老犬が痙攣後に歩き回る原因とは?認知症との違いと動物病院へ行く目安
痙攣はおさまったのに、愛犬がふらつきながら部屋を歩き続けている……。
「呼んでも反応がないのはどうして?」
「このまま歩かせていて大丈夫なのかな」
「やっぱり認知症がはじまったの?」
目の前で起きていることが分からないまま、老犬が痙攣後に歩き回る姿を見つめているのではないでしょうか。
私は20年以上犬と暮らして5匹を飼育し3匹を看取ってきました。
はじめて愛犬の体がこわばったときは、何をすればいいのか分からず立ちすくんだことを今も覚えています。
ママさんパパさんが同じ状況に直面したときに、落ち着いて過ごしてほしいという思いから、JKC愛犬飼育管理士の資格を取得しました。
結論からお伝えすると、老犬が痙攣後に歩き回るのは、痙攣で激しく活動した脳が元の状態に戻る途中で起こる変化とされています。
獣医学ではこの時間を発作後期(はっさくこうき)と呼び、歩き回る、ぼんやりする、ふらつくといった様子がよく見られるそうです(※1)。
つまり歩き回ること自体は、認知症がはじまったサインとは限りません。
ただし、次のいずれかに当てはまる場合は、この先を読み進めるより先に動物病院へ連絡してください。
【読む前に確認したい状態】
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この記事では、老犬が痙攣後に歩き回る原因から認知症の徘徊との違い、動物病院へ行く目安までを解説します。
読み終える頃には、今どうすべきかと、次の診察で何を伝えればよいかが整理できているでしょう。
老犬が痙攣後に歩き回る原因とは?発作のあとに残る脳の変化

痙攣が終わっても、脳はすぐに元の状態には戻りません。
回復の途中で起こる変化を、脳の状態と方向感覚の2つに分けて見ていきましょう。
原因1.痙攣後は脳の働きが回復する途中だから

老犬が痙攣後に歩き回るもっとも大きな理由は、痙攣が止まっても脳の働きがすぐには元に戻らないことです。
Merck獣医マニュアルでは、発作後期を回復の段階として認知の混乱、歩き回ること、過剰な活動性が起こる場合があると記載されています(※1)。
つまり発作後の混乱や見当識障害によって、本人の意図とは違うように歩き続けて見えることがあるのです。
なお発作後の仕組みは完全に解明されておらず、現れ方には個体差があります。
原因2.痙攣後に方向感覚が一時的に失われるから

痙攣後の老犬は、自分がどこにいるのか分からなくなっている場合があります。
コーネル大学獣医学部では、痙攣のあと数分から数時間にわたって見当識が失われた状態や混乱が続くことがあると説明されています(※2)。
見当識とは、今どこにいて何が起きているのかを把握する感覚です。
【方向感覚が戻っていないときの様子】
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名前を呼んでも反応が返らないのは、情報を受け取る働きが戻りきっていないためかもしれません。
老犬の痙攣後に歩き回る以外にあわせて起こる症状

発作後期には、歩き回ること以外の変化も同時に現れます。
どれも回復の途中で見られるもので、しつけられたことを忘れたわけではありません。
特発性てんかんと診断された犬の飼い主292名への調査で、発作後に何らかの症状があったと答えた飼い主は97%にのぼります(※3)。
なかでも多く記録されたのは見当識障害と歩き回ることで、次いでふらつきや一時的な視覚の低下でした(※3)。
| あわせて起こる症状 | 家庭で見られる様子 |
| ぼんやりする | 何もない方向を見つめ、呼んでも振り向かない |
| ふらつき | 足元が定まらず、家具や壁にぶつかる |
| 一時的な視覚の低下 | 見えている様子がなく、段差でつまずく |
| 失禁・よだれ | 粗相やよだれが出る、吐くこともある |
転倒やケガをしやすい時期なので、粗相を見つけても叱らず、受診で伝えられるようメモを残しておきましょう。
老犬の痙攣後に歩き回るのはいつまで続くか

