老犬の夜泣きに睡眠薬はNG?人間用で興奮する理由と動物病院での選択肢
深夜2時、また愛犬の夜泣きで起こされる……。
「せめて数時間でも続けて眠りたい」
「家にある睡眠薬を少しだけ飲ませたら夜泣きがなくなるかな」
「このままだと仕事にも支障が出てしまう」
何日も続く老犬の夜泣きに、睡眠薬という言葉を調べはじめたママさんパパさんもいるのではないでしょうか。
私は20年以上犬と暮らして5匹を飼育し3匹を看取ってきました。
夜中に何度も起こされる日が続くと、判断する力まで鈍っていくことを身をもって知っています。
同じ夜を越えようとしている方の助けになりたい思いから、JKC愛犬飼育管理士の資格を取得しました。
結論からお伝えすると、老犬の夜泣きがひどくても人間用の睡眠薬を自己判断で与えてはいけません。
少量でも中毒を起こすおそれがあり、さらに犬では眠るどころか逆に興奮して夜泣きが激しくなる反応も報告されています(※1)。
一方で動物病院なら、老犬の夜泣きに対して処方される薬という選択肢もあるのです。
この記事では、老犬の夜泣きに対して人間用の睡眠薬が危険な理由から、動物病院で相談できる薬の種類、受診前に準備したい記録までを解説します。
読み終える頃には、今夜どうすべきかと、動物病院で何を伝えればよいかが整理できているでしょう。
老犬の夜泣きに睡眠薬はNG?人間用が危険な理由

家にある睡眠薬を少しだけ、と考えてしまう夜があるかもしれません。
しかし、老犬の夜泣きに自己判断で睡眠薬を与えるのはやめましょう。
ここでは少量での中毒、逆に興奮する副作用、市販品の危険を順に確認し、すでに飲ませた場合の対応までお伝えします。
理由1.人間用の睡眠薬は少量でも中毒を起こす

Merck獣医マニュアルに記されているのは、睡眠薬に使われるゾルピデムなどについて、鎮静や運動失調が起きた報告が体重1kgあたり0.22mgという低い量からあるという内容です(※1)。
犬については体重1kgあたり0.6mgほどで、震えや鳴き声、歩き回る様子が出た報告が挙げられています(※1)。
どちらも症状が確認された報告の量であって、ここまでなら安全という境目ではありません。
| 確認したいこと | 資料に書かれていること |
| 犬に安全な量 | 記載なし(報告は症状が出た量のみ) |
| 報告されている症状 | 鎮静、運動失調、震え、鳴き声、歩き回る |
Merck獣医マニュアルに犬への安全な量や使ってよい量の記載はなく、量を決める根拠として使えるものではないのです。
つまり「少しだけなら」という量の調整自体が成り立ちません。
理由2.睡眠薬の副作用で興奮し夜泣きが悪化する

もっとも知っておきたいのが、睡眠薬の副作用で眠らせるつもりが逆の結果になる可能性です。
Merck獣医マニュアルには、これらの薬で予想されるのは強い鎮静だとしながら、逆説的な興奮も起こると記載されています(※1)。
犬で報告されているのは、震え、鳴き声、歩き回るといった様子だそうです。
アメリカの動物虐待防止協会(ASPCA)の資料でも、多量の摂取では興奮に加えて脈が速くなる、体温が上がる、震えるといった症状が挙げられています(※2)。
| 期待していたこと | 実際に起こりうること |
| 眠って静かになる | 興奮して鳴き声が増える |
| 落ち着く | 歩き回りが激しくなる |
| 朝まで眠る | 震えや脈の速まりが出る |
つまり夜泣きを止めるために飲ませた薬で、鳴き声や徘徊がさらに激しくなるおそれがあるのです。
理由3.市販の睡眠改善薬やサプリも自己判断はNG

処方薬ではない市販品なら安心、とも言い切れません。
人間用の睡眠改善をうたう製品には、犬にとって危険な成分が含まれている場合があるのです。
ASPCAの資料では、睡眠補助に関連する成分としてキシリトールや5-HTPも挙げられています(※2)。
とくにキシリトールは危険性がよく知られ、ガムやタブレットにも使われる成分です。
【人間用で与えてはいけないものの例】
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人間用である限り、処方薬か市販品かを問わず自己判断では与えないと決めておきましょう。
すでに飲ませてしまったときは動物病院へすぐ連絡

