老犬の後ろ足トレーニング5選|状態別の選び方と中止すべきサインの目安

COLUMN

散歩の帰り道、愛犬の後ろ足が少しよろけた気がする……。

「今のうちにトレーニングさせたほうがいいのかな」
「でも無理をさせて痛めたら元も子もない」
「何から始めればいいのか分からない」

まだ自分で歩けるうちに何かしてあげたいと、老犬の後ろ足トレーニングを調べはじめたママさんパパさんもいるのではないでしょうか。

私は20年以上犬と暮らして5匹を飼育し3匹を看取ってきました。

後ろ足の衰えは少しずつ進むため、気づいたときには立ち上がりに時間がかかっていた経験もあります。

同じ後悔を減らしたい思いから、JKC愛犬飼育管理士の資格を取得しました。

結論からお伝えすると、老犬の後ろ足トレーニングは関節に衝撃が少ない低負荷の運動が基本です。

コーネル大学獣医学部は、変形性関節症のある犬にすすめられる運動としてリードをつけた散歩や水泳といった低衝撃の運動を挙げています(※1)。

激しい筋トレではなく、毎日続けられる動きで筋肉を保つという考え方です。

この記事では、老犬の後ろ足トレーニング5つと状態別の選び方、中止すべきサインまでを解説します。

読み終える頃には、今日から何を始めて何に気をつければよいかが見えてくるでしょう。

老犬の後ろ足トレーニング5選|状態別の選び方

まずは5つの運動と、どの状態の老犬に向くかを一覧で確認しましょう。

トレーニング 向いている状態 始める前に
平地でのリード散歩 自分で歩ける 時間と回数を獣医師と決める
立ち座り運動 自分で立てる 回数とセット数を獣医師に確認する
体重移動 立った姿勢を保てる 獣医師かリハビリ療法士の処方を受ける
ゆるい坂道歩き ふらつきが少ない 獣医師かリハビリ療法士の処方を受ける
水中運動 獣医師が適応を認めた 設備のある施設で行う

体重移動と坂道歩きは、獣医師かリハビリ療法士に処方されてから行う運動とされています(※3)。

どれを選ぶかは、愛犬が今できる動きで決めましょう。

トレーニング1.平地のリード散歩は時間を分ける

もっとも取り入れやすいのが、平らな道でのリード散歩です。

コーネル大学獣医学部も、関節に負担の少ない運動としてリードをつけた散歩を挙げています(※1)。

大切なのは距離を伸ばすことではなく、無理のない時間を毎日続けることです。

【散歩で意識したいこと】

  • 1回を短くして回数を分ける
  • 路面が熱い時間帯は避ける
  • 砂利や急な段差のある道は選ばない
  • 犬のペースに合わせて立ち止まる

歩きたがらない日は休ませ、時間や回数の目安は獣医師に相談して決めましょう。

トレーニング2.立ち座り運動で後ろ足の筋力を使う

後ろ足の筋力を使う動きとして取り入れやすいのが、座った姿勢から立ち上がる運動です。

ニューヨークの動物医療センター(Animal Medical Center)では、リハビリ部門の獣医師が自宅でできる筋力づくりの運動のひとつとして立ち座りを紹介しています(※7)。

後ろ足の筋力を使う動きなので、人のスクワットに近い運動といえるでしょう。

ただしAnimal Medical Centerはこれらの運動をけがのない健康な犬向けとしており、始める前に獣医師へ確認するよう求めています(※7)。

【立ち座り運動のポイント】

  • 滑らないマットの上で行う
  • 回数とセット数は獣医師に確認する
  • おやつで顔を上げさせると立ちやすい
  • 途中でふらついたらその日は終わる

後ろ足に痛みや持病がある場合は、何回を何セット行うかを獣医師に確認してから始めましょう。

トレーニング3.体重移動でバランスの感覚を保つ

立った姿勢を保てる老犬なら、体重移動の運動も選択肢のひとつです。

VCA Animal Hospitalsでは、立ったままできる静的な運動として、腰や肩をやさしく左右に押して体重を移す方法が紹介されています(※3)。

おやつの位置で体を傾けさせる方法もあります(※3)。

ただしVCA Animal Hospitalsは、これらの体の位置を感じ取る感覚の運動を、獣医師かリハビリ療法士に処方されない限り行わないよう明記していますので注意してください(※3)。