痙攣後の症状が続く時間には個体差があり、前述の調査では次のような結果が出ています(※3)。
| 発作後の症状が続いた時間 | 回答した飼い主の割合 |
| 1〜30分 | 51% |
| 31〜60分 | 20% |
コーネル大学獣医学部の資料でも、痙攣後の混乱は数分から数時間続くことがあるとのことです(※2)。
もっとも調査の対象は特発性てんかんと診断された犬で、回答の偏りも論文中で指摘されています(※3)。
ただし老犬全般や、高齢で初めて起きた痙攣の目安にはなりません。
歩き方や反応の戻り具合は記録して診察で伝え、落ち着いて見えても受診の判断は獣医師の指示に従ってください。
時間が経つほど反応が鈍くなる、ふらつきが強まる場合は、時間の長さにかかわらず動物病院への連絡が必要です。
老犬の痙攣後の徘徊と認知症の徘徊との違い

老犬が歩き回る姿を見ると、認知症を心配する方は少なくありません。
痙攣後の徘徊は痙攣を境に始まり、回復とともに収まっていくのが特徴です(※3)。
一方、認知機能不全症候群は、加齢にともなって慢性的に進行していく神経の病気と定義されています(※7)。
コーネル大学獣医学部によれば、9歳ごろから見られるようになるそうです(※4)。
【受診時に獣医師へ伝える観察ポイント】
| 見るところ | 痙攣後の徘徊 | 認知症の徘徊 |
| きっかけ | 痙攣のあとに始まる | きっかけなく始まる |
| 経過 | 調査では1時間以内に落ち着く回答が多い | 長い期間をかけてゆっくり進む |
| よく見られる様子 | 混乱、ふらつき、一時的な視覚の低下 | 夜間に歩き回る、昼間に眠る時間が増える |
老犬では両方が同じ時期に起こることもあり、家庭で見分けきることはできません。
コーネル大学獣医学部も、認知機能不全症候群の診断では発作性の病気などを除外する必要があると示しています(※4)。
「認知症だから仕方ない」と家庭で結論を出してしまうと、治療できる原因を見逃す恐れがあるのです。
痙攣とは関係なく普段から歩き回る場合は、徘徊そのものを扱った記事をあわせてご覧ください。
老犬が痙攣後に歩き回るときの対応は「無理に止めないこと」

歩き回る愛犬を見ると止めたくなりますが、発作後期に向くのは環境を整える対応になります。
ふらつきがあるため、抱き上げて動かすより周囲のものをどけるほうが安全です。
【痙攣後にまずやること】
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周囲を整えたら、落ち着くまで待ちましょう。
コーネル大学獣医学部は、発作後の混乱が攻撃的な行動として現れることがあるとし、噛まれないよう口まわりを避けるよう示しています(※2)。
【痙攣直後に避けたいこと】
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発作後にごはんを強く欲しがる犬もいるそうです(※6)。
歩き方が安定してから与え、持病や薬がある場合は獣医師に確認しておきましょう。
老犬の痙攣後に動物病院へ行く目安は「意識と回数」

受診の判断は、歩き回る時間の長さだけでは決められません。
すぐ連絡すべき状態と、落ち着いて見える場合の2つに分けて見ていきます。
痙攣が5分以上続く・繰り返すときはすぐ連絡

米国獣医内科学会(ACVIM)の合意声明では、5分以上続く痙攣、または意識が戻らないまま2回以上起こる痙攣をてんかん重積と定義しています(※5)。
24時間のうちに自然におさまる痙攣が2回を超えて起こる状態は、群発発作です(※5)。
Merck獣医マニュアルでは24〜48時間に複数回とされるなど、回数の線引きは文献によって異なります(※1)。
コーネル大学獣医学部は、5分を超えたらただちに動物病院へ向かうよう指示しています(※2)。
【夜間でもすぐ連絡したい状態】
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夜間や休日に対応している動物病院の連絡先は、落ち着いているうちに調べておきましょう。
歩き回るだけでも受診は必要で初めてなら早めに相談