もし飲ませてしまった場合、様子を見て判断するのは避けてください。
症状が出ていなくても、分かる範囲の情報をそろえて動物病院へ連絡するのが先です。
【連絡するときに伝えたいこと】
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Merck獣医マニュアルによると、ゾルピデムなどの睡眠薬では、摂取から30分以内で症状が出ていなければ、薬を体の外に出す処置ができるとされています(※1)。
時間が限られるため、自宅で吐かせようとせず、まず動物病院の指示を受けてください。
家庭でできるのは、情報を集めて連絡し、静かな場所で見守ることです。
老犬の夜泣きは睡眠薬より原因の確認が先

老犬の夜泣きを薬で抑える前に、鳴いている理由そのものに治療できる原因が隠れていないか確かめることが先です。
VCA Animal Hospitalsも、よい結果を得るには身体の病気と行動の問題を同時に管理しなければならないとしています(※4)。
痛み、ホルモンの病気、認知症との切り分けという3つの観点で見ていきましょう。
老犬の夜泣きの原因は痛みであることがある

見落とされやすいのが、痛みによって眠れていないケースです。
老犬が夜間に落ち着かない様子は痛みのサインであることがあり、動物病院で痛みの原因を調べて治療を始める必要があります(※3)。
変形性関節症の犬では、痛み止めを使うと夜間に落ち着いて休めるようになったという研究もあるのです(※8)。
痛みが理由なら、必要になるのは眠らせる薬ではなく痛みへの治療になります。
【痛みが隠れているかもしれない様子】
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当てはまる様子があれば、夜泣きとあわせて獣医師に伝えてみてください。
夜泣きの背景に甲状腺などの病気が隠れている場合

老犬が夜中に鳴く背景には、体の内側の病気が関わることもあります。
VCA Animal Hospitalsによると、甲状腺や下垂体の病気は不安を含む行動の変化と関連することが多いそうです(※4)。
また糖尿病のように飲水量が増える病気は、粗相の原因になる場合もあります(※4)。
いずれも夜泣きを直接起こすと決まっているのではなく、夜の落ち着かない様子に関わりうる病気と考えられるでしょう。
【夜泣き以外にあわせて確認したい変化】
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どの病気も見た目では分からないため、血液検査などで調べる対象になります。
当てはまる変化があれば、夜泣きとあわせて獣医師に伝えましょう。
夜泣きは認知症と決めつけず動物病院で検査

老犬の夜泣きが続くと、認知症だから仕方ないと考えてしまうかもしれません。
ただしVCA Animal Hospitalsは、行動の変化が見られたペットは年齢にかかわらず身体検査を受けるべきとしており、血液検査などで隠れた病気を調べることも提案しています(※4)。
認知症と判断するのは、ほかの原因を除いたあとの話です。
【動物病院で調べてもらえること】
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夜泣きの原因や生活リズムの整え方は、以下の記事でも解説しています。
老犬の夜泣きで動物病院から処方される薬

人間用が使えないなら打つ手がないのか、と思われるかもしれません。
犬の認知症に使う薬と、不安をやわらげる薬を順に紹介します。
老犬の認知症に使われるセレギリンと副作用

認知機能不全症候群に対して使われる薬のひとつがセレギリンです。
アメリカとカナダでは、犬の認知機能不全症候群の治療薬として承認されています(※7)。
日本では人用のセレギリンが覚醒剤原料に指定されているので、使えるかどうかはかかりつけの動物病院に確認しましょう(※9)。
製造元の研究者らが641頭を対象に行った60日間の試験では、全体の77.2%で改善がみられたと報告されました(※5)。
| 確認したいこと | 報告されている内容 |
| 効果が現れるまで | 数日で少しずつ、はっきりするまで数週間(※6) |
| 試験での改善率 | 641頭中77.2%(60日間・プラセボ対照なし) |
| 改善の中身 | 飼い主が見た全般的な変化 |
| 症状ごとの改善率 | 見当識・家族との関わりが77.8%で最も高く、活動性・睡眠覚醒のリズムが67.8%で最も低い(※10) |
※この試験はプラセボと比べない形で行われ、改善は飼い主が見た全般的な変化を指します。夜泣きだけが77.2%でおさまるという意味ではなく、睡眠覚醒のリズムは改善率が最も低い項目でした。
VCA Animal Hospitalsは、セレギリンの副作用として嘔吐や下痢、食欲不振のほか、落ち着きのなさや見当識障害、攻撃性といった行動の変化を挙げています(※6)。
攻撃的な犬には使わないこととされ、多くの抗うつ薬など併用してはいけない薬もあるそうです(※6)。
併用の扱いは資料によって異なる薬もあるため、飲んでいる薬はすべて獣医師に伝えてください。
不安をやわらげる安定剤や睡眠を助けるサプリ