立つ場所による難しさの段階は、次のとおりです(※3)。

段階 立つ場所
やさしい 滑らない平らな床
ふつう フォームマットやクッションの上
むずかしい 体の前後どちらかが高くなる段差

強く押すと転倒につながるため、やり方は動物病院で実際に教わり、いつでも体を支えられるようにしてから始めてください(※3)。

トレーニング4.ゆるい坂道歩きは状態次第

後ろ足にもう少し刺激を入れたい場合は、坂道を使う方法もあります。

VCA Animal Hospitalsは、動きのある運動として坂をゆっくり上り下りする歩き方を挙げています(※3)。

平地よりも後ろ足を使うため、筋肉への刺激は強まるでしょう。

この坂道歩きも体の位置を感じ取る感覚の運動に含まれるため、獣医師かリハビリ療法士に処方を受けてから行うものとされています(※3)。

【処方を受けるときに伝えたい様子】

  • 平地でもふらつくことがある
  • 立ち上がるまでに時間がかかる
  • 足先を引きずる、爪が削れている
  • 散歩のあとに動きたがらない

当てはまる様子があれば、坂道を歩かせてよいかを診察のときに獣医師へ相談しましょう。

トレーニング5.水中運動は適応があれば負担が軽い

関節に負担をかけにくい運動として、コーネル大学獣医学部は変形性関節症の犬に水泳を挙げています(※1)。

VCA Animal Hospitalsによると、浮力で関節にかかる体重が減り、慢性の整形外科疾患で筋力が落ちた犬も動きやすくなるとのことです(※2)。

一方でリハビリの方法によっては、特定の病気をもつ犬に害となる場合もあります(※2)。

【水中運動を始める前に確認したいこと】

  • 対応している施設が近くにあるか
  • 持病があっても受けられるか
  • 1回あたりの時間と頻度
  • 自宅の浴槽では行わない

獣医師の評価を受けて適応があると判断された場合に、犬用のプールや水中トレッドミルを備えた施設で行うものと考えてください。

老犬の後ろ足トレーニングは低負荷が基本の理由

トレーニングと聞くと、しっかり鍛えるイメージを持つかもしれません。

鍛える目的の考え方と、衰えの背景にある病気の見分け方を順に見ていきましょう。

老犬の筋トレは強度を上げること自体が目的ではない

若い犬と同じ感覚で運動量を増やしてよいとは限りません。

コーネル大学獣医学部は、変形性関節症の治療目標を痛みをおさえること、進行を遅らせること、筋肉量を維持または増やすこととしています(※1)。

肥満は関節にかかる力を増やし、病気の進行を悪化させる要因になります(※1)。

コーネル大学獣医学部は体重の管理を生活の見直しのひとつに挙げているので、体重を適正に保つことも意識しましょう(※1)。

よくある思い込み 実際の考え方
たくさん歩かせて鍛える 筋肉を落とさないことが目的
毎日同じ量をこなす 疾患や回復段階に合わせて調整
若い犬と同じ運動でよい 今できることと制限から決める

どの運動をどれだけ行うかは、犬ごとに変わります(※2)。

後ろ足の衰えは関節や神経の病気が関わることもある

後ろ足の衰えは、加齢だけが原因とは限りません。

脊髄の病気である変性性ミエロパチーでは、進行性の筋力低下と協調運動の喪失が起こるとされています(※4)。

変形性関節症でも、起き上がりにくさや筋肉のやせは症状のひとつです(※1)。

後ろ足が弱るという見え方だけでは、どちらの病気かを絞り込めません。

次の表は診断のためではなく、受診時に獣医師へ伝える観察ポイントとしてご覧ください。

伝えたいこと 観察の例
痛そうな様子 触られるのを嫌がる、鳴く、起立時に固まる
足の運び 引きずる、爪の先が削れる、かばって歩く
左右の差 片側だけ使い方が違う、体が傾く
変化の速さ 数日で変わった、数か月かけて進んだ

症状だけで病名を見分けることは家庭でも診察室でもできず、検査で切り分ける対象です(※5)。

老犬の後ろ足トレーニングを中止すべきサイン

VCA Animal Hospitalsは、ペットが痛そうだったり疲れていたりする様子を見せたときは運動を中止して獣医師に連絡するよう示しています(※3)。

その様子として挙げられているのが次の3つです。

中止すべきサイン 家庭で見える様子
脚が震えている 後ろ足がプルプルしている
パンティング 舌を出して息が荒くなってきた
目が見開いている 表情が緊張して落ち着かない

