老犬が吠えるようになった理由とは?夜の無駄吠えが増えた原因と対処法を解説

COLUMN

「最近、老犬期に入った愛犬が急に吠えるようになって眠れない……。」
「昔はおとなしかったのに、どうして吠えるようになったの?」

今、そんな戸惑いや不安を抱えていませんか?

実は、老犬の急な吠えには、性格の変化ではなく「心と体のサイン」が隠されています。

私は20年以上にわたり5匹の愛犬と暮らし、3匹の看取りを経験してきました。

その中で正しい知識の必要性を痛感し、現在はJKC愛犬飼育管理士の資格を保有しています。

この記事では、老犬が吠える代表的な原因と、家庭で今すぐできる具体的なケア方法を解説します。

愛犬もママさんパパさんも、安心して穏やかな夜を過ごせるようになるためのヒントをお伝えしていくので、ぜひ参考にしてください。

老犬が吠えるようになった理由|夜の無駄吠えが増えた3つの原因

愛犬が急に吠え始める背景には、老化に伴う複数の要因が複雑に絡み合っています。

なぜ「夜」に「急に」吠えるようになったのか、まずは専門的な知見からその正体を解き明かしていきましょう。

夜の無駄吠えが増えた認知症による不安や混乱かも

人間と同じように、犬も高齢になると認知機能が少しずつ低下し、今まで理解できていた「時間」や「場所」の感覚が曖昧になることがあります。

その結果、夜中にふと目が覚めたときに「ここはどこ?」「どうしてひとりなの?」と強い不安や混乱を感じ、吠えてしまうケースがあるのです。

世界的な獣医マニュアルである「Merck Veterinary Manual」でも、高齢犬の認知機能低下は「見当識障害(場所が分からなくなる)」「睡眠・覚醒リズムの変化」「不安の増加」「発声(vocalization)」などがみられると報告されています(※)。

出典:Merck Veterinary Manual「Behavioral Problems of Dogs(Aging and Cognitive Dysfunction)」

以前、14歳の柴犬と暮らすママさんからこんなお話を聞きました。

「深夜2時になると、壁に向かって虚ろな目で『ワン!ワン!』と単調に鳴き続ける。撫でても気づかない様子で、まるで別の場所にいるみたいで怖かった……」

このようなケースでは、意識が混濁して強い不安に襲われているため、愛犬を責めることはできません。

認知症の代表的なサインをリストにまとめました。

【認知症が疑われる行動チェックリスト】

  • 昼間はずっと寝ていて、夜になると目が冴えて活動的になる
  • 部屋の隅や狭い場所に入り込み、自力でバックして戻れない
  • ママさんパパさんの呼びかけに対する反応が以前より鈍くなった
  • トイレの場所を間違えたり、無目的に部屋を徘徊したりする

まずは認知症という病気の可能性を視野に入れ、愛犬の混乱を丸ごと受け止めてあげることが、解決への第一歩となります。

身体に痛みがある可能性がある

「うちの子は認知症じゃないはず」と思っても、吠えが止まらない場合は身体的な苦痛を疑いましょう。

老犬は関節炎やヘルニア、内臓の疾患などを抱えやすく、寝返りを打つたびに走る鋭い痛みにより、叫ぶように吠えるケースがあります。

アニコム損害保険株式会社の調査データによると、老犬期(7歳以上)からは消化器疾患や循環器疾患に加え、筋骨格系疾患の有病率が上昇する傾向にあります(※)。

※出典:アニコム ホールディングス株式会社 「家庭どうぶつ白書2025」PDF、p.12

たとえば、寝床に横たわった時に「キャン!」と鋭く鳴いたり、立ち上がる際に「ウー」と唸ったりすることはありませんか?