VCA Animal Hospitalsの資料では、犬の不安に使われる薬として次のようなものが挙げられています(※7)。
| 薬の例 | 使われる場面 | 知っておきたい副作用 |
| トラゾドン | 効き始めが早く短期や必要なときに | セロトニン症候群の恐れ |
| ガバペンチン | 受診や移動など場面が決まっている不安 | とくに高用量で眠くなる |
| フルオキセチン | 分離不安や全般的な不安 | 食欲の低下、体重の減少 |
| アルプラゾラムなど | 雷や花火など特定の場面 | 眠気、食欲の増加、飲み始めの興奮 |
どれを選ぶかは不安の出方や持病によって変わり、処方の前に身体検査や血液検査で全身の状態を確かめて決めるのが基本です(※7)。
薬は単独で使うものではなく、原因への治療や環境の調整と並行して進めるものと考えておきましょう。
睡眠を助けるサプリメントとして知られるメラトニンも、人間用の製品にはキシリトールや5-HTPが含まれる場合があるそうです(※1)。
鎮静作用のある薬やサプリメントを含め、何を使うかは獣医師が診察のうえで判断するものと考えてください。
老犬の夜泣きで動物病院に伝えたい記録

夜泣きは診察室では起こらないため、家庭での記録が手がかりになります。
愛犬が何時に鳴いたかだけでなく、前後の様子まで残しておきましょう。
| 記録すること | 書き方の例 |
| 鳴き始めた時刻と続いた時間 | 深夜2時ごろ/20分ほど |
| 鳴いているときの様子 | 歩き回る/同じ場所で鳴く/抱くと落ち着く |
| 昼間の過ごし方 | よく眠っていた/散歩に行けなかった |
| 体の変化 | 水を飲む量が増えた/立ち上がりに時間がかかる |
| 使っているもの | サプリメントの名前/ほかの持病の薬 |
鳴いている様子をスマホで動画に撮っておくと、言葉では伝えきれない部分が伝わります。
数日分たまれば、毎晩同じ時刻なのか、日によって違うのかという傾向も見えてくるでしょう。
まとめ|老犬の夜泣きに睡眠薬は獣医師と相談して決める

人間用の睡眠薬は少量でも中毒のおそれがあり、犬では逆に興奮する反応も報告されています。
使うかどうかを決めるのは獣医師であり、まず確かめるべきは夜泣きの原因です。
今回の内容を振り返っておきましょう。
【この記事の振り返り】
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眠れない夜が続くと、自分の判断に自信が持てなくなるものです。
それでも薬の名前を調べる前に立ち止まれたのなら、それは愛犬を守る判断ができている証拠です。
記録を持って動物病院の扉を開けることが、愛犬とご家族の両方の夜を変える一歩になります。
まずは、今日の鳴き声の時刻をメモすることから始めてみませんか。
【参考文献】
※1:Toxicoses in Animals From Human Antidepressants, Anxiolytics, and Sleep Aids/Merck Veterinary Manual(2026年10月21日確認)
※2:The Most Common Sleep Aid Toxicities in Cats and Dogs/ASPCApro(2026年10月21日確認)
※3:How to Recognize Pain in Aging Dogs/VCA Animal Hospitals(2026年10月21日確認)
※4:Behavior Counseling – Senior Pet Behavior Problems/VCA Animal Hospitals(2026年10月21日確認)
※5:Recent advances in diagnostic and therapeutic strategies for canine cognitive dysfunction/American Journal of Veterinary Research(2026年10月12日確認)
※6:Selegiline/VCA Animal Hospitals(2026年10月21日確認)
※7:Behavior Counseling – Medications and Consent Form/VCA Animal Hospitals(2026年10月21日確認)
※8:Gruen ME, Samson DR, Lascelles BDX/Scientific Reports 9:14192(2019)(2026年10月21日確認)
※9:エフピーOD錠2.5 添付文書/医薬品医療機器総合機構(PMDA)(2026年10月21日確認)
※10:A noncomparative open-label study evaluating the effect of selegiline hydrochloride in a clinical setting/Veterinary Therapeutics(2001)(2026年10月22日確認)

















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