シニア犬に多い関節炎とは?症状や原因、自宅でできるケアを獣医師が解説
愛犬が年齢を重ね、成犬の頃と比べて歩き方や立ち上がりの様子に変化が見られると、心配になりますよね。
そんなとき、
「関節炎で痛みがあるのかな?」
「自宅ではどんなケアをしてあげたらいいのだろう?」
「動物病院を受診すべき?」
といった疑問をお持ちではありませんか?
実はシニア犬では、加齢による軟骨の摩耗や関節への慢性的な負担によって関節炎を発症しやすく、進行すると強い痛みや運動機能の低下につながります。
また、自宅での生活環境や食生活を工夫することで、愛犬の負担の軽減につながることをご存知でしょうか?
この記事では、シニア犬に多い関節炎の種類や症状、原因、動物病院での検査・治療法、自宅でできるケアまでを獣医師がわかりやすく解説します。
最後までお読みいただき、愛犬の快適な歩行をサポートするための一助となれば幸いです。
シニア犬に多い関節炎

関節炎とは、さまざまな原因で関節に炎症が起こり、痛みや腫れ、動かしにくさなどが生じる病気です。
犬の関節に炎症や痛みを起こす病気には、主に以下の3種類があります。
| 感染性関節炎 | ケガや皮膚炎などから、主に細菌が関節に侵入して起こる関節炎 |
| 免疫介在性関節炎 | 免疫の異常によって、免疫が自分自身の関節を攻撃して起こる関節炎 |
| 変形性関節症 | 加齢や関節への負担などによって関節軟骨がすり減り、慢性的な炎症や痛みが生じる病気 |
シニア犬では特に「変形性関節症」が多くみられます。
変形性関節症では、加齢とともに関節軟骨がすり減ることで、関節に炎症や痛みが生じます。
また、加齢の他にも、
- 膝蓋骨脱臼
- 前十字靭帯断裂
- 股関節形成不全
- レッグペルテス病
- 肘関節異形成
などから、二次的に変形性関節症を発症するケースも珍しくありません。
これらの病気が成犬のときから発症している犬に関しては、シニア期に入ると関節炎へと進行することが多いので、注意が必要です。
シニア犬の関節炎でよく見られる症状

では、もし愛犬に関節炎が起きている場合、どのような症状が見られるのでしょうか?
発症の初期では、症状に気づきにくいことも少なくありません。
病気が進行するに伴って、
- 歩く速度が遅くなる
- 段差を嫌がる
- 歩き方がぎこちない
- 散歩の距離が短くなった
- 寝起きに立ち上がるまで時間がかかる
- 足を触られるのを嫌がる
- ジャンプをためらう
といった様子が見られることがあります。
さらに進行すると、足を引きずる、ふらつくといった症状が見られ、自力で立ったり歩いたりすることが難しくなることも珍しくありません。
関節炎は「年だから仕方ない」と思われがちですが、気づいた段階からケアをしてあげることが大切です。
シニア犬の関節炎ですぐに動物病院を受診すべき症状

では、シニア犬の関節炎ですぐに動物病院を受診すべき症状とは、どのようなものなのでしょうか?
具体的には、
- 強い痛みが続く
- 歩けない
- 足を完全に浮かせる
- 数日で急激に悪化する
- 発熱している
- 食欲や元気がない
といったものが挙げられます。
これらの症状が見られる場合は、感染性や免疫介在性の関節炎が進行している可能性が高まります。
また、関節炎以外にも、骨折や靭帯断裂、腫瘍など別の病気が隠れていることもあるため、注意が必要です。
シニア犬の関節炎で行う検査

では、シニア犬の関節炎で実際に動物病院を受診した場合、どのような検査が行われるのでしょうか?
動物病院では、
- 問診
- 身体検査
- 画像検査
- 関節液検査
といった流れで診察が行われることが多いです。
それぞれの診察内容を詳しく見ていきましょう。
①問診

まず問診では、今までの愛犬の様子が質問されます。
具体的には、
- 今までに病気をしたことがあるか
- 日頃どれくらい運動しているか
- 段差の乗り降りや滑りやすい床があるか
- 歩き方に異常はあるか
- 痛みはあるか
- 症状がある場合はいつからか
といった内容を聞かれることが多いです。
そこから、実際に関節炎が起こっている可能性が高いかどうかが判断されます。
②身体検査

問診で関節炎が疑われる場合、次は身体検査で健康状態の確認が行われます。
具体的には、
- 歩き方や姿勢の様子
- 痛みの様子
- 筋肉の量
- 関節の可動域
- 粘膜の色
- 脱水の状態
といった点の確認が行われます。
その結果、獣医師から見ても、関節炎が起きている可能性が高いかどうかが判断されます。
また、同時に治療が必要かどうかについても判断されることが多いです。
③画像検査

最後に、関節炎が起きているかどうか、画像での確認が行われます。
一般的に、まずはレントゲンでは関節の腫れや骨棘の形成を確認することが多いです。
また同時に、関節に他の病気が起きていないかの確認が行われます。
ただし、初期の関節炎では、異常がはっきりと確認できないことも少なくありません。
そのため、必要に応じてCT検査が行われることもあります。
④関節液検査

最後に、関節炎の原因を追究するため、関節に針を刺して関節液を回収し、その性状の確認が行われます。
この関節液検査で、感染性や免疫介在性の関節炎が起きていないかどうかの判断が行われます。
シニア犬の関節炎の治療