犬は痛みを隠す動物ですが、深夜の静寂の中ではその不快感に耐えきれず、ママさんパパさんに助けを求めてしまうのです。

触ろうとすると嫌がったり、特定の部分をずっと舐めたりしているなら、そこが痛みの発信源かもしれません。

【痛みを抱える老犬の仕草】

  • 寝相が頻繁に変わり、落ち着きなく歩き回る。
  • ハァハァという荒い呼吸(パンティング)を繰り返す。
  • 以前よりも段差を嫌がり、足元がプルプルと震えている。

ふかふかのクッションに変えることで、痛みや不快感が和らぎ、落ち着いて眠れるようになる子もいるので試してみてください。

感覚の衰えによるストレスの可能性

吠える老犬

目が見えにくくなったり、耳が遠くなったりすることも、老犬にとっては大きな恐怖の対象となります。

特に白内障などで視力が低下すると、夜の暗闇は完全な「未知の世界」に変わり、わずかな気配にも怯えて吠え立てるようになるのです。

SNSでも、「夜、トイレに起きた私の足音に驚いて狂ったように吠えられた。顔を確認すると安心したように静まったけど、あんなに怖がっている姿は初めてだった。」といったような声が多数見受けられます。

これは聴力や視力の低下により、周囲の状況を把握できなくなったストレスからくる反応です。

暗闇での不安を解消するためのポイントを確認しましょう。

【視覚・聴覚の衰えへの対策】

  • 部屋を完全に真っ暗にせず、常夜灯をつけて視界を確保する。
  • 近づくときは、急に触らず遠くから優しく声をかける。
  • 家具の配置を変えず、いつも通りの「安全な場所」を維持する。

老化による感覚低下を止めることは難しいですが、ママさんパパさんの存在を感じさせる工夫で安心感を与えることはできるでしょう。

「大丈夫だよ、そばにいるよ」というメッセージを、匂いや優しい接触を通じて伝えてあげてください。

安心した愛犬が、隣でスヤスヤと寝息を立てる時間は、何物にも代えがたい宝物になるはずです。

老犬が吠えるようになった時の正しい対処法と危険なサインの見分け方

原因が分かったら、次は家庭でできる具体的なアクションを起こしましょう。

ここでは、一般的に効果があるとされる方法を厳選してご紹介します。

夜の無駄吠えは安心できる環境作りが最優先

まずは、愛犬が「ここは絶対に安全だ」と思える空間を再構築してあげることが欠かせません。

老犬はわずかな隙間風や硬い床の感触にも、敏感に反応して不安を感じるため、寝床の環境を見直す必要があります。

私の愛犬たちも、寝床を家族のベッドのすぐ隣に移しただけで、夜鳴きがピタリと止まったことがありました。

もちろんすべての老犬に当てはまるわけでなないですが、ママさんパパさんの匂いがする衣類を一枚置いてあげるだけでも、愛犬にとっては強力なお守りになるでしょう。

環境改善のアイデアをまとめました。

【安心感を高める寝床の工夫】

  • 体圧分散型のマットを使用して関節への負担を減らす。
  • 冬場はペット用ヒーターや毛布で体温低下による不安を防ぐ。
  • サークルを柔らかい布で囲い、外からの刺激や視線を遮断する。

このように、物理的な快適さと精神的な安心をセットで提供することが欠かせません。

愛犬の穏やかな寝顔を見ながら、ママさんパパさん自身もゆっくりと体を休める夜を取り戻しましょう。

老犬が夜に急に吠えるようになったら生活リズムを整えて睡眠を促す

夜に吠えてしまう要因の一つに、昼夜逆転した生活リズムがあります。

日中に日光を浴びないと、睡眠ホルモン「メラトニン」がうまく分泌されません。

そして、メラトニンが不足すると夜間に脳が覚醒してしまい、エネルギーの発散先を求めて吠えにつながってしまうのです。

無理な運動は禁物ですが、カートに乗せて外の空気を吸わせたり、日光浴をさせたりするだけでも脳への刺激になります。

「もう歩けないから」と家の中に閉じ込めるのではなく、五感を刺激する時間を積極的に作ってあげてください。

【日中のリズムを整えるコツ】

  • 午前中に15分ほど、ベランダや庭で日光を浴びさせる。
  • 知育玩具や鼻を使う遊び(ノーズワーク)で脳を刺激する。
  • 食事の回数を小分けにして、一日の楽しみを増やす。

