と生活の質を守ってあげましょう。

浅川 雅清

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2016年日本大学生物資源科学部獣医学科卒。 同年よりペットショップ併設の動物病院にて勤務。 犬・猫・うさぎ・ハムスターの診察を中心に、ペットショップの生体...

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