痙攣が数分でおさまり、徐々に落ち着いてきた場合でも受診は必要です。
コーネル大学獣医学部は、発作が止まったなら救急の費用をかけなくてもよいものの、獣医師の診察は受ける必要があると説明しています(※2)。
ただし初めて痙攣が起きたなら年齢にかかわらず、落ち着いて見えてもできるだけ早く動物病院へ連絡してください(※2)。
| 痙攣後の状態 | 受診の時期 |
| 5分以上続く、意識が戻らない、繰り返している | 夜間でもすぐ連絡 |
| 初めて起きた(とくに6歳を超えて) | 落ち着いても早めに連絡 |
| 持病で通院中、以前にも発作がある | かかりつけへ連絡し指示を受ける |
特発性てんかんの多くは、生後6か月から6歳までに始まるとされています(※6)。
6歳を超えて初めて痙攣が起きた犬は、代謝の異常や、脳腫瘍・脳卒中などの構造的な病変がある可能性が高いそうです(※2)。
加齢や認知症のせいと家庭で判断せず、獣医師に原因を調べてもらいましょう。
老犬の痙攣後に動物病院で伝えたい3つの記録

痙攣は診察室で再現できないため、家庭の記録が診断の手がかりになります。
コーネル大学獣医学部がすすめているのは、痙攣の時間を計って記録を残し、可能なら動画を撮ることだそうです(※2)。
| 記録すること | 書き方の例 |
| 痙攣が始まった時刻と続いた時間 | 10月1日 午前2時ごろ/およそ1分 |
| 歩き回った時間 | 痙攣後20分ほど/3時には落ち着いた |
| 痙攣後の様子 | 呼んでも反応なし/壁にぶつかる/失禁あり |
慌てている最中でも、スマホのストップウォッチを押すだけで持続時間は残せます。
発作後期は獣医師が直接見られない時間なので、動画は痙攣の最中だけでなく歩き回る様子も撮っておきましょう。
まとめ|老犬が痙攣後に歩き回る様子は記録して獣医師へ

老犬が痙攣後に歩き回るのは、脳が元の状態に戻る途中で起こる変化と考えられています。
歩き回ること自体は認知症のはじまりとは限りませんが、落ち着いて見えることと受診が不要なことは別です。
今回の内容を振り返っておきましょう。
【この記事の振り返り】
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痙攣を目の前にすると、誰でも頭が真っ白になります。
それでも時刻を見て、周りのものをどけて、動画を1本撮れたなら十分な対応です。
その記録が診察で、言葉を話せない愛犬の代わりに状況を伝えてくれます。
変化に気づけたママさんパパさんだからこそ、次の一歩を落ち着いて選べるでしょう。
【参考文献】
※1:Epilepsy in Small Animals/Merck Veterinary Manual(2026年10月21日確認)
※2:Managing seizures/Cornell University College of Veterinary Medicine(2026年10月21日確認)
※3:The Postictal Phase in Canine Idiopathic Epilepsy/Animals(MDPI, 2024)(2026年10月21日確認)
※4:Cognitive dysfunction syndrome/Cornell University College of Veterinary Medicine(2026年10月1日確認)
※5:ACVIM Consensus Statement on the management of status epilepticus and cluster seizures in dogs and cats/Journal of Veterinary Internal Medicine(2024)(2026年10月1日確認)
※6:Idiopathic epilepsy in dogs/Cornell University College of Veterinary Medicine(2026年10月21日確認)
※7:The Canine Cognitive Dysfunction Syndrome Working Group guidelines for diagnosis and monitoring of canine cognitive dysfunction syndrome/Journal of the American Veterinary Medical Association(2025年12月)(2026年10月1日確認)

















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