「日中にしっかり起きて、夜にぐっすり眠る」という自然なサイクルを意識しましょう。

活動量を増やすことで、夜間の吠えが落ち着くケースもあります。

老犬が急に吠えるようになったら空腹・排泄・温度など不快要因をチェック

意外と見落としがちなのが、空腹や喉の渇き、あるいは排泄の失敗による不快感です。

老犬になると消化機能や排泄のコントロールが難しくなり、自分ではどうしようもない「不快な状況」を吠えて知らせている場合があります。

環境省が定める指針では、飼い主は動物の健康と安全を保持するため、その生理・習性等に応じた適切な飼養管理を行うことが求められています(※)

出典:環境省「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」PDF、p.1

高齢犬では、食事管理だけでなく、排泄の補助や生活環境の見直しも重要です。

たとえば、オムツが濡れて気持ち悪いけれど、自分で動けずに困っているケースは多いものです。

また、お腹が空いて鳴いているなら、消化に良い少量のフードを与えることで、満足感から眠りにつくこともあります。

状況を整理するため、チェックすべきポイントを一覧表にしました。

確認項目 チェック内容 対応のヒント
トイレ オムツが汚れていないか、シーツが濡れていないか こまめな交換と、寝る直前の排泄
食事・水 お腹が空いていないか、水飲み場まで行けるか 寝る前の少量の給餌、水皿を近くに置く
温度・湿度 寒すぎないか、湿度が低すぎないか 室温20〜25度、湿度50%程度を維持

小さな違和感を取り除いてあげるだけで、愛犬の心は格段に安定します。

放置や我慢を強いるのは厳禁です。

不快を取り除いた後の愛犬の安らかな吐息は、ママさんパパさんの献身的なケアへの最高のお返しになります。

老犬が吠えるようになった時にやってはいけないNG行動

良かれと思ってやっていることが、実は愛犬の不安を煽り、吠えを悪化させているかもしれません。

飼い主として避けるべき行動を知り、愛犬との信頼関係をさらに深めていきましょう。

急に吠えるようになっても決して怒ったり叱ったりしない

真夜中の吠え声にイライラしてしまい「うるさい!」「静かにして!」と怒鳴ってしまうことはありませんか。

気持ちは痛いほど分かりますが、老犬に対して叱ることは、火に油を注ぐような逆効果しかもたらしません。

なぜなら、愛犬は「なぜ怒られているのか」を理解できず、大好きなママさんパパさんの怒った顔や大きな声に怯えるだけだからです。

恐怖を感じると脳はさらにパニック状態に陥り、より激しく吠え続けるという悪循環に陥る恐れがあります。

仮に叱ることで吠えが止まったとしても、それは安心したからではなく、恐怖で固まっているだけなのです。

【叱ることによるダメージ】

  • 飼い主への信頼が崩れ、顔を見るだけで怯えるようになる。
  • ストレスにより自律神経が乱れ、体調を崩す原因になる。
  • 分離不安が強まり、少しの外出もできなくなる未来を招く。

愛犬が求めているのは、指示やしつけではなく「理解」と「包容」です。

吠え始めたら、まずは深呼吸をして一息つきましょう。

感情の波が引くのを待ってから、穏やかなトーンで話しかけることが、愛犬を落ち着かせる助けになります。

夜の無駄吠えは要求を完全に無視せず寄り添う

「要求吠えは無視すべき」というしつけの基本がありますが、老犬に限ってはそのまま当てはまらないケースが多いと言えます。

老犬期の吠えは単なるワガママではなく、心身の限界を訴える悲鳴であることが多いからです。

完全に無視され続けると、犬は「自分はもう見捨てられた」という深い絶望感に襲われることもあるでしょう。

認知症が進んでいる場合は、無視されることで孤独感が強まり、症状を加速させるダメージを与えかねません。

【無視に代わるポジティブな対応】

  • 視界に入る位置へ移動し、目が合ったら優しく頷く。
  • 名前を呼びながらゆっくりと背中を撫でてあげる。
  • マッサージをして血流を促し、緊張を解きほぐす。

「あなたの言葉(吠え)は届いているよ」と伝えることで、愛犬の張り詰めた緊張の糸がふっと緩みます。

完全に無視するのではなく、ほどよい距離感で見守り、必要に応じて手を貸してあげてください。

「一人じゃないんだ」という確信が、愛犬を深い眠りへと誘う安心材料になります。

老犬が吠えるようになった場合の病院へ行くべき目安

家庭でのケアには限界があります。

時には医学的な力を借りることが、愛犬とママさんパパさんの両方を救う唯一の手段になることもあるのです。

食欲不振や震えがあるなら動物病院を受診

吠えに加えて、身体的な異変が見られる場合は、迷わず動物病院へ連れて行きましょう。

特に、好物を食べようとしない食欲不振や、静止している時の足の震えは、体内で深刻な痛みや病気が進行しているサインかもしれません。

内臓疾患や腫瘍が隠れていることもあるため、プロによる正確な診断が欠かせません。

以下の表をチェックして、病院選びの参考にしてください。

【動物病院・介護サービスの活用表】

施設・サービス 期待できるサポート内容 活用のタイミング
一般動物病院 疾患の検査、鎮痛剤の処方、健康診断 痛みや震え、食欲不振がある時
老犬ケア専門外来 認知症の診断、生活環境のアドバイス 夜鳴きや徘徊が始まった時
老犬ホーム・デイ 一時預かり、介護負担の軽減 ママさんパパさんの休息が必要な時

異常を感じたらすぐに専門家を頼ることが、愛犬の苦痛を取り除く最短の方法です。

原因に応じた治療によって、落ち着きを取り戻す犬もいます。

早めの対処が、愛犬との幸せな時間を一日でも長く延ばすことにつながります。

吠え方や徘徊に異変を感じたら相談

目に見える怪我がなくても「なんとなく様子がおかしい」という直感を大切にしてください。

以前と違う場所で吠えたり、円を描くように回り続けたり(旋回行動)する場合は、脳の変性が始まっている可能性が高いと言えます。

こうした認知機能の変化は、獣医師と相談しながら早めに対応することで、進行を緩やかにできる可能性があります。

「病気じゃないのに病院に行くのは……」と遠慮する必要はありません。

獣医師に相談することで、夜鳴きを抑えるための鎮静剤や、睡眠サイクルを整えるサプリメントを提案してもらえることもあります。

【相談時に伝えるとスムーズな情報】

  • 吠えが始まった正確な時間帯と持続時間。
  • 動画を撮影しておき、実際の吠え方や動きを見せる。
  • 食事や排泄のリズムに変化がないかメモしておく。

「いつものことだから」と諦める必要はありません。

医学の進歩により、老犬の生活を支える選択肢は以前よりも格段に増えています。

専門家とチームを組み、一人で抱え込まない体制を作ることが、結果として愛犬への最高のプレゼントになるでしょう。

まとめ|老犬が吠えるようになったら変化に正しく対応しよう

老犬が急に吠えるようになったのは、ママさんパパさんを困らせるためではなく、愛犬なりの「一生懸命な訴え」です。

認知症による混乱、身体の痛み、あるいは衰えからくる不安……。

その背景にある感情を汲み取り、適切な環境作りや医療的なサポートを組み合わせていくことが大切です。

「もう一度、あの穏やかな日々を過ごしたい」

そんな願いは、正しい知識と少しの工夫で叶えることができます。

決して一人で悩まず、愛犬のサインに寄り添いながら、一日一日の変化を慈しんでいきましょう。

ママさんパパさんが差し伸べる優しい手と穏やかな声が、愛犬にとって世界で一番の安心材料になります。

今日から始める小さな一歩が、愛犬の心に光を灯し、家族全員に穏やかな眠りをもたらすはずです。

大好きな愛犬との「今」を大切に、優しい未来を築いていってくださいね。

大場聖也

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保有資格「JKC愛犬飼育管理士」。幼い頃から犬が大好きで、幼稚園の頃には犬の図鑑をボロボロになるまで読み込んでいた。 10歳のとき、不登校だった私を支えてく...

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