3つとも痛みや疲れの例として挙げられているので、どれかひとつでも見えたらその場で運動をやめましょう(※3)。

運動のあとに足を引きずる、翌日に動きたがらないといった変化は、運動量が多すぎた可能性を示すものです。

その場合は回数や時間を減らし、獣医師に様子を伝えてください。

老犬の後ろ足トレーニングは獣医師に相談してから

ここまで5つの運動を紹介しましたが、始める前に確認しておきたいことがあります。

ふらつきがある場合の受診の優先度と、動物病院で受けられるリハビリを順に見ていきましょう。

後ろ足がふらつくなら原因の確認が先になる

VCA Animal Hospitalsは、体の位置を感じ取る感覚を高める運動について、獣医師またはリハビリ療法士に処方されない限り行わないことと明記しています(※3)。

さらに後ろ足のふらつきの背景には、椎間板疾患や脊髄の腫瘍など複数の病気が関わる場合も珍しくありません(※6)。

Merck獣医マニュアルによると、椎間板の病気では後ろ足の動きの低下から、麻痺や失禁まで起こることがあります(※6)。

受診を急ぐかどうかの目安は、次の表のとおりです。

後ろ足の様子 受診の目安
急に立てなくなった、後ろ足が動かない 当日すぐ連絡する
排尿や排便の様子が変わった 当日すぐ連絡する
数日で急に歩き方が変わった 早めに受診する
立ち上がるときに痛そうにする 早めに受診する
数か月かけて少しずつ弱ってきた 次の診察で相談する

急に動かなくなった場合は、様子を見るより先に動物病院へ連絡してください。

床の滑り対策や歩行を補助する道具の選び方は、以下の記事で解説しています。

老犬の後ろ足に力が入らない…おすすめサポーター3選&失敗しない選び方

老犬の後ろ足リハビリは動物病院で受けられる

動物病院では、専門的なリハビリを受けられる場合もあ。

VCA Animal Hospitalsは、治療的な運動をリハビリで最も重要な方法と位置づけています(※2)。

低い棒をまたいで歩くキャバレッティでは、棒の間隔を体の長さ以上、高さを足首以下にするのが目安です(※3)。

変性性ミエロパチーでも、理学療法が進行を遅らせ、筋肉量の維持に役立つ可能性があります(※5)。

【動物病院のリハビリで行われること】

  • 関節の可動域訓練(筋肉を使わず動かす)
  • ストレッチ
  • キャバレッティ(低い棒をまたいで歩く)
  • トレッドミルでの歩行
  • 水中トレッドミルやプールでの運動

診察のときに、自宅でできる運動を教えてもらえるか聞いてみてください。

まとめ|老犬の後ろ足トレーニングは状態に合わせて選ぶ

老犬の後ろ足トレーニングは、強度を上げるものではありません。

関節に衝撃の少ない運動を、その子の状態に合わせて続けることが筋肉を保つ方法です。

今回の内容を振り返っておきましょう。

【この記事の振り返り】

  • 目的は強く鍛えることではなく筋肉量の維持
  • 低衝撃の運動としてリード散歩や水泳が挙げられている
  • 脚の震えやパンティングが出たら運動を中止する
  • 体重移動や坂道は獣医師の処方を受けてから行う
  • 症状だけで病名は見分けられず検査で切り分ける

後ろ足の衰えに気づけたことは、それだけで大きな一歩です。

次の診察で「家でできる運動はありますか」と一言聞いてみることが、愛犬が自分の足で歩ける時間を延ばしていきます。

一緒に歩ける毎日を、できるだけ長く続けていきましょう。

【参考文献】
※1:Osteoarthritis/Cornell University College of Veterinary Medicine(2026年10月21日確認)
※2:Rehabilitation Modalities/VCA Animal Hospitals(2026年10月21日確認)
※3:Exercises to Improve Proprioception/VCA Animal Hospitals(2026年10月21日確認)
※4:Degenerative myelopathy/Cornell University College of Veterinary Medicine(2026年10月3日確認)
※5:Degenerative Myelopathy in Dogs/VCA Animal Hospitals(2026年10月3日確認)
※6:Disorders of the Spinal Column and Cord in Dogs/Merck Veterinary Manual(2026年10月21日確認)
※7:Exercises for Dogs/The Animal Medical Center(2026年10月21日確認)

大場聖也

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保有資格「JKC愛犬飼育管理士」。幼い頃から犬が大好きで、幼稚園の頃には犬の図鑑をボロボロになるまで読み込んでいた。 10歳のとき、不登校だった私を支えてく...

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