では、もし愛犬が関節炎と診断された場合、どのような治療が行われるのでしょうか?
具体的には、
- 非ステロイド消炎鎮痛剤
- 免疫抑制薬
- 抗生剤
- 外科治療
- 体重管理
といった治療が行われることが一般的です。
関節炎の原因や病状の程度によって、これらを組み合わせて治療が行われます。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
①非ステロイド消炎鎮痛剤

シニア犬の関節炎では、痛みの治療として非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)がよく用いられます。
NSAIDsには、関節の炎症を抑えながら痛みを和らげる作用があるものの、ときに腎臓に負担をかけることが知られており、近年新しく「抗NGF抗体」という副作用の少ない痛み止めが開発され、長期管理の際に使用される機会が増えてきています。
特にシニア犬では、腎機能が低下しているケースがあるため、愛犬の体調に合った治療を選びましょう。
②免疫抑制薬

免疫介在性関節炎と診断された場合は、免疫の異常な働きを抑えるために免疫抑制薬が使用されます。
主にステロイドやその他の免疫抑制薬を用いて炎症を抑えますが、感染症にかかりやすくなるなどの副作用がみられることもあります。
そのため、獣医師の指示に従い、定期的な診察を受けながら治療を進めることが重要です。
③抗生剤

感染性関節炎では、原因となる細菌に対して効果のある抗生剤による治療が行われます。
関節液検査や細菌培養検査の結果を参考に、原因菌に適した抗生剤を選択します。
④外科治療

関節の状態や、関節炎の原因となっている病気によっては、外科治療が検討されることがあります。
具体的には、
- 人工関節置換術
- 骨切り術
- 関節固定術
などの手術方法が挙げられます。
ただし、シニア犬では心臓や腎臓などの全身状態、麻酔のリスク、手術によるメリットなどを総合的に評価したうえで、手術を行うかどうか判断しましょう。
⑤体重管理

体重管理は、どの種類の関節炎でも非常に重要です。
体重が増えるほど関節へかかる負担も大きくなり、痛みが悪化しやすくなります。
そのため、適正体重を維持できるように食事内容や給与量を見直し、関節への負担を減らすことが大切です。
シニア犬の関節炎に自宅でできるケア

では、関節炎のあるシニア犬には、自宅ではどのようなケアができるのでしょうか?
実は、日常生活においてできる工夫がたくさんあります。
具体的には、
- 生活環境の整備
- 歩行のサポート
- 適度な運動
- 食事管理
- サプリメント
といった方法が挙げられます。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
①生活環境の整備

フローリングなど滑りやすい床は、関節への負担を大きくする原因になります。
そのため、
- 滑り止めマットを敷く
- ソファやベッドにはスロープを設置する
- 段差をできるだけ少なくする
など、室内環境を整えることで、関節の負担軽減につながります。
②歩行のサポート

関節炎が原因で四肢に力が入りにくくなり、歩行が大変になったり、滑りやすくなったりすることは少なくありません。
その際には、後肢を支える介護用ハーネスや、シールや靴下などの滑り止めグッズを使用すると、歩きやすくなることがあります。
③適度な運動

完全に運動を禁止することは、筋力の低下を引き起こします。
その結果、関節炎による痛みがより強くなることも少なくありません。
短時間で、かつ痛みが出ない範囲で無理のない運動を継続し、筋力維持を目指すことが大切です。
④食事管理

一般的に、体重が増えると関節にかかる負担が大きくなる傾向があります。
その結果、痛みが悪化して運動量が減少し、筋肉が落ちることで、さらに関節への負担が増えるという悪循環につながることがあります。
そのため、関節炎のあるシニア犬では、毎日の食事量やおやつの量を見直し、適正体重を維持することが大切です。
ただし、食事量を急に減らしたり、自己判断で極端なダイエットを行ったりすると、筋肉量の低下につながる可能性があります。
減量が必要な場合は、獣医師に適切な食事量や減量ペースを相談しましょう。
⑤サプリメント

シニア犬の関節炎でよく用いられるサプリメント成分としては、
- グルコサミン
- コンドロイチン
- ASU(アボカド大豆不鹸化物)
- MSM(メチルスルホニルメタン)
- コラーゲン
- プロテオグリカン
- オメガ3脂肪酸
などが挙げられます。
ただし、サプリメントはあくまで補助的なものであり、治療の代替になるものではありません。
また、すべてのシニア犬に効果が見られるわけではないため、自己判断で使用するのではなく、事前に獣医師へ相談することが大切です。
まとめ

シニア犬の関節炎は、加齢に伴って多くみられる病気ですが、「年齢のせいだから仕方がない」と放置してしまうと、痛みの悪化や歩行困難につながることがあります。
特にシニア犬では、変形性関節症が最も多くみられ、早期発見・早期治療が生活の質を維持するために重要です。
歩き方の変化や立ち上がりにくさ、散歩を嫌がる様子など、普段と違うサインに気付いたら、早めに動物病院を受診しましょう。
また、治療だけでなく、体重管理や適度な運動、生活環境の整備、サプリメントなどを組み合わせることで、関節への負担を軽減し、愛犬が快適に過ごせるようサポートできます。
日頃から愛犬の様子をよく観察し、獣医師と相談しながら、その子に合った治療やケアを続けていきましょう